146号 AUTUMN 目次を見る
- ≫ まずこのたび、新たにマイクロスコープを導入された経緯についてお聞かせいただけますか。
- ≫ 今回導入されたマイクロスコープの性能、使い心地はいかがですか。
- ≫ ルーペがあれば充分だとおっしゃる先生もいらっしゃるなか、マイクロスコープを使うメリットはどこにあるとお考えですか。
- ≫ 月星先生がマイクロスコープをお使いになるのは主にどんな治療の時ですか。またルーペとはどのように使い分けておられますか。
- ≫ これからの歯科診療にマイクロスコープは必要でしょうか?
歯科界のトップランナーとして研究・臨床を続けておられるだけでなく、未来の歯科医療を担う若い歯科医師たちのスキルアップにも精力的に取り組まれている月星光博先生。歯科用マイクロスコープも診療にいち早く導入され、月星歯科クリニックではもはや欠くことのできないマストアイテムとなっている。そんな中、医院増築に伴って新たに導入されたマイクロスコープについてお話を伺った。
まずこのたび、新たにマイクロスコープを導入された経緯についてお聞かせいただけますか。
私は10年以上前から診療にマイクロスコープを使用していますが、今回のマイクロスコープ導入の前提には、あるユニットの存在がありました。実は私がマイクロスコープを導入した当初、モリタに「ユニットのライトポールにマイクロスコープを取り付けてはどうでしょう」と提案したことがあったのです。そのアイデアが最近ようやく実現されたと聞いて、一刻も早く使ってみたいということもありました。それが今回の医院増築で実現したわけです。
そのユニット、マイクロスコープともに発売以来デザイン面での評価が高いようですが、それは単に“見た目”だけでなく、“ユーザビリティ”=機能的で使いやすいといった部分の評価も含めてのことだと感じています。
今回導入されたマイクロスコープの性能、使い心地はいかがですか。
ハンドリング等は正直なところ“慣れ”の問題がありますから、今までのマイクロスコープと若干の違いを感じるところもあります。ただLEDはとても明るくて見やすいですね。また、SDカードでの記録装置が内蔵されていることが素晴らしいです。静止画、動画を選ばずリモコンで簡単に撮影して、すぐに再生して患者さんにお見せすることもできますし、パソコンにデータを移すのも簡単です。ライカの優位性と先進性を示すとても画期的な機能だと感じています。さらにオールインワンの機能を持ちながら、シンプルで美しい。そしてケーブル(配線)が少なくて目立たない。私の医院では床を這う配線の処理にいつも悩まされていましたから、それが解消されたことも大きいですね。
ルーペがあれば充分だとおっしゃる先生もいらっしゃるなか、マイクロスコープを使うメリットはどこにあるとお考えですか。
私の医院では現在5台のマイクロスコープがありますが、エンド治療の場合は、CTを撮って分析し、マイクロスコープを見ながら治療することをルールにしています。特に4番から後の多根歯、場合によっては前歯でも、初診で問題のありそうなケースではそうしています。そして、あるべき根管を探すわけですが、そうすると8倍のマイクロスコープで覗くことで初めて見えてくることがあることに気づかされます。例えば上顎大臼歯の近心第2根管を見つける場合など、ルーペでは見えませんが、マイクロスコープだと根尖孔近くまで見えます。MTAを詰める場合でもルーペでは絶対ムリです。8倍で見ることの重要性は計り知れないものがあるんです。
それとエンドに関していえば、超音波スケーラーはとても有効ですから、チップバリエーションも豊富で根管長測定も可能な多目的超音波治療器は重宝しています。シンプルなのに必要な機能はすべて入っているオールインワンタイプのこれらの製品ラインナップは、これから目指すべき歯科診療を実現するうえで、まさに理想の環境と言えると思います。
月星先生がマイクロスコープをお使いになるのは主にどんな治療の時ですか。またルーペとはどのように使い分けておられますか。
先程もお話しした通り、エンドのときは必ず全ての部位をマイクロスコープで治療していますが、CRの場合も慣れてくると逆に楽になってきます。また、形成の仕上げで予後により自信を持てるという意味では、ルーペよりマイクロスコープの方が格段に上ですね。ただ、マイクロスコープの使用にはラバーダムによる防湿は必須と考えています。当然のことですが、防湿することでミラーの曇り、だ液や雑菌の侵入を防ぐことができます。ですので、私がルーペを使うのはラバーダムを必要としない大まかな形成のケースに限られています。
両者の使い分けを考えた際、導入に必要なコストも重要です。これからの歯科診療を考えた場合、ルーペは最低でも必要でしょう。でも私に言わせれば、エンドはルーペではムリです。ルーペはレンズが多い分、どうしてもマイクロスコープに比べて暗くなってしまいます。また、明るいルーペを使ったとしても2.5倍と8倍では見える情報量の差は歴然です。そうなるとマイクロスコープの方が見落としも少なくて、圧倒的に「疲れない」と言えます。
これからの歯科診療にマイクロスコープは必要でしょうか?
マストですね!過去の自分を否定することにもなりますが、マイクロスコープを使わないエンドは治療になっていないと思います。今考えるとあり得ないですね。最近、若い先生方を中心に、マイクロスコープを熱心に勉強されていると聞くことがあります。とてもうれしい傾向です。時代は確実にそうなっていくと思いますし、歯科医療の本来あるべき姿に近づいていっているのではないでしょうか。
ただ、国内のエンド成功率は諸外国から見ればまだまだです。マイクロスコープを活用することで、その状況が大きく変わっていくことは間違いないところでしょう。少しオーバーかもしれませんが、もしかしたらマイクロスコープが現在の日本の歯科医療の負のスパイラル払拭の足がかりになるかもしれませんね。とにかく使ってみてください!!マイクロスコープで一度でもエンドを体験すると二度と以前の世界には戻れないはずです(笑)。
※月星先生が主宰するCEセミナーと新設された研修センターに関する記事は次号「クローズアップ」で掲載予定です。
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