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Clinical Report
ポーセレンラミネートベニア(PLV)の臨床応用Part1 ― 適応症と接着について ―
キーワード:PLV(ポーセレンラミネートベニア)/接着一体化のポイント/支台歯形成
目 次
- ≫ はじめに
- ≫ 適応症と禁忌症
- ≫ 支台歯形成時の注意点
- ≫ PLVの接着
- ≫ 症例紹介(PLV適応症例)
はじめに
近年、MIという概念が定着し、天然歯に近似した色調および透過性を有する高分子材料(レジン)が登場したことにより、健全歯質の削除を最小限にとどめるダイレクトレストレーション法が確立し、審美修復治療に福音をもたらしている。
これまでの審美修復=セラミックス修復という固定観念の臨床から、適応範囲を広げるとともに、接着技術の飛躍的向上により臨床応用への信頼性を高めたといえよう。
しかし、高分子材料の持つ耐久性の観点から、より永続性の高い修復処置が求められていることも事実である。
患者の審美性に対する要求がますます高まる中、健全歯質を可及的に残した状態で審美性を半永久的に回復することが可能な、ポーセレンラミネートベニア(以下PLVと略す)テクニックが臨床応用されるようになって40年近い歳月が流れている。
筆者自身1980年後半からPLVを臨床応用し、審美修復治療を行う上で是非とも身に付けておくべき手法であると確信している。
本稿では、PLVの適応症を整理し、支台歯形成時の注意点、接着に特化したポイントをまとめてみたい。
適応症と禁忌症
PLVを臨床応用する際には、適応症と禁忌症を十分に把握しておかなければならない。これを怠ると破折や脱離といったトラブルを引き起こすことにもなりかねない。
・適応症
PLVは、レジンラミネートベニアと比較して数々の利点を有している(表1)。
そこで、PLVはこれらの特徴を生かし、以下に記すような前歯部唇面および小臼歯頰側面の審美修復に最も多く用いられる。
1)う蝕
2)変色歯
3)軽度の位置異常
4)発育異常
5)被蓋状態の不足
6)その他
う蝕症などの侵蝕症、過度のブラッシングによる磨耗歯、外傷による破折歯などの場合もPLV修復が可能であるが、いずれの場合もエナメル質が十分に残存していることが条件となる。
・禁忌症
PLV修復ではポーセレンシェルをレジンセメントの接着力により維持している。そのため従来の全部歯冠補綴と比較して適応範囲はある程度制限され、特に以下の場合には用いることが困難である。
1)接着に十分なエナメル質がない場合
2)咬合状態に問題がある場合
3)う蝕・歯周炎が広範囲に及ぶ場合
4)歯の位置異常が著しい場合
・その他の臨床応用
PLVは一般には、上述のような唇側面または頰側面の審美修復に用いられるが、レジンセメントの優れた接着力を応用して、唇側面の審美修復以外にも臨床応用が可能となった(表2)。
顎関節症の治療などに臼歯部の咬合での挙上が必要な症例、上顎前歯部口蓋側面に誘導面を付与する必要がある症例では、PLV修復を用いることにより、最小限の歯質削除で審美的に処置が行える。
また、従来は修理が困難であったメタルセラミックスクラウンのポーセレンの破折に対しても、破折の範囲が浅くオペーク層が残存している症例では部分的にポーセレン面を形成してラミネートベニアを装着することにより修復が可能となった。
-
- 色彩が安定している
- 光沢が維持される
- 摩耗しにくい
- 生体親和性に優れる
- 可視光の透過性が高い
- 薬剤に対して安定している
-
- メタルセラミック修復物の補修
- 咬合再構成
臼歯部咬合挙上
前歯部の咬合誘導面の付与
支台歯形成時の注意点
PLVの形成は、ポーセレンシェルと支台歯の強固な接着を得るとともに、二次う蝕や知覚過敏などの不快症状を可及的に防ぐために、エナメル質内にとどめ、歯質の削除量を最小限に抑えなければならない。ところが、良好な適合性や審美性を有するポーセレンシェルの製作には、ある程度の厚さを確保する必要がある。
日本人の前歯は欧米人に比べて唇舌的に薄く、中切歯のエナメル質は切端付近では1.0mm以上の厚さがあるのに対して、歯頸部方向へ移行するにしたがって徐々に薄くなり、歯頸部付近では約0.5mmのきわめて薄いものとなる。さらに側切歯では、中切歯と比較して全体的に約0.1mm薄くなるといわれている。しかし、審美性に優れた色調の回復には、特に切端部分の透明感の表現が重要であるため、切端付近の厚さは十分に確保したい。したがって、歯質削除量は切端部で0.7mm、中央部で0.5mm、歯頸部で0.3mm程度を基準とする。
矮小歯などにPLVを施す場合は、多くの歯質削除量を必要としないものの、ポーセレンシェル辺縁部の厚さの確保、オーバーカントゥアの防止、マージンの明示、接着の際のベニアの正確な位置への保持などの点を考慮し、適切な辺縁形成を行う。
また、特に注意したいのが隣接面下部鼓形空隙付近の形成デザインである。この部分の形成が不十分であれば、歯質との境界が外観にふれるため(図1)、審美性を考慮してある程度口蓋側よりまで形成する必要がある(図2)。すなわち、図3aのような形成デザインが理想的である。
図1 歯頸部下部鼓形空隙の形成が不十分な場合-
図2 歯頸部下部鼓形空隙を口蓋側方向へ十分形成した状態 -
図3 隣接面の形成
a:十分な形成 b:不十分な形成
PLVの接着
PLVは機械的維持力のない、接着に頼る修復法である。接着レジンセメントの進歩は、臨床で十分な接着が期待できるレベルに達していると考えるが、臨床を通して、技術を向上する努力を忘れ、すべてを接着に依存しすぎると、思いもよらないトラブルに遭遇することがあることも事実である。
セメント材の進化は十分であっても、それを使用する術者の知識や意識によりセメントの効力は簡単に半減してしまうためである。そのため、レジンセメントで歯質とベニアを接着一体化する際の、臨床でおさえておくべきポイントについて記載する。
PLVの接着において大切なことは、補綴装置の支台歯への適合状態である。接着を最大限発揮させるために必要なことであり、その重要性を今一度再認識して臨床に取り組むべきである。適合性を向上させる補綴治療の出発点はチェアサイドにある。形成について基礎的な術式で、ひとつだけいうならば、スムーズで滑沢な形成面と線角を有さない単純な形成デザインで形成を行い、補綴装置製作の歯科技工士と連携を持つことが大切である。また、ラボサイドでの補綴装置内面への接着処理(サンドブラストなど)は重要であり、素材に応じた内面接着を歯科医師と歯科技工士が共通の認識を持っていることは絶対に必要である。
PLV修復の接着時には、上記適合状態と色調確認を行う。そのためにはトライインペーストを用いて、べニア・支台歯・セメントの三位一体での確認が必要不可欠である。
以下にチェアサイドで行うパナビア® ベニア LCを用いたラミネートベニア修復接着時の作業工程を示す。
1)プロビジョナルレストレーションの除去
2)歯面清掃
3)適合確認
4)トライインペーストを用いた色調
確認 (パナビア® V5 トライインペースト 図4)
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