136号 SPRING 目次を見る
■目 次
- ≫ 1. はじめに
- ≫ 2. 「ボンドフィル SB」の特長
- ≫ 3. まとめ
■1. はじめに
近年、酸による歯の化学的溶解(酸蝕:Erosion)、歯の接触による機械的な摩耗(咬耗:Attrition))、歯の接触以外の機械的作用による歯の摩耗(摩耗:Abrasion)、バイオメカニカルな荷重による歯質の喪失(アブフラクション :Abfraction)等の疾患が増加している。
これらの疾患はTooth wearと呼ばれ、現代の食生活習慣の多様化、健康志向、およびストレスの多い社会生活環境の中にあって、超高齢化社会を迎えつつある現状と相まり、むし歯、歯周病に続く第三の疾患として増加の一途にあるといわれている。
また、最近では「Tooth Surface Loss」(TSL:歯質表面損失症候群)という、非う蝕性の表面歯質アパタイトの慢性的な損失による疾患も問題となっている。
これらの疾患に対する治療法の1つに光重合型コンポジットレジン(以下CR)による充塡修復があるが、ボンディング材とCRによる治療法では、歯頸部や切端部など複雑な応力が加わる部位においては、応力に耐えきれず修復物が脱落や破折する問題が指摘されている。このような問題はCR充塡における接着不足や靭性不足が原因と考えられ、長期にわたる耐久性において信頼できる材料の開発が望まれている。
そこで、過酷な口腔内環境においても優れた性能を発揮する「TBB」を重合開始材に用いた、化学重合型の接着充塡材「ボンドフィル SBTM」を開発した。適度な弾性と耐摩耗特性により、対合歯にもやさしいしなやかな接着充塡材を実現した。
■2. 「ボンドフィル SB」の特長
1)「ボンドフィル SB」とは
①優れた接着性
「ボンドフィル SB」は、光の届きにくい部位でも確実に硬化する化学重合タイプの接着充塡材である。空気や水の存在下でも重合する唯一の重合開始剤「TBB」により、高い接着性と辺縁封鎖性を発揮する。
②適度な弾性
アクリルレジン特有のしなやかな物性を有しているので、複雑な外部応力を吸収・緩和することが可能となる。
③適度な耐摩耗性
反応性有機質複合フィラーの配合により、対合歯にやさしい適度な耐摩耗性を実現している。
これらの特性を兼ね備えた「ボンドフィル SB」は、通常のCR充塡による修復では困難であった症例に対してもより理想的な治療を可能にする、歯にやさしいしなやかな接着充塡材と言える。
2)構成品(図1)
・液材:「ボンドフィル SB 液材」(図2)
・粉材:「ボンドフィル SB 粉材ライト」 「ボンドフィル SB 粉材ミディアム」(図3)
・キャタリスト:「ボンドフィル SB キャタリストV」(図5)
・セルフエッチングプライマー:「ティースプライマー」(図6)
構成品は、ボンドフィル SB専用の「液材」、2色の粉
材(図4)「ライト」と「ミディアム」および「キャタリスト
V」に、エナメル質・象牙質兼用セルフエッチングプラ
イマーの「ティースプライマー」を組み合わせたもので
ある。
「液材」と「粉材」の最適化を図ることにより、優れた特性を有した化学重合型の接着充塡材を実現した。
3)ティースプライマー
エナメル質・象牙質兼用セルフエッチングプライマーである。歯にやさしいマイルドな脱灰にも関わらず、従来の表面処理材 高粘度レッドや表面処理材 高粘度グリーンと同等の接着安定性・耐久性を発揮する(図7)。水洗が不要で、エアブローの強弱や処理時間による影響を受けにくいなど、テクニカルエラーの低減も期待できる。
4)優れた物性
①曲げ強さ
フロアブルレジンが硬脆い物性を示すのに対し、ボンドフィル SBはアクリルレジンと同様の柔軟性に富んだ特性を持っている(図8、表1)。
ひずみやたわみなど大きな外部応力が加わる部位への適用においても、しなやかな硬化体特性が応力を緩和するので、レジンの脱離や破折の防止に寄与するものと期待される。
②耐摩耗性
ナノテクノロジーを取り入れた「反応性有機質複合フィラー」を配合することで、アクリルレジンのしなやかな特性を失うことなく、適度な耐摩耗性を実現した(図9、10)。
対合歯に対する咬耗の低減にも着目した、歯にやさしい接着充塡材と言える。
5)優れた操作性
当社独自のフィラー技術とポリマー粒子の配合技術を組み合わせることで、筆積み時の築盛性向上や(図11)、形態修正・研磨時のバーへの巻き付き低減など、優れた操作性を実現した。
また、補修を行う際、CRのような前処理材が不要であり、追加築盛が容易に行える。
図1 ボンドフィル SB。-
図2 液材。 -
図3‑1 粉材ライト。 -
図3‑2 粉材ミディアム。
図4 色見本。-
図5 キャタリストV。 -
図6 ティースプライマー。 -
図7 接着強さ比較表。 -
図8 3点曲げ試験。 -
表1 曲げ強さ。
図9 アラバマ式摩耗試験装置。-
図10 摩耗データ。 -
図11 筆積み時の築盛性。
■3. まとめ
今回発売した「ボンドフィル SB」は、外部応力を緩和するしなやかな硬化体特性と、対合歯にも優しいバランスのとれた耐摩耗性を有した、接着充塡材である。
また、セルフエッチングプライマー「ティースプライマー」を組み合わせることで、エナメル質・象牙質ともに安定した接着性能を発揮する。
従来の修復方法では困難であった症例に対しても、より確実な処置を可能にするものと期待され、今後の先生方の治療にお役立ていただければ幸いである。
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