147号 WINTER 目次を見る
■目 次
■はじめに
近年審美補綴を語るキーワードである「CAD/CAM」「ジルコニア」に対し、当社は国内での需要にお答えするべく2007年より株式会社モリタとの共同事業としてカタナプロダクションセンター(以下KPC)を開始しました。
その間には装置の小型化、高性能化も進み、2009年からは、よりジルコニアの普及に努めるべくCAD/CAMシステムの販売も開始しました。またジルコニア材料に求められる特性として、透光性、色調再現性、口腔内耐久性や対合歯列に対する諸問題などの研究開発も進む中、金属材から置き換わりジルコニア単体で作製される、いわゆる「フルジルコニアクラウン」の臨床使用が急速に拡大しました。
本稿では、当社技術により開発され2013年10月21日より発売を開始したマルチレイヤード(多層構造)ジルコニアディスク『ノリタケカタナジルコニア ML』をご紹介させていただきます。『ノリタケカタナジルコニア ML』は、KPCにおけるメニューリストへの追加は勿論のこと、カタナCAD/CAMシステムでの切削材としても同時に販売を致します。
また、本稿内においては『ノリタケカタナジルコニアML』と同一規格原料を使用する『ノリタケカタナジルコニア HT』(近日発売予定)についても併せてご紹介させていただきます。
■特長
大きな特長としては3点あります。
①現在のノリタケカタナジルコニアであるKTシリーズ(未焼結・ブロック形状)、KDシリーズ(仮焼結・ディスク形状)双方に比較し、透光性が大幅に向上したこと。
②透光性を向上させた場合、一般的には耐低温劣化性が低下すると言われる中、KT、KDと同等の耐低温劣化性を有すること。
③MLシリーズ(マルチレイヤード・歯冠色)は、歯科用ジルコニアとして咬頭頂(切縁)より歯頸部色まで4層構造の色調(彩度)変化を有すること。製品形態はHTシリーズ(ハイトランス・高透光タイプ)、共に仮焼結のディスク形状です。
双方に共通する特長が高透光性です。従来からのノリタケカタナジルコニア KT10(ブロック)、ノリタケカタナジルコニア KD10(ディスク)に対し、ノリタケカタナジルコニア HT10は大幅に透光性が向上しているのがお分かりいただけると思います(図1)。
優れた透光性は、セラミック製造のリーディングカンパニーであるノリタケカンパニーリミテドのノウハウにより、原料からディスクの成形・焼結に至るまでを一貫した自社製造技術により達成された唯一の製品だと自負しております。
MLシリーズ
MLシリーズはフルジルコニアクラウンのために開発された、歯冠色を持つという点が大きな特長となります。『ML』ですがMulti Layered(マルチレイヤード)を意味し、ディスク内でボディ色(デンティン)からエナメル色を模した4層構造を持たせ、自然な色調に仕上がるようになっています(図2)。色調はA Light、ADark、B Lightの3シェードあり、A LightはA1.5〜2、A DarkはA2.5〜3.5、B LightはB1.5〜2相当が再現されるシェードの目安(1.2mm厚基準)となっております(図3)。
KPCにおけるフルジルコニアクラウンについてはワックスクラウンによるDスキャンを基本とします。
MLシリーズを使用することで、製作工程としてはジルコニアを切削、焼成した後は研磨のみで歯冠色を持ったフルジルコニアクラウンを完成させることができます。また、完成補綴物としては従来のフルジルコニアクラウンに比べて審美性の向上したクラウンとなることが利点となります。
セラビアンZR Eグレーズを塗布、焼成して製作するグレーズド ジルコニアクラウン(GZクラウン)も可能です。フレームの厚みがクラウンより薄くなる傾向にあること、Eグレーズとの併用になることから上記の目安色調より淡く上がることをご考慮いただき、症例に応じてインターナルステインなどで色調調整の上、完成となります。
MTシリーズ
HTシリーズは高透光性を有し、フレーム用にカラーリングされたモノカラー(単色)のディスクです。『HT』はHigh Translucent(ハイトランスルーセント)を意味しています。色調はHT10(ホワイト)、HT12、HT13の3シェードあり、セラビアンZRのシェードとの組み合わせで補綴物を完成させます(図4、5)。
図1 ノリタケカタナジルコニア 透光性比較
<クラレノリタケデンタル株式会社社内測定>
図2 MLディスク断面(イラスト)
図3 MLシリーズ:フルジルコニアクラウンの製作を目的としたマルチレイヤードタイプ。
図4 HTシリーズ:基本的なフレーム用にカラーリングされたモノカラータイプ。
図5 上段は下から光を当てた写真。透光性が高いのがわかる。
■まとめ
今回紹介した2シリーズの大きな特長は歯冠色再現性の向上を目的にハイトランス(高透光性)かつ、MLにおいては多層構造を有することより、審美補綴素材としてジルコニア材の活用範囲が大幅に広がる可能性を秘めた製品である点です。
是非、ジルコニアの臨床経験を持たれない先生方にも、これを機にお試しいただきたいと思います。
本製品が患者様の満足度の高い補綴物としてご活用いただければ幸いです。
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目 次
モリタ友の会会員限定記事
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- Trend ノリタケカタナジルコニア ML/HT
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- Technical Hint ノリタケカタナジルコニア MLフルジルコニアクラウン 研磨とグレーズドジルコニアクラウン製作のポイント
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