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184号 SPRING 目次を見る

Clinical Report

MI時代のコンポジットレジン修復戦略~SLDPによる接着耐久性向上と、フルデジタルガイドインデックス活用~

徳島大学大学院医歯薬学研究部再生歯科治療学分野 保坂 啓一/中島 正俊 徳島大学大学院医歯薬学研究部口腔顎顔面矯正学分野 渡邉 佳一郎/田中 栄二 徳島大学大学病院技工室 鴨居 浩平

キーワード:Smear layer deproteinizing pretreatment(SLDP)/インジェクションモールディング法/フルデジタルガイドコンポジットレジン修復/Advanced MIデンティストリー

目 次

はじめに

2002年にFDIにより提唱され、後に改訂されているMIデンティストリーの概念は、ドリル&フィルと揶揄される、十分な検査や診断のない一方通行の治療に警鐘を鳴らし、う蝕管理・う蝕制御が可能であること、また、接着修復による健全歯質保全の重要性を伝え、う蝕予防の実践、接着技法を応用した低侵襲の機能審美接着修復、歯髄保護の概念が浸透した。
一方、「う蝕は減った」というそのイメージと裏腹に、世界で最も多い疾患であり、日本でも成人以降は3人に1人が未処置う蝕を有している(厚生労働省歯科疾患実態調査)。依然として多くの人々が悩まされている疾患がう蝕であり、健康格差などの問題点などと合わせて、健康長寿時代においても対策の必要な深刻な問題であり続けている1)

Smear layer deproteinizing pretreatment(SLDP)

う蝕に対しては、言うまでもなく予防と管理が重要であるが、いざ治療介入が必要になったときは、う窩の開拡やわずかなベベルの付与以上には健全歯質の切削が原則不要の直接法コンポジットレジン修復が推奨される。
また、生物学的観点において、総山孝雄らによるう蝕象牙質2層区分に基づいてう蝕象牙質外層のみを除去し、う蝕象牙質内層を保存する選択的う蝕除去(Selective caries removal)を行うことが、最も重要である。
しかしながら、う蝕象牙質内層への接着性能は、健全象牙質と比較して低下するため、外界からの創面の隔離に影響を与える歯質接着材料の選択とその接着技法が重要となる。
酸性度がマイルドなセルフエッチングシステムは、優れた臨床成績を示すことが報告されている2)が、反面スミヤー層の一部が接着界面に残留し接着耐久性を脅かすと考えられている。
そこで、中島正俊らは、象牙質接着および接着耐久性のさらなる向上のため、次亜塩素酸ナトリウムなどを使ったスミヤー層の有機質を除去し改質する新しい前処理法(Smear layer deproteinizing pretreatment:SLDP)<症例1>に着目し数多くの研究を行ってきた3、4)
SLDPにより有機質が除去されることから、レジンモノマーの浸透性が向上すると同時に、スミヤー層内における接着機能性モノマーのターゲットであるミネラルは維持され、安定した接着界面の形成に寄与し長期接着耐久性が向上するものと考えられている。
一方、次亜塩素酸ナトリウム液を使用するSLDPは、水洗後も酸化物が処理面に残り、接着材の重合阻害を招くため、スルフィン酸ナトリウム塩を含有するクリアフィル® DCアクティベーター(クラレノリタケデンタル)などの還元材の追加塗布が必須であるのだが、興味深いことに、この還元材の前塗布自体もボンディング材の光重合性能を向上させることが明らかとなっている5)
同様の手法は酸蝕象牙質や間接法接着にも応用できることも興味深い。
しかしながら、 接着処理のステップが増えチェアタイムが長くかかるため、後述のインジェクションモールディング法などと合わせ、コンポジットレジン修復治療全体の効率化を考慮しながら臨床応用されることが期待される。

  • 「Smear layer deproteinizing pretreatment」8つの効果
    図1 「Smear layer deproteinizing pretreatment」8つの効果
  • <症例1>
    [写真] 6の歯頸部に充填されているCRのマージンが劣化している
    図2 6の歯頸部に充填されているCRのマージンが劣化しているためリペアを計画した。
  • [写真] CRは窩洞内で接着は破壊され二次う蝕が発生していた
    図3 しかしCRは窩洞内で接着は破壊され二次う蝕が発生していた。
  • [写真] う蝕検知液を用いながらう蝕象牙質外層の除去
    図4 う蝕検知液を用いながらう蝕象牙質外層の除去を丁寧に行った。  
  • [写真] エナメル-象牙境、および最深部の感染歯質をう蝕検知液を用いながら慎重に削除
    図5 エナメル-象牙境、および最深部の感染歯質をう蝕検知液を用いながら慎重に削除していく。
  • [写真] 窩洞外のエナメル質を選択的にリン酸ジェル(KエッチャントGEL/クラレノリタケデンタル)でエッチング
    図6 将来的な辺縁着色発生リスクを低減するため窩洞外のエナメル質を選択的にリン酸ジェル(KエッチャントGEL/クラレノリタケデンタル)でエッチングした。
  • [写真] 還元材(クリアフィル® DCアクティベーター/クラレノリタケデンタル)を10秒間塗布し乾燥を行った
    図7 SLDPとして6%次亜塩素酸ナトリウム液を30秒間塗布後水洗し、還元材(クリアフィル® DCアクティベーター/クラレノリタケデンタル)を10秒間塗布し乾燥を行った。
  • [写真] 抗菌性モノマー含有のクリアフィル® メガボンド® FA/クラレノリタケデンタル)を用いて接着処理を行った
    図8 抗菌性モノマー含有のクリアフィル® メガボンド® FA/クラレノリタケデンタル)を用いて接着処理を行った。
  • [写真] クリアフィル® マジェスティ® ESフローユニバーサル(Uシェード/クラレノリタケデンタル)を用いて積層充填を行った
    図9 クリアフィル® マジェスティ® ESフローユニバーサル(Uシェード/クラレノリタケデンタル)を用いて積層充填を行った。
  • [写真] エンド用ファイルを用いて最表層の充填を行った
    図10 エンド用ファイルを用いて最表層の充填を行った。
  • [写真] カップ状の研磨器具を用いて研磨
    図11 カップ状の研磨器具を用いて研磨。
  • [写真] 術後(6ヵ月後)
    図12 術後(6ヵ月後)。

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