124号 SPRING 目次を見る
■目 次
■はじめに
歯科界において、1987年JOMI(The International Journal of Oral & Maxillofacial Implants Vol.2 no.3)に初めてスクリュータイプのインプラント治療へのCT応用の報告がされ、オッセオインテグレーティッドインプラントの治療普及に伴って、CTがインプラント埋入の診断機器として注目されるようになっている。
当診療所においても3次元的な診断が術前に必要な場合は、医科用CTで等倍のフィルムに焼き付けてもらい、スタディモデルとともに治療に使用してきた(図1、2)。
近年、インプラント治療のニーズはますます増してくるものの、あくまでもインプラント治療が診療の一部分であり、器械が高価で、従前の器械では、設置するために、さらにスペースを新たに設けなければならないということが理由で、関心はあるものの、高嶺の花であった。
2007年3月のケルンで開催された国際デンタルショーにおいて、初めてこの器械に出会い、導入を即決した。理由は、以下のとおりである
●我々の診療所では、すでにデンタルレントゲン写真のデジタル化(他社のシステム)が行われ、パノラマ、セファロのデジタル化を検討していた
●現状のレントゲン室を補強することで導入できる(図3)
●インプラント治療の計画が行える
●医科用CTと比較して低被曝である
●小視野画像で、さらに被曝量が軽減でき、局所の詳細なデータが得られる
●インプラントの治療以外でも、鮮明な画像のため、歯内療法とくに根尖病巣を伴う治療の診断治療に役立つ
●歯周病による骨欠損の程度を把握できる
●顎関節頭と関節窩、関節結節の形態と位置関係が把握できる など。
導入されて4ヵ月と短い使用期間ではあるものの、インプラント治療を中心に、使用しての感想について、以下述べていく。
図1 大多数の症例はパノラマレントゲン写真のトレースによりインプラントの埋入計画を立ててきたが、骨量が乏しく、骨移植のボーダーラインのケースでは、実寸大のCT画像をフィルムに焼き付けてもらい、分析を行ってきた。-
図2 インプラント埋入部位を立体的に把握するためにセットアップモデルを作成することもある(中段)。 -
図3 ベラビューエポックス3Dは従来のセファロ付パノラマの入っていたレントゲン室にすっぽり納まった。
■従来の方法
全体の98%はパノラマレントゲン写真、デンタルレントゲン写真そして側方セファロのトレースと診断用模型で診断、治療計画を立てていた。
■現在行っている方法
パノラマスカウトにより、全顎的な把握をし、インプラントが埋入される部位にカーソルを移動させ、CT撮影を行うと、簡単に該当部位の画像が得られる。
臨在歯の歯根方向や、埋入予定の方向を考慮して再スライスを行うと正確な3次元情報が得られる。説明用(歯科医師間、スタッフ間、患者説明等)のためにこの情報をOne Data Viewer(CT用のソフト)に入れ、情報の共有を図る。手術用のレントゲン写真としては情報が多過ぎるので、パノラマ写真とCT画像1カットを使用している(図4)。
図4 手術中のモニターでは、埋入計画のレイアウトが行われているパノラマとポイントとなるCT画像1つを映し出している。
■症 例
症例1:単独歯欠損 前歯(即時埋入)
年齢20歳、女性、内部吸収と根尖病巣を伴う上顎右側中切歯の抜歯後即インプラント埋入症例。即時埋入の成功のキーは感染のコントロールと唇側の皮質骨の保存、そしてインプラントの初期固定であるが、急性炎症の徴候がなく、CT画像により唇側の皮質骨と充分な初期固定に必要な先端部の骨量が確認されたので、即時埋入の予定で手術計画を立てた(図5-1~5)。
ペリオトームを使用し、抜歯後ルートフォームインプラント(リプレイステーパード)を初期固定30Ncmで埋入できた。インプラントと抜歯窩との隙間には自家骨移植を行った。供給側は左側下顎埋伏智歯の抜歯の際に、辺縁より骨採取を行った。減張切開を行い、縫合閉鎖した。
手術直後のパノラマ画像(スカウト)(図5-6)と術後1週間(抜糸時)の口腔内写真、デンタル写真とCT画像である(図5-7~9)。
図5-1 歯牙の変色と歯内療法のための形成が口蓋側にある。-
図5-2 11に内部吸収と根尖病巣が認められる。 -
図5-3 正中部の唇舌の幅径が6mm、辺縁歯槽骨縁から鼻腔底まで16mmでインプラントの埋入は可能である。 -
図5-4 同様にパノラマにおいても辺縁歯槽骨縁から鼻腔底まで16mmと、インプラントの埋入は可能である。 -
図5-5 即時埋入の鍵となる唇側皮質骨が認められる。16mmのテーパーのついたルートフォームインプラントのテンプレートを貼り付けた。 -
図5-6 術後の計画の通り即時埋入された11部のインプラントと38の抜歯窩。 -
図5-7 術後1週間抜糸時の口腔内写真。ワイヤー維持によるプロビジョナルレストレーションをスーパーボンドで接着。 -
図5-8 術後1週間抜糸時のデンタル写真。インプラント辺縁の高さは審美上の理由で、両隣在歯のセメント・エナメルジャンクションより約3mm深い位置を目標に埋入した。 -
図5-9 術後1週間抜糸時のCT画像。切歯孔を避け、唇側の皮質骨を保存して埋入することができた。
症例2:単独歯欠損 大臼歯
年齢56歳、女性、右側下顎第二大臼歯抜歯後6ヵ月が経過し、インプラント埋入を行った(図6-1~3)。予定より深く埋入されたために、術後パノラマ写真の代わりにCTを撮影した(図6-4)。3次元的な把握が術後に必要な場合において、低被曝で小視野のこのシステムは目的にかなうものである。
図6-1 術前パノラマスカウト。この画面上でCT画像を撮りたいところにカーソル(画面上の緑色の+)を移動させると簡単にこの領域の画像(図6-3)が得られる。-
図6-2 術前パノラマスカウトに直径5mm、長さ10mmのインプラント(ブローネマルクMkⅢ WP)のテンプレートと上部構造の外形を貼り付けたところ。 -
図6-3 術前CT画像に直径5mm、長さ10mmのインプラント(ブローネマルクMkⅢ WP)のテンプレートと上部構造の外形を貼り付けたところ。下顎管との距離は2~3mm離すように計画する。 -
図6-4 術後CT画像で、埋入されたインプラント体が下顎管と近接しているが、接触はしていない。
症例3:部分欠損
年齢58歳、男性、左上中切歯の動揺と圧痛を主訴に来院された。患者と治療計画について話し合い、全顎にわたる進行性歯周病の治療と欠損部の補綴治療について、経済性のことも含めてカウンセリングを行い、インプラント埋入を行った。初診時パノラマスカウトによる治療のオプションとCT画像による最終治療計画と手術直後のパノラマスカウト写真を示す(図7-1~8)。皮質骨が鮮明に見え、埋入のための骨形成時のオーバーヒートに注意する必要がある症例である。
以下、次号に掲載する。
図7-1 初診時パノラマスカウト。全顎にわたる進行性歯周病を有する。-
図7-2 初診時パノラマスカウト上にインプラントのテンプレートを貼り付け、治療のオプションも提示しながら簡単な説明を行う。 -
図7-3 右側臼歯部のCT画像。インプラント埋入を行うのに十分な骨量が存在する。 -
図7-4 左側臼歯部のCT画像。36部において緻密な骨梁が認められ、インプラント埋入の骨形成の際、十分な冷却を行わないと骨壊死を起こし、オッセオインテグレーションが獲得できない危険のある部位に思われる。 -
図7-5 上図と同じCT画像の再構成を行ったもの。35部において緻密な骨梁と頬側と舌側の厚い皮質骨、オトガイ孔から下顎管、抜歯窩、さらに対合歯との位置関係が明瞭に認められ、インプラントの埋入部位にテンプレートを貼り付けた。 -
図7-6 上顎前歯部のCT画像。インプラントの埋入部位に十分な骨量が存在する。
図7-7 最終的なインプラント埋入予定部位を示したパノラマスカウト。-
図7-8 手術直後のパノラマスカウト。
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