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インプラント植立を目的とした骨造成に適用可能なコラーゲン使用人工骨ボナーク®の特性等について
キーワード:足場材料/OCP /分解吸収性の人工骨
■目 次
はじめに
胎児から成人に至るまで、骨では絶え間なく、骨芽細胞による骨形成と破骨細胞による骨吸収が繰り返され、古くなった骨が吸収され、新たな骨が形成される。骨は自ら再構築(リモデリング)を行うことにより、その構造と機能を維持しており、このサイクルは骨代謝と呼ばれている1)。
疾患や外傷等の理由により骨が失われた場合において、骨のリモデリングによる再構築のみでは、回復が困難なことがあり、その場合は他の治療法による介入が必要となり、本品が使用される上下顎骨の骨欠損部の再生においては、自家骨移植(自らの身体より採取した骨を、骨欠損部へ移植し新生骨の形成を図る)が古くから行われてきた。
自家骨移植は、良好な臨床成績が認められるものの、健常な部位への侵襲が発生し、採取部位における合併症の発生の可能性もあることから、自家採取骨の代替を目的とした、人工骨、若しくは骨補填剤が種々開発されており、多くの製品が臨床応用されている。
生体組織の再生を図る際には、一般的に、「細胞」、「増殖因子」、「足場」が必要な三要素と言われ2)、組織再生の元となる細胞、そして細胞の増殖と組織形成を促進する物質、および細胞が増殖する為の土台を整える必要がある。この足場材料としては、合成高分子、天然高分子、無機材料、およびこの複合体が、これまで数多く検討されてきた。
細胞が増殖するための土台としては、多孔性と連通性を持つ材料が適していると言われ、孔が存在しそれら同士が連絡していることで、再生に必要な細胞が、材料の内部まで侵入でき、かつ細胞への栄養物質の輸送が可能となる。
また多孔性と連通性に加え、足場材料には、細胞接着性と形態安定性が必要で、天然高分子は細胞接着性に優れていると言われている。
臨床応用されている人工骨では、焼成されたセラミックスの中に細孔を持たせた多孔質体としての形態を持つものや、ヒドロキシアパタイトとコラーゲンの複合体に多孔質の構造を持たせたもの等が存在する。
コラーゲン使用人工骨「ボナーク®」
「ボナーク®」は、ブタ真皮由来のアテロコラーゲンとリン酸オクタカルシウム(octacalcium phosphate : 略称:OCP)からなる多孔質の複合体で、分解吸収性の人工骨である。
「ボナーク®」の構成材料であるOCPは、現時点までに国内で製造販売承認を取得した人工骨においては、材料として初めて使用される物質で、骨髄由来間質細胞から骨芽細胞への細胞分化に影響を及ぼすことや3~6)、人工骨材料として広く使用されているβ-リン酸三カルシウムに比べ、骨芽細胞への分化の促進がみられたことが報告されており7)、組織再生において一般的に言われる「増殖因子」ではないものの、組織再生に必要な要素を持つ材料であると考えられている。
開発の経緯
東北大学によるOCPの大量合成法の確立、基礎研究の後に、臨床応用での操作性向上を目的に、OCPとコラーゲンを複合化したOCP/Colが開発され、その臨床開発及び生産技術確立を当社が担い、「ボナーク®」は製品化された。OCP/Colの動物での骨再生能の評価が行われた後に8)、 2011年に始まった東北大学大学院歯学研究科口腔外科学分野による臨床研究を経て、2015年に当社主導で治験が開始され、2019年に製造販売承認を取得している。
材料特性
前述のように、OCPを構成材料とする製品は本品が初となり、その特性については、アカデミアから数多くの報告があるが(詳細、後述)、OCPは生体アパタイトの前駆体として生体内に存在する物質であるとされ9)、OCPが生体骨類似アパタイト結晶へ転換する傾向を持ち、優れた骨再生能力を示すことを、鈴木らが、初めて明らかにしている10)。また、骨髄由来間質細胞から骨芽細胞への細胞分化に、リン酸及びカルシウムのイオン濃度が影響することが知られており3~6)、川井らはOCPは転換の際にリン酸イオンを放出し、カルシウムイオンを取り込み、OCP群ではβ-リン酸三カルシウム群に比べ、骨芽細胞への分化が促進されたことを報告している8)。上記の報告等より、OCPは生体親和性が高く、骨再生に有用な材料であると考えられる。
製品特性
「ボナーク®」の形状はディスク体とロッド体の2つで(図1)、コラーゲン中にOCP微粉末が分散している(図2)。
コラーゲンが無数の細孔を構成し、気孔率は約9割で、この気孔内部に骨代謝に関与する細胞等が侵入し、その後、材料の分解とともに、新生骨の形成が誘導される。細孔を多数持つことで、本品の内部まで血液・体液の浸潤が容易で、液体に浸すと数秒程度で素早く、最大で同体積程度の液体を吸収・保持する(図3、4)。液体が浸潤した状態の「ボナーク®」は柔軟で、かつ形状が崩れにくく(図5、6)、水分等の浸潤後、鑷子等で加圧しても崩壊せず、元の形状に復元することから、顆粒状の製品よりも容易に、欠損部への転入が可能で、また鑷子や手での加工も容易に行うことができる。
図1 左:ディスク品 右:ロッド品-
図2 SEM画像 -
図3 吸水前 -
図4 吸水 -
図5 加圧 -
図6 形状回復
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