会員登録

195号 WINTER 目次を見る

Lecture

連載:歯科衛生士に必要とされる医科の知識 <第2回> 血液検査データ①

京都光華女子大学短期大学部歯科衛生学科 助教 尾形 祐己(歯科衛生士、看護師)

PDFダウンロード

目 次

  • [写真] 京都光華女子大学短期大学部歯科衛生学科 助教 尾形 祐己(歯科衛生士、看護師)
    京都光華女子大学短期大学部歯科衛生学科
    助教 尾形 祐己
    (歯科衛生士、看護師)

はじめに

患者さんの状態を的確に把握したうえでケアを行うことは、歯科衛生士として非常に重要です。前号(デンタルマガジン194号)で取り上げたバイタルサインは、患者さんの現在の状態を把握するための重要なデータです。一方、バイタルサインの他にも、患者さんの状態を知る手がかりは存在します。それが今回のテーマである血液検査データです。
本稿をご覧の皆さんも、健康診断などで血液検査を受けられた経験があると思います。皆さんの職場に来院される患者さんの中にも、血液検査を受けている方が多くいらっしゃいます。例えば、会社勤めの方であれば定期健康診断の一環として、また後期高齢者の方であれば後期高齢者健康診査として血液検査は多くの方に実施され、その結果を所持しているはずです。
血液検査データはあくまで過去の検査時点のもので、バイタルサインのように現在の患者さんの状態を表したものではありません。また、一つの検査データが基準値より高いから、あるいは低いからといって、必ずしも何らかの疾患を抱えていると断定できるわけでもありません。しかし、患者さんの血液検査データは、健康状態やリスクを把握する上で大変重要です。それを正確に理解することは、適切なケアを行う上でとても大切です。
そこで本稿では、血液検査データの読み方として、血球に関連した検査データであるRBC(赤血球数)、Hb(ヘモグロビン値)、Ht(ヘマトクリット値)、Plt(血小板数)、WBC(白血球数) について紹介します(表1図1)。

  • [表] 検査項目と参考基準値
    表1 検査項目と参考基準値
    ※成書やガイドラインによって若干の違いがある
  • [図] 血液成分 ※イメージ
    図1 血液成分 ※イメージ

血液検査データについて

RBC(赤血球数)

赤血球は、血液中に最も多く含まれる細胞であり、酸素と二酸化炭素の運搬が主な役割です。RBCが基準値よりも低下していると、貧血の可能性が想定されます。貧血で特に多いのが、鉄欠乏性貧血です。この状態が進行すると、体の組織や臓器に届く酸素が不足し、倦怠感や息切れ、動悸、めまいといった症状も出現する可能性があります。また、口腔内でも味覚異常や舌炎、口角炎などが見られることもあります1)
さらに、赤血球数は男女ともに加齢に伴い減少していきます。そのため、ケアに当たる前に舌や頬粘膜の状態など口腔内の観察を丁寧に行うことや、チェアユニットからの立ち上がり時のふらつきや転倒などに十分注意を向けることが、RBCが低い方には必要です。

Hb(ヘモグロビン値)

ヘモグロビンは、赤血球の中に含まれる血色素で、酸素を全身の組織に運ぶ重要な役割を担うタンパク質です。Hbが低下すると、酸素を十分に運搬できなくなり、創傷部位への酸素供給が不足することで組織修復が遅れ、治癒に時間がかかることがあります。また、酸素供給の不足は、後述する白血球の機能低下にもつながり、感染リスクを高める恐れがあります。
RBCと同様に、Hbが基準値よりも低い場合も貧血の指標となります。さらにHbは欠食や偏食、無理なダイエットなど食生活とも密接に関連するため、歯科保健指導や生活習慣の改善を促すうえで有益なデータと言えます2)

Ht(ヘマトクリット値)

Htは、血液中に占める赤血球の割合を示す検査データで、貧血の有無や程度を知るうえで重要です。Htが低い場合は、貧血と同様の症状が生じる可能性があるため、ケア中の体調変化や疲労感への注意が必要です。
一方、Htが高い場合は、血液が濃く粘度が高くなっている可能性があるため、脳梗塞や心筋梗塞のリスクを高める場合があります。Htが高い原因が脱水である場合、特に高齢者や脱水傾向のある患者さんには、ケア前に水分摂取の状況を確認し、状況によっては飲水を促すなどの配慮が必要です3)
次に、チェアサイドで脱水を見分けるための観察のポイントを以下に示します。
①水分出納:水分摂取や尿量などのバランスを観察することで、患者さんの状態が判断できます。
②身体所見:口腔乾燥に伴う口渇感や、倦怠感の出現、ツルゴールの低下などが見られる場合、脱水の可能性が考えられます。ツルゴールとは皮膚の張りを指し、脱水が進むと皮膚の弾力が低下します(図2)。手の甲や前腕の皮膚をつまんだ際に、元に戻るまでに2秒以上かかる場合は、脱水の可能性が考えられます4)
③バイタルサイン:脱水により循環血液量が減少した場合には、頻脈や血圧低下が見られる場合があります。

  • [図] ツルゴール反応 ※イメージ
    図2 ツルゴール反応 ※イメージ
Plt(血小板数)

血小板は、傷口ができたときに血管を塞ぐことで止血を行う、重要な血液成分です。Pltの値が基準値よりも低い場合は、止血機能が低下している可能性があり、出血が止まりにくくなるリスクがあります。スケーリングなどの観血処置の際には、十分に出血が止まっているかを確認することが求められます。
感染症や薬剤などからPltが影響を受けることもあるので、歯科衛生士が観血処置を含むケアを行う際には、患者さんの全身状態や服薬歴を確認し、十分な注意を払う必要があります。また、Pltの数値が基準値を大きく下回る場合には、血液内科専門医との連携を考慮する必要もあります5)

WBC(白血球数)

白血球は、主に細菌やウイルスなどの病原体から体を守る役割を担っています。WBCは体内の免疫や炎症反応の指標です。WBCが基準値より高い場合、感染症や炎症、白血病などの血液疾患、ストレス反応が疑われます。歯科領域において、急性骨髄性白血病の初期症状として歯肉出血が見られることが知られています6)。患者さんが感染症を発症した場合は、発熱や頻脈、呼吸数の増加など、バイタルサインにも変化が起きます。
一方、WBCが基準値よりも低下している場合は、抗がん剤や放射線治療の影響が原因として考えられます。WBCが低い患者さんは免疫力の低下の可能性があり、スケーリングや抜歯などの観血処置の際に感染予防対策をより慎重に行う必要があります。

まとめ

本稿では、血球に関連した主な5つの検査データからその数値の意味、さらにケアに必要な知識を解説しました。冒頭で述べたように、血液検査データはあくまで検査時点での情報ですが、患者さんの状態を把握するための重要な指標となります。バイタルサインの変化の背景には、血液検査データから得られる情報が含まれていることもあります。今後、患者さんの検査データに触れる機会があれば、ぜひ臨床に役立ててみてはいかがでしょうか。その他にも、歯科衛生士が理解しておくべき血液検査データがあります。そちらについては、次号以降に解説いたします。

参考文献
  • 1) 和気裕之,依田哲也 監修:有病者歯科治療ハンドブック 医科×歯科.デンタルダイヤモンド社;2020;58-59.
  • 2) 地方行政独立法人東京都立病院機構HP内貧血の食事 2025年7月1日閲覧 https://www.tmhp.jp/kikou/index/section/comedical/eiyou/meal/hinketsu.html
  • 3) 国立研究開発法人国立長寿医療センター「血液が濃いと言われたら? 「多血症」について」2025年7月1日閲覧 https://www.ncgg.go.jp/hospital/navi/31.html
  • 4) 堀内ふき,諏訪さゆり,山本恵子 編:老年看護学(2):高齢者看護の実践 第7版.メディカ出版;2025;33.
  • 5) 橋本賢二,増本一真 編著:歯科衛生士のための全身疾患ハンドブック.医歯薬出版株式会社;2022;59.
  • 6) がん情報サービス 急性骨髄性白血病2025年7月1日閲覧 https://ganjoho.jp/public/cancer/AML/index.html

目 次

モリタ友の会会員限定記事

他の記事を探す

モリタ友の会

セミナー情報

セミナー検索はこちら

会員登録した方のみ、
限定コンテンツ・サービスが無料で利用可能

  • digitalDO internet ONLINE CATALOG
  • Dental Life Design
  • One To One Club
  • pd style

オンラインカタログでの製品の価格チェックやすべての記事の閲覧、臨床や経営に役立つメールマガジンを受け取ることができます。

商品のモニター参加や、新製品・優良品のご提供、セミナー優待割引のある、もっとお得な有料会員サービスもあります。