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Field Report

小児の口腔機能評価の指標として「気道描画機能」を活用

石川県金沢市 みやうちこどもデンタルクリニック 院長 宮内 康範

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目 次

  • [写真] 石川県金沢市 みやうちこどもデンタルクリニック 院長 宮内 康範

    石川県金沢市
    みやうちこどもデンタルクリニック
    院長 宮内 康範

小児歯科専門クリニックとして開業して10年になりますが、依然としてむし歯によって口腔崩壊を起こした子どもが毎月のように新患として来院されます。とはいえ、現在は主訴がむし歯の割合は減って、低年齢の段階から子どもの口のことに関心を持つ熱心な保護者の方が増え、主に歯並びや口腔習癖に関する相談が多くなっています。
小児歯科の場合、発育の過程にも配慮しながらすべての乳歯を健全な永久歯に交換するところまでを見据えて治療内容を立案、遂行することが重要です。ただ、近年はネット上に情報が氾濫していて、保護者の方も正確な情報が得にくく、右往左往しているように見受けられます。当院では、小児歯科のプロフェッショナルとして、適切な診査・診断をもとに保護者の方に正しい情報を提供したうえで、現在の状況、さらに今後起こりうる問題やそれらの解決方法を提示するようにしています。その情報を得るうえで必須となるのが歯科用CBCTです。以前はパノラマ装置の画像で診査・診断を行っていましたが、埋伏過剰歯や犬歯の埋伏、萌出障害のケースなどでは詳細な情報を抽出することが難しかったこともあり、2020年の移転リニューアルを機に「Veraview X800」を導入しました。

症例 1

    • [写真] 治療スタート時(9y1m)
    • [写真] 治療経過中(10y1m)
    叢生を主訴に矯正治療を開始。治療スタート時、安静位での舌はスポットポジションになく低位になっていたが、現在は安静位での舌位の改善も認められる。気道の容積も確実にボリュームが上がっている(CT像)。歯列も叢生の改善傾向を認める。顔貌の所見として、オトガイ部の緊張が少なくなってきている。治療スタート時ではマリオネットラインも見えるが、10ヵ月経過後ではそれほど目立たなくなり、頰筋の膨らみも少し薄くなってきている。さらに、舌の挙上もできているので、下顎の下の膨らみも改善してきている。口唇はスタート時には真っすぐだったのが、現在“へ”の字状に見える。これは努力性の閉鎖によるものだが、以前よりリラックスできていると感じている。また、口唇閉鎖時の緊張はまだ少し残っているため、オトガイ唇溝が確認できる。これは口腔内写真において、speeのカーブがまだ若干見受けられることからも同様のことが言える。

[写真] 石川県金沢市 みやうちこどもデンタルクリニックのスタッフ近年、口呼吸の子どもの増加が取り沙汰されていますが、放置しておくと歯並びや顎骨の成育にも悪影響を及ぼしかねません。私は、歯をきれいに並べることだけにフォーカスするのではなく、口呼吸の原因と考えられる舌や呼吸の問題に向き合っていく必要性を以前から感じていました。それを手助けしてくれるのが気道描画機能です。この機能の利点はCT画像から気道領域を抽出してマーキングや3D表示を行うことで、気道領域を視覚化できるところです。現在はあくまで目安の段階ですが、セファロ画像など他の資料と組み合わせることで一定の傾向を導き出すことが可能です。さらにビフォーアフターの比較画像を保護者の方に見ていただくことで、治療により正しく発達して気道が広くなっていることをデータをもとに説明できるメリットもあります。また、鼻の通り具合は口呼吸にも大きく関係していますが、撮影領域が拡大されたことで、気道のほか鼻の通り具合、例えば上鼻甲介、中鼻甲介、下鼻甲介の粘膜の肥厚がないかなども確認でき、鼻に問題がなければ、“鼻で呼吸できるはずなのにできていない”ことになり、その原因を特定するためのツールとしても活用できます。また、2022年4月より追加されたVeraviewX800での部分パノラマ/バイトウィング撮影機能に関しても小児歯科領域ではとても重宝しています。撮影における、患者さんの負担も軽減され、術者側の準備の手間などの効率化にも繋がっています。
今後は、小児歯科を志す若い歯科医師を少しでも増やすために、小児歯科の楽しさややりがいの発信にも努めながら、引き続き子どもの口腔機能の健やかな成長を見守っていきたいと考えています。

症例 2

    • [写真] 治療スタート時(9y2m)
    • [写真] 治療経過中(10y2m)
    普段から口が開いていて、前歯が出ているのを主訴に矯正治療を開始。治療スタート時、安静位での舌はスポットポジションになく低位になっていたが、現在は安静位での舌位の改善も認められる。気道の容積も確実にボリュームが上がっている(CT像)。口輪筋周りの緊張は解けてきており、側方では上顎が拡大したことによって、下顎も前方および半時計周りの回転を起こして顔貌の改善も見られる。head potureも真っ直ぐになってきているが、正面観で顔の傾きがみられるのが気になるところではある。

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