会員登録

197号 SUMMER 目次を見る

Trends

乳幼児期~学齢期のう蝕リスク低減に向けた歯磨剤設計 ~フッ素高滞留技術とソフトペースト技術の活用~

ライオン株式会社 オーラルヘルスケア研究所 仲田 燎平

キーワード:フッ素高滞留技術(F-Ca-P技術)/ソフトペースト技術

目 次

1. はじめに

1989年より厚生労働省(当時、厚生省)と日本歯科医師会が推進している8020運動や、学校における歯・口の健康づくりのための歯科保健活動等により、歯の健康への意識が年々高まっています1)。実際に、5歳~14歳のうち、乳歯または永久歯にう蝕経験を有する者の割合は、1999年の78.3%に対し、2024年では28.6%と、減少傾向にあります2)。しかしながら、未だに約4人に1人がう蝕を経験していることも事実です。
フッ化物応用によるう蝕予防方法としては、歯科医院でのプロフェッショナルケアとしてフッ化物歯面塗布、家庭内でのセルフケアとしてフッ化物配合歯磨剤の使用等が挙げられます。これらのプロフェッショナルケアとセルフケアの両立が、う蝕予防に効果的であると言われています。
2023年には、4学会(日本口腔衛生学会・日本小児歯科学会・日本歯科保存学会・日本老年歯科医学会)合同の提言として「フッ化物配合歯磨剤の推奨される利用方法」が、発出されました(図13)。提言内容には、歯が生えてから2歳児までは900~1,000ppmFの歯磨剤を米粒程度(1~2mm程度)、3~5歳児までは900~1,000ppmFの歯磨剤をグリーンピース程度(5mm程度)、6歳~成人・高齢者は1,400~1,500ppmFの歯磨剤を歯ブラシ全体(1.5cm~2cm程度)に使用することが推奨されています。
そのため、乳幼児期や学齢期においては、年齢に応じて適した濃度のフッ化物が配合された歯磨剤を使用することが望まれます。また、フッ化物が効果的にう蝕予防効果を発揮するためには、フッ化物が口腔内のすみずみまで行きわたることに加えて、すすぎ後にも口腔内に残っていることが重要です。しかし、歯磨剤に配合されているフッ化物は水に溶けやすいため、すすぎや唾液の分泌によって流されやすいという性質があります。
そこで我々は、すすぎ後にもより多くのフッ化物を歯面に残すために、フッ化物(F)と、水溶性カルシウム(Ca)塩、水溶性リン酸(P)塩によるフッ素高滞留技術(以下、F-Ca-P技術)を開発し、う蝕予防に対する有効性を検証しました。

  • [表] う蝕予防のためのフッ化物配合歯磨剤の推奨される利用方法【普及版】(2023年4月)
    図1 う蝕予防のためのフッ化物配合歯磨剤の推奨される利用方法【普及版】(2023年4月)
    (日本口腔衛生学会・日本小児歯科学会・日本歯科保存学会・日本老年歯科医学会)
    出典:う蝕予防のためのフッ化物配合歯磨剤の推奨される利用方法(2023年度版)【普及版】
    https://www.kokuhoken.or.jp/jsdh/news/2023/news_230303.pdf(2025年10月21日アクセス)

2. F-Ca-P技術のう蝕予防効果の検証

F-Ca-P技術のう蝕予防に対する有効性の検証結果として、F-Ca-P技術のエナメル質に対するフッ化物滞留性(実験2-1)、再石灰化促進効果(実験2-2)、フッ化物歯面塗布との併用効果(実験2-3)を紹介します。

実験2-1 F-Ca-P技術のエナメル質へのフッ化物滞留性

3種類の歯磨剤、すなわちCa塩およびP塩を含まないフッ化物イオン濃度950ppmの当社従来歯磨剤(以下、TP-950F)、Ca塩およびP塩を配合したフッ化物イオン濃度950ppmの歯磨剤(以下、TP-950FCaP)、Ca塩およびP塩を配合したフッ化物イオン濃度1,450ppmの歯磨剤(以下、TP-1450FCaP)を用意し、各歯磨剤の4倍希釈液に歯面モデル(ハイドロキシアパタイト板;以下HAp板)を浸漬し、水洗後、大気乾燥させました。その後、HAp板上の滞留物を塩酸で抽出し、抽出液中のフッ化物イオンをイオン電極法により定量しました。
その結果、TP-950F<TP-950FCaP<TP-1450FCaPの順にフッ化物の滞留量は有意に高まることが示されました(図2)。つまりF-Ca-P技術は、エナメル質へのフッ化物滞留性を高めること、また歯磨剤中のフッ化物イオン濃度が高いほど滞留性は向上することが示されました。

実験2-2 F-Ca-P技術の再石灰化促進効果

次に、モデルエナメル質を用いた再石灰化試験を実施しました。再石灰化とは、う蝕が発生する前の段階(初期う蝕)が、唾液中の成分によって修復される現象であり、フッ化物には再石灰化を促進する働きがあります。そこで再石灰化促進効果を確認するため、初期う蝕が形成されたモデルエナメル質を再石灰化液に浸漬し、1日1回、各歯磨剤の4倍希釈液への浸漬を3週間行い、再石灰化による修復具合を比較しました。
結果、F-Ca-P技術を応用した歯磨剤(TP-1450FCaP)では、当社従来歯磨剤(TP-1450F)と比較して再石灰化が有意に促進されることが示されました(図3)。また、再石灰化後のエナメル質の内部を分析すると、F-Ca-P技術を応用した歯磨剤では、エナメル質のより内部にまでフッ化物が浸透している様子が確認されました(図4)。

この記事はモリタ友の会会員限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

残り 2400 文字

モリタ友の会有料会員に登録する ログインする

目 次

モリタ友の会会員限定記事

他の記事を探す

モリタ友の会

セミナー情報

セミナー検索はこちら

会員登録した方のみ、
限定コンテンツ・サービスが無料で利用可能

  • digitalDO internet ONLINE CATALOG
  • Dental Life Design
  • One To One Club
  • pd style

オンラインカタログでの製品の価格チェックやすべての記事の閲覧、臨床や経営に役立つメールマガジンを受け取ることができます。

商品のモニター参加や、新製品・優良品のご提供、セミナー優待割引のある、もっとお得な有料会員サービスもあります。