195号 WINTER 目次を見る
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新潟県新潟市
ひぐち歯科医院
院長 樋口 克輔
当院がある地区では、歯科技工所が1軒しかなく、高齢の歯科技工士が一人ですべての技工物を担っています。こうした状況は全国に広がっているものと考えられます。以前から、「近い将来歯科技工士が不足する」と指摘されてきましたが、今まさにその懸念が現実となっていることを切実に感じます。
当院では開業当初から鋳造機をはじめとする技工設備を導入し、技工物を一貫して製作できる体制を整えてきました。歯科技工所に外注することが一般的な中で、私自身が鋳造を含めて技工物を製作する理由のひとつが、コストの削減です。特に保険適用の義歯の場合、採算を取ることが難しいと耳にすることがありますが、当院では技工外注費がかからず、コストを最小限に抑えることができているので、採算は取れています。また、納期をコントロールしやすく、早い場合は印象採得の翌日にセットすることも可能です。
私自身、大学時代の恩師が歯科技工を行う先生だったことや、技工室を併設する診療所で勤務をした経験から、開業後も技工物を扱うことは自然な流れでした。あらためて振り返ると、歯科医師が歯科技工を手がける「自家技工」は、支台歯形成や印象採得の精度向上に役立っていると感じています。つまり、これらの工程で妥協してしまうと、後工程で辻褄を合わせる必要が生じます。各工程を疎かにしないことで、結果的にクオリティの高い技工物の製作につながっていきます。
当院では、6年前に高周波吸引加圧鋳造器「エアロマーズ SV」を導入しました。近年の貴金属相場の高騰により、金属材料が金銀パラジウム合金から比較的コストを抑えられるコバルトクロム合金への移行が進んだことがその背景です。コバルトクロム合金は融点が高いことから、高融点金属に対応した鋳造機が必要でした。「エアロマーズ SV」は、低融点金属から高融点金属まで幅広く対応し、200Vの電源で稼働するうえ、コンパクトな設計のため、当院のようにスペースが限られた医院でも、無理なく導入することができました。
使用してみて実感するのは、キャストのタイミングのわかりやすさです。昇温速度が早く待ち時間が短いため、タイミングを逃しにくく、さらには加熱パワーを調整できるので、融点近くで出力を落とすことで、オーバーヒートのリスクが抑えられます。また、金属目視窓には遮光フィルターが採用され、高融点金属でも裸眼で融解の状況を確認できます。その結果、タイミングを正確に見極めることが可能です。
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メタルコアのスプルーイング -
低融点合金が鋳造できることは「エアロマーズSV」の大きなメリットのひとつ。 -
鋳造体(銀合金 砂落とし後)の適合状態 -
メタルフレームのためのパターン作製 -
フレームのスプルーイング -
鋳造体(研磨後)
また、吸引加圧方式によってチャンバー内が真空状態になります。そのため、巣やクラックの原因となるガスの巻き込みが低減されます。スプルーの植立についても、遠心鋳造のように圧力のベクトル方向を考慮する必要がなく、複雑な症例にも対応できます。
ただし、補助スプルーを入れることや、“なめられ”が起きないように太いスプルーを使うなど、面倒でも基礎を守ることが成功のカギとなります。こうしたポイントを押さえておくと、「エアロマーズ SV」の特性を十分に発揮できるので、経験が浅くても鋳造における失敗は少なくなるものと思います。
近年、CAD/CAM冠などのメタルフリー修復が普及しています。しかし、金属補綴が不要になるわけではありません。むしろ、金属補綴に対するアナログ的なアプローチを理解していなければ、デジタル化が進んでも、精度の高い補綴物を製作することは難しいと感じています。
現状の歯科技工士不足を鑑みれば、歯科医師自身が鋳造まで扱えるスキルを身につけることは大切ではないでしょうか。その際に、さまざまな歯科用合金に対応し、簡便で、導入のハードルも低い「エアロマーズ SV」は、有力な選択肢の一つになるものと思っています。何より「自家技工」は、子どもの頃に誰もが持っていた“ものづくりの喜び”を思い出させてくれます。患者さんに喜んでもらえる以上に、私自身が歯科技工を楽しむツールとして「エアロマーズ SV」を重宝しているといっても過言ではありません。
『DENTAL LIFE DESIGN』では、樋口先生の歯科医師以外の多彩な取り組みについて、ご紹介しています。
ぜひそちらもご覧ください。
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別症例:パターンのスプルーイング -
鋳造体(砂落とし後) -
症例の試適の様子 -
金属目視窓より融解の状況や鋳造のタイミングを確認する。 -
フィジオマグネットキーパー(磁石構造体装着前)の鋳造体 -
鋳造後の状態
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