147号 WINTER 目次を見る
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1. はじめに
2013年10月21日に当社よりノリタケカタナジルコニアML(マルチレイヤード)が発売された。本製品の大きな特長は高透過性で歯冠色をしたジルコニアであること、ボディ(デンティン)からエナメルを表現する4層構造となっていることである。
色調はA Light、A Dark、B Lightの3シェードあり、ALightはA1.5~2相当、A DarkはA2.5~3.5相当、BLightはB1.5~2相当が目安シェード(厚み1.2mm)となっている(図1、2)。<注:シェードA1.5、A2.5、B1.5とは慣習上の表現であり、実際のシェードガイドは存在しない。>
MLを使用した際の研磨で仕上げるフルジルコニアクラウン(以下、FZクラウン)およびセラビアンZR Eグレーズを使用したグレーズドジルコニアクラウン(以下、GZクラウン)のステップについて確認をしたい。
2. FZクラウン(研磨仕上げ)
ノリタケカタナジルコニアMLを使用することで、含浸液の使用やステインなどで色調調整することなく、従来のジルコニアよりも審美的に向上したフルジルコニアクラウンを製作することができる。
研磨前後の色調を比較すると、表面が粗造で光を乱反射する研磨前の状態に対し、研磨後は光の反射が変化し、研磨後の色が濃く見える(図3)。前述の目安シェードは研磨後の色調で設定されている。
- 1)初めにプロテック ダイヤモンドポイント等で外形を整える。通常、機械加工時に付いた切削痕が残っているのできれいに取り去っておく。また、表面性状を付与するとジルコニア特有のツヤをある程度軽減させることもできる(図4、5)。
- 2)中研磨を行う。咬合面についても同様に行う。表面性状を付与した部分はスターグロス(エデンタ社)を使用することで付与した形態を損なわずに中研磨を行うことが可能である(図6、7)。
- 3)ロビンソンブラシにパールサーフェスZなどの研磨材を付着させ、仕上げ研磨を行う。さらに滑沢に仕上げたい場合はバフで磨いても良い(図8~10)。
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図1 左からA Dark、A Light、B Light。
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図2 ディスクが4層構造をしており、淡い切端色から濃い歯頸色まで安定した色調が得られる。
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図3 左:研磨後 右:研磨前(A Dark)。
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図4 プロテック ダイヤモンドポイント(#DP-06など)で外形を整え、切削痕もならす。
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図5 必要に応じ、プロテック ダイヤモンドポイント(#DP-02など)で表面性状を付与。 <セラテック#951/958(エデンタ社)でも可>
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図6 マージン部については滑沢な仕上げを行うため全周に荒研磨を行う(写真はスターグロス、エデンタ社)。 <#1020使用(コースタイプ)>
3. GZクラウン(セラビアンZR Eグレーズ使用)
Eグレーズとステインを使用することで、任意の色調を付与する、ツヤや質感を陶材に近づける、蛍光性を付与させたい場合にも有効な手法となる。
ジルコニア自体は蛍光性を持たない。それに対して天然歯や弊社を始め各社ジルコニア用陶材は蛍光性を有する。そのため研磨のみで仕上げる場合は蛍光性を持たないクラウンとなるが、Eグレーズを使用する場合はEグレーズ自体が蛍光性を有し、さらにセラビアンZRプレスLFインターナルステイン フルオロを併用することで蛍光性を強めることも可能である。
GZクラウン用のフレームは最終歯冠形態からEグレーズを塗布するスペース0.2mmシュリンク(カットバック)させた形態とし、カタナプロダクションセンターへ発注する。
- 1)初めにプロテック ダイヤモンドポイント等で外形を整える。通常、機械加工時に付いた切削痕が残っているのできれいに取り去っておく。咬合面の隆線などは鋭利な形態とならないよう注意する。 この後、LFインターナルステインやEグレーズを塗布するため、アルミナサンドブラスト処理(50μm、0.2MPa以下)を行い、アルコールなどで超音波洗浄を行う。
- 2)A Light、A Darkの場合はLFインターナルステインA+、B Lightの場合はB+を塗布し、焼成する。支台歯形成によるクリアランスが同程度の場合、GZクラウン用フレームはFZクラウンよりも厚みがなく、Eグレーズにより歯冠全体を0.2mmの厚みで覆うため、色調が淡く見えやすい。そのため彩度を上げることのできるA+、B+で色調調整する。 蛍光性を強めたい場合は、LFインターナルステイン A+、B+を塗布する前にLFインターナルステイン フルオロを塗布、焼成しておく。
- 3)EグレーズをISリキッドで練和し、塗布、焼成する(図11、12)。
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図7 咬合面に中研磨を行う。また、表面性状を付与した部分も同様に中研磨を行う(写真はスターグロス、エデンタ社)。 <#2030使用(ミディアムタイプ)>
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図8 ジルコニア仕上げ用研磨材:パールサーフェスZ。
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図9 軟毛タイプのロビンソンブラシ(ポリラピッドロビンソンブラシ 平状グレー軟毛)にパールサーフェスZを付着させ、仕上げ研磨を行う。
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図10 フルジルコニア(FZ)クラウン 完成。
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図11 紫外線光源下での比較。 左:研磨のみ 右:フルオロ塗布。
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図12 グレーズドジルコニア(GZ)クラウン完成。
4. まとめ
今回ノリタケカタナジルコニアMLが発売となったことで、色調的に大きく改善されたフルジルコニアクラウン(研磨)の製作が可能となった。
LFインターナルステインや、Eグレーズを併用することで色調の調整や蛍光性の付与なども可能となる。日々の臨床で活用いただきたい。
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