147号 WINTER 目次を見る
■目 次
- ≫ STEP1 企画・構想
- ≫ STEP2 設計(研究開発)
- ≫ スペースライン「イムシア」の誕生
- ≫ STEP3 製造
- ≫ STEP4 製造・組み立て
- ≫ STEP5 検査
- ≫ STEP6 梱包・出荷
- ≫ STEP7 搬入・取付/アフターケア
スペースライン誕生50周年を記念して145号から連載してきた特別企画も今号で最終回。
今回は「スペースライン製造の舞台裏」をテーマに、これまで全てのスペースラインを生み出し製造している株式会社モリタ製作所(京都市伏見区)を取材。
時代のニーズに合わせて様々な進化を遂げながら、「人中心」のコンセプトを頑なに守り続ける“ものづくり”へのこだわりを追いました。
■STEP1 企画・構想
ユーザーの声に耳を傾けることで得たアイデアをものづくりの現場にフィードバック
これまで、新しいスペースラインを企画・構想する際には、時代に応じて変化する市場ニーズを模索しながらも、1963年のCU1型誕生以来、「人中心」の基本コンセプトは守りながら、それまで自社で製造してきた新製品や新機能を融合させることで、常にその時代にマッチした、さらにその一歩先をゆく新型スペースラインを提案してきました。その背景には、タービンやモーター、画像診断装置をはじめ、その他の周辺機器を他社に先駆けて全て自社で製造してきたメーカーとしての高い技術力があります。
■STEP2 設計(研究開発)
「スペースライン」らしさとは何か部門の垣根を越え、徹底的に検証
新製品に関する基本的なコンセプトが検討されたのち、実際の設計段階に入ります。ここで器械担当と電気担当のメンバーがチームを構成し、ユニットのフォルムデザインの検討から、搭載する機能・外観に従った電気基盤の設計、表示パネル・スイッチなどのインターフェイスの仕様を決定します。その後、関係部署で検証を重ねてようやく試作品として形になったスペースラインは、製造側の思いが実際の臨床に即したものになっているか、臨床医の先生にご使用いただき細かいチェックを繰り返したのち、本格的な生産体制へと移ります。
テクノラボ 部門間の垣根を越え様々なメンバーが集まり、ものづくりについて意見を述べ合う場として2010年に建設されました。スペースラインの企画・開発、設計も主にここテクノラボで行われています。 |
■スペースライン「イムシア」の誕生
それまで診療用ユニットは人中心にした製品だったが、1995年にデビューした「スペースライン イムシア」は、デジタルによる患者説明(インフォームド・コンセント)や、診療中の快適性(アメニティ)を積極的に追求。患者さんにとって快適な診療空間をもたらす、当時まさにこれからの時代に必要とされるコンセプトを備えた斬新なチェア・ユニットとして誕生しました。
■STEP3 製造
材質、見えない部分にも決して妥協することなく手仕事にこだわり続ける“made in Kyoto”の技術力
- 1機械加工
イムシアの場合、患者さんの体重を支える部分には加工がしやすく摩耗性・耐食性に優れ、振動・騒音を吸収する鋳物が多く使用されています。写真はマシニングセンターと呼ばれる工作機械で加工された鋳物部品のひとつです。 - 2レーザー加工
溶接構造物として仕上げる材料部分の製造工程。レーザー加工によって細かい部分のパーツを製作していきます。その後のネジ切りやドリリング加工はドリリングセンターと呼ばれるNCマシンや手作業で行われます。 - 3曲げ加工
曲げ加工が必要な板金パーツはプレスブレーキで設定された角度に正確に曲げていきます。 - 4ロール曲げ加工
「ロール曲げ機」によってハウジング外形を形作っていきます。 - 5溶接工程
ベースンユニットを始め溶接構造部品の多くが多間接型のロボットで溶接されています。溶接ブースの外でセットされた部品が自動的にローラーコンベアで搬入され溶接された後に搬出されます。 - 6研磨工程
外観部品の場合は塗装後の仕上がりをきれいにするために、また、内部構造部品の場合は不要な引掛りなどがないようにペーパーグラインダー等で部品の表面を滑らかに仕上げています。 - 7塗装工程
- ①塗装前処理
部品表面の汚れや油分を除去した後、リン酸塩皮膜処理(パーカー処理)を行い、部品表面と塗料を密着させ塗膜の耐久性を向上させます。 - ②構造物の塗装
内部構造物の塗装をロボットで行っています。塗装する部品はコンベアーに吊るされて移動し、塗装が終わるとそのまま乾燥炉に入り焼付けが行われます。 - ③水研ぎ作業
外観部品の表面をサンドペーパーを使って水研ぎし、塗装面の下地仕上げを行っています。とても繊細な作業で、デリケートな感覚が必要な工程です。その後、粉体塗装を行います。
"クラフトマン"の基本精神
株式会社モリタ製作所
技術開発部
次長 田中 徳之 モリタ製作所には過去から受け継がれてきた「ものづくりとはこうあるべき」というこだわりが脈々と息づいています。そうした思いを製品にのせて、真心をこめてものづくりする。結果的に人の力に頼る「手づくり」の部分が多く、手間がかかってしまいます。そうした考えはスペースラインに限らず製品全てについて言えることです。今となっては、はやらない「非効率」な考え方かもしれません。しかし、これは創業以来、「先生方の様々な要望をカタチにする」ためにモリタ製作所が培ってきた“ものづくり”の考え方に根ざした、モリタ製作所の基本精神そのものです。
例えばスペースラインで言うと、見た目は同じものに見えますが、オーダーをいただく歯科医院様によってどこかが違ってきます。まさに「一品一様」といってもいいかもしれません。また、そのご要望に対応できるよう、豊富なオプションを用意しています。これだけのバリエーションを製造する現場のレベルは高いと自負していますし、こだわりを持っています。それもひとえに、自分たちでつくったものを先生に誇らしげに使っていただきたい、「やっぱりスペースラインは違うよね」と言っていただきたいという気持ちが従業員全てに浸透しているからではないでしょうか。
■STEP4 製造・組み立て
- 1昇降組み立て
チェアユニットの土台となるベースから座面を昇降させる油圧シリンダーやモーターを取り付けます。 - 2昇降・起伏荷重試験
昇降・起伏の動作がスムーズかつ規定の動作をするかの確認・調整を行います。座面には150kg、バックレストには40kg 計190kgの負荷をかけ、設定通りに動くかをテストします。 - 3ベースンユニット組み付け
ユニット内部を通る管路やチューブ、電気基板を取り付けます。 - 4トレー組み立て
トレー内部は電気基板が組み込まれているだけでなく、水・エアーのチューブまでが中を通ります。 - 5調整・設定・外装組み付け
細かな調整・設定を行い、給水管路クリーンシステムなどの動作を確認してから外装部品を取り付けます。
匠の集積
株式会社モリタ製作所 技術開発部 チェア・ユニット開発課 副主査 奥村 大 |
株式会社モリタ製作所 技術開発部 チェア・ユニット開発課 副主査 大槻 拓也 |
奥村私は大槻君がカタチにした外観や仕様に従って電気部分の基板や表示、スイッチの仕様を設計しています。あまり目立たない部分ですが、スイッチの匠の集積反応や感覚、表示の方法などは、先生、アシスタントの方がそのユニットが使いやすいと感じていただくうえで重要なポイントと考えています。例えばマイクロスコープによる診療に対応するため搭載した「スロースピードモード」がそれにあたるでしょうか。最もこの機能はメカとの融合ですが、、、。
大槻とにかくスペースラインをお使いの先生は様々なこだわりと同時に厳しい目をお持ちです。それに耐えうる製品を提案するのは大変でもありますが、同時に大きなやりがいも感じています。
奥村入社した当時は、スイッチの仕様1つにしても「なぜこんな細かい部分にここまでこだわるのか」と思っていましたが、自分で携わるようになってようやく、そうした方々のこだわりがあって初めて良い製品を世に出し続けることができているのだと感じるようになりました。
■STEP5 検査
電気・水・エアーを通し、実際の診療と同じ状態で動作確認・水エアー漏れがないかを確認します。
■STEP6 梱包・出荷
細心の注意を払って厳重に梱包、トラックに積み込み出荷。歯科医院様のもとへ。
■STEP7 搬入・取付/アフターケア
スペースラインの搬入・取付工事や、日々の保守点検・修理メンテナンスは、モリタグループのジェイエムエンジニアリングが中心に行う。モリタグループ(製造・販売・修理)三位一体となってサポート。
すべては”人中心”
株式会社モリタ製作所
取締役 髙嶋 美彦 スペースラインの基本コンセプトは“人間中心”です。このことはDr.ビーチが水平位診療を考案し、50年前にスペースラインが誕生してから全く変わることがない永遠の概念です。もっとも、遠い未来、人に変わって器械が診療するようになれば話は別ですが、そういったことはあり得ないでしょう(笑)。やはり大事なことは、治療するのも人、それを受けるのも人だということです。そのことに徹底的にこだわって、人が使いやすい器械、心地よい空間を考えたとき、自然と人間の手や考えを通してつくられたものになってきます。決してオートメーションの量産品によってできるものではありません。それが私たちモリタ製作所の基本的な“ものづくり”の考え方です。 さらに、「スペースライン」という言葉には“空間を結ぶ”という意味もこめられています。先生と患者さんの関係はもちろん、先生とスタッフ、患者さんとスタッフも同様です。その診療空間をいかに使いやすく、快適に整えていくかを考え、世に提案してきたのが、スペースラインの半世紀の歴史だったと感じます。今後の治療、診断の進化とともに診療エリアも新しい変化が求められますが、常に時代の一歩先を歩んできたスペースラインが次にどんな姿で登場するか、そのときを楽しみにご期待ください。
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目 次
モリタ友の会会員限定記事
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