176号 SPRING 目次を見る
福岡市中央区 山道歯科医院
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副院長
山道 研介 -
歯科医師
山道 美季
当院では「生体主導型歯科臨床」という治療方針を掲げています。これは、単に今ある症状を治すのではなく、私たちの身体が本来持っている咀嚼や嚥下などの口腔機能が最大限に発揮できるように、神経筋機能、顎運動、硬組織、軟組織を可能な限り回復させるという治療方針です。例えば、インプラント治療では、通常は現在骨がある場所に埋入計画をたてますが、生体主導型の場合、骨増生などを用いて本来歯が生えているべき位置に埋入することを目指します。矯正治療の場合も同様で、見た目をキレイに整えるだけでなく、力学的にもっともバランスの取れた位置に誘導することで、患者さん本来の咬合力と歯並びの美しさを取り戻すことを目的にした治療を行っています。
この生体主導型歯科臨床に取り組む過程で、咬合の再構成が必要な方が多く、結果として矯正治療を行う患者さんの割合が増えてきました。その矯正治療において、傾斜歯をアップライトさせた際に、今まで隠れていた隣接面が見えるようになり、その部分にう蝕を目にする機会が多くなりました。そういう方はもともとブラッシングが上手でないうえに、矯正装置によってさらにケアが難しい環境になりますから、矯正治療中もう蝕リスクを低減できるセルフケア製品はないものかと探していました。
そんな折、モリタが「ソニッケアー」の取り扱いを始めたというニュースを耳にしました。それ以前からソニッケアーは個人的に使っていてとても磨き心地が良く短時間で爽快感が得られることを実感しており、医院への導入を検討していました。その後、モリタの担当者の方から「ソニッケアーエアーフロス」をご紹介いただきました。電動式デンタルフロスは、アメリカでは矯正治療のセルフケア製品としてかなり普及していることを学会雑誌などで目にしていましたし、私自身も使ってみて効果を実感できたため、矯正患者さんのセルフケア用に導入を決めました。
エアーフロスは、とにかく歯肉を傷つけないこと、歯間のスペースに関係なく一様に清掃できること、さらに口臭抑制も期待できることなどにメリットを感じています。歯間部の汚れが取れているかは患者さんご自身で判別しづらい部分もありますが「使用後の爽快感が違う。こんな良い製品があったんですね」と皆さん継続して使っていただいています。
![[写真]福岡市中央区 山道歯科医院](https://cdn01.dental-plaza.com/pdf/sites/2/2021/03/176-4_photo00-3.jpg)
医院側のメリットとしては、う蝕リスクの高い歯間部分やブラケットの装着部分をご自身でケアしてくださるので、次回来院までの期間に状態が悪くなることが少なく安心できるということが一つ。さらに、定期来院時に清潔な状態がキープされているため、スタッフのプロケアに時間がかからず時短につながっています。
当院では矯正治療中の方のセルフケアグッズとしてエアーフロスの他に、手用フロスや歯間ブラシも扱っていて、患者さんのニーズやモチベーションに合わせて適宜使い分けています。手用フロスや歯間ブラシは一見簡単そうですが、実はテクニックが必要で使い方を間違えると歯間乳頭を傷つけ退縮させてしまったり付着歯肉を剥がしてしまう恐れがあります。その点、エアーフロスは水とエアーの力だけで汚れを飛ばせるので歯肉を傷つける心配が少なく、歯肉が健全でこれから矯正治療を始める方には特にお薦めしています。
国内では、矯正治療の場合でも安価でディスポーザブルの口腔ケアグッズが主流ですが、私は便利で効果が期待できるエアーフロスのような製品であれば、多少高価であっても患者さんにお薦めするタイミングさえ間違えなければ比較的スムーズに導入していただけると感じています。矯正治療では、治療をスタートした時と、治療途中、治療終了時でモチベーションの質が大きく変わってきます。例えば、汚れがキレイに取れていないことに気づいた時や、治ってきた歯並びを維持したいと感じている時はモチベーションが高いときで、そのタイミングに合わせて、ニーズに合わせたグッズを提案をすることで、高い確率で導入していただくことができます。実際、当院ではエアーフロスが必要と見込んでお薦めした患者さんにはほぼ100%の割合で購入していただいています。
現在は父である院長のおかげで、幅広い年齢の患者さんに来院していただける医院になっていますが、次の世代を担う私たちもその意思を引き継ぎ、高齢の方でも安心して来院いただける医院を目指して精進していきたいと考えています。
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図1 20代女性の患者さんの来院時の口腔内写真。マルチブラケットによる矯正治療中。 -
図2 染め出し後の口腔内写真。ブラケットおよび隣接面周辺にプラークが付着している。 -
図3 同右頰側の状態。 -
図4 上顎を歯間ブラシ、下顎をエアーフロスで清掃。(エアーフロスの使用は今回が初めて) -
図5 所要時間:歯間ブラシ67秒、エアーフロス43秒。臼歯部の清掃性はエアーフロスの方が高いと感じられた。 -
図6 図5の状態からさらに上顎を手用歯ブラシ、下顎をソニッケアーで清掃。 -
図7 所要時間:手用歯ブラシ128秒、ソニッケアー92秒。ソニッケアーは手用歯ブラシより短時間で同程度の清掃が可能。 -
図8 左頰側・施術前。この状態から上顎を手用歯ブラシ、下顎をソニッケアーで清掃。 -
図9 手用ブラシでは歯肉にプラークが付着しているのに対し、ソニッケアーは清掃性が良好でガムケアにも適していることが推察される。 -
図10 エントランス近くの棚にはスタッフ手書きのPOPが置かれている。 -
図11 注目度の高いトイレの洗面台にはエアーフロスのPOPを配置。 -
図12 システマSP-Tジェルのパッケージにもワンポイントでメッセージが添えられている。
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