195号 WINTER 目次を見る
キーワード:抜歯後即時埋入/Er:YAGレーザーを用いた殺菌処置/光学印象を用いた補綴物製作
目 次
はじめに
インプラント治療において、抜歯後即時埋入は治療期間の短縮を可能にする一方、術後の感染リスクを最小限に抑えることが重要である。特に、術中の殺菌管理は成功に直結するため、効果的な術中処置が求められる。
本症例では、Er:YAGレーザーを使用することにより、抜歯窩の殺菌化を試み、感染リスクの低減と予後の良好な経過を期待した。
さらに、SPIインプラント(Thommen Medical社製)を用いた即時埋入と、術後の2次オペや補綴上部構造のセットにおける効果を判断した。
症例情報
患者は73歳女性。主訴は「左上奥歯が食べ物をかむと痛む」とのこと。診査の結果、上顎左側第一小臼歯 (24)に慢性的な歯周炎と、根尖部透過像や歯根膜腔の拡大、歯根破折が認められた。40年以上前に治療を受けた既往歴があり、炎症の状況により患者抜歯後の即時インプラント埋入をその場で判断し行うこととなった(図1)。
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![[写真] 術前パノラマX-P](/academic/dentalmagazine/wp-content/uploads/sites/2/2025/11/195-8_photo01.jpg)
図1 術前パノラマX-P(Veraview X800にて撮影) -
![[写真] 術前CT診断](/academic/dentalmagazine/wp-content/uploads/sites/2/2025/11/195-8_photo02.jpg)
図2 術前CT診断(Veraview X800にて撮影) -
![[写真] 術前CT診断シミュレーション](/academic/dentalmagazine/wp-content/uploads/sites/2/2025/11/195-8_photo03.jpg)
図3 術前CT診断シミュレーション
目的
本症例の目的は、Er:YAGレーザーによる殺菌効果を利用し、感染リスクを低減し、予後良好を期待することに加えて、SPIインプラントを用いた即時埋入後の治療過程を評価することである。さらに、術後の2次オペや補綴上部構造のセットを含む全体的な治療効果を検討する。
材料および方法
1. 術前診断とインプラント埋入
術前診断には、CBCTを使用した。高精度な3D画像診断を行うことができ、骨質、骨量、根尖病巣、破折部位の状況を詳細に評価できるため、即時埋入に必要な治療計画を立てるのに非常に有効であった。特に、根尖部に疑われる破折線や歯根膜腔の拡大が確認され、SPIインプラントを選択し、即時埋入を実施した。
2. Er:YAGレーザーによる術中処置
インプラント埋入前後には、Er:YAGレーザーを使用し、抜歯窩および周囲感染性肉芽組織の除去を行った。Er:YAGレーザーは、水分に対する高い吸収特性を有しており、軟組織に対しては、感染源となる感染性肉芽組織の除去と同時に殺菌された環境を構築し、その環境維持に非常に有効である。加えて、再生に必要となる適度な出血状態を作り、感染リスクを軽減しながらも、手術部位の清潔な環境を作ることができた。これにより、術後の感染症リスクの低減とともに、早期治癒が期待される(図4, 5)。
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![[写真] 抜歯窩](/academic/dentalmagazine/wp-content/uploads/sites/2/2025/11/195-8_photo04.jpg)
図4 抜歯窩(Er:YAGレーザー使用前) -
![[写真] 抜歯窩](/academic/dentalmagazine/wp-content/uploads/sites/2/2025/11/195-8_photo05.jpg)
図5 抜歯窩(Er:YAGレーザー使用後)
3. 2次オペとレーザー処置
4週間後、2次オペを実施し、再度Er:YAGレーザーを用いてインプラント周囲の軟組織を処理した。Er:YAGレーザーで繰り返し処置することで、高い殺菌効果が期待できる。その結果、ヒーリングキャップのスムーズな交換が可能となり、術後の腫脹や出血を抑制し、治癒を促進することができた。さらに、術後感染のリスク低減にも寄与している。
4. 光学印象と補綴物製作
2次オペ後、プライムスキャンを使用して光学印象を採得した。従来の印象材と比較して、光学印象は患者にとって負担が軽減され、精度の高いデジタル印象を得ることができるため、補綴物の設計における誤差を最小限に抑えた。プライムスキャンによる印象採得は、従来の手法に比べて迅速かつ正確であり、補綴物の適合性を高めることに寄与した(図8)。
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![[写真] CT画像](/academic/dentalmagazine/wp-content/uploads/sites/2/2025/11/195-8_photo06.jpg)
図6 SPIインプラント埋入 CT画像① -
![[写真] CT画像](/academic/dentalmagazine/wp-content/uploads/sites/2/2025/11/195-8_photo07.jpg)
図7 SPIインプラント埋入 CT画像② -
![[写真] プライムスキャンによる上部構造製作工程](/academic/dentalmagazine/wp-content/uploads/sites/2/2025/11/195-8_photo08.jpg)
図8 プライムスキャンによる上部構造製作工程
5. 補綴上部構造のセット
最終段階の上部構造セットになり、フィクスチャーとアバットメントの接続部の精度が非常に高いため、セット時の適合性も良好であり、咬合状態も安定した。アバットメントの接続部は精密に設計されており、インプラントと上部構造の結合が安定しており、咬合力が均等に分散されるため、長期的な安定性が期待される(図9, 10)。
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![[写真] 上部構造セット前歯肉写真](/academic/dentalmagazine/wp-content/uploads/sites/2/2025/11/195-8_photo09.jpg)
図9 上部構造セット前歯肉写真 -
![[写真] 上部構造セット](/academic/dentalmagazine/wp-content/uploads/sites/2/2025/11/195-8_photo10.jpg)
図10 上部構造セット
結果
本症例では、Er:YAGレーザーを使用することで、殺菌された環境下にて処置を行うことができた。術後の感染リスクは最小限に抑えられ、初期固定や骨結合の促進が良好であった。補綴上部構造のセット時には、インプラントと補綴物の適合性が高く、咬合の安定性も確認された。術後6か月間にわたる経過観察では、インプラント周囲の骨吸収や炎症は認められず、良好な予後が得られた。
考察
Er:YAGレーザーを用いた殺菌処置は、術中における感染リスクを低減でき、術後の治癒を加速させる効果がある。SPIインプラントは、その設計と表面処理により、即時埋入後でも良好な初期固定と骨結合を確保でき、長期的な安定性が得られる。また、プライムスキャンによる光学印象の採得は、精度の高い補綴物の製作を可能にし、患者にとっても快適で迅速な治療が実現した。これらの技術を組み合わせることにより、即時埋入から補綴セットまでの過程で、予後良好な結果を得ることができた。
結論
術前CBCT、Er:YAGレーザーを使用した殺菌処置は、即時インプラント埋入における感染リスクを最小限に抑え、予後の良好な経過を期待できることが示された。さらに、SPIインプラントやプライムスキャンによる補綴物製作が治療精度を高め、患者の満足度を向上させることができた。今後の症例においても、これらの技術を積極的に活用することで、より良い治療結果が得られると考えられる。
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