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197号 SUMMER 目次を見る

Clinical Report

口腔機能を育てる乳幼児期の初診時対応の実際

宮崎県宮崎市 医療法人育成会 矯正・小児ひまわり歯科/歯科衛生士 青木 由美子/坂本 佳奈美/理事長 柿崎 陽介

キーワード: 口腔機能育成/咀嚼機能を育てる視点/健やかな口腔機能発達の土台

目 次

はじめに

乳幼児の口腔内は、まだ歯が萌出していない、前歯の生え始めている、あるいは上下の前歯が揃いつつあるなど、同じ月齢であっても成長段階は一人ひとり異なる(図1, 2)。診療室に来院してくれた乳幼児に対して、私たちはその口腔内から何を見出し、どのようなアプローチを行うべきか?今回は口腔機能と全身がダイナミックに変化する乳幼児期において、特に口腔機能を育てるための当院での初診時対応を歯科衛生士の立場から紹介する。

定期管理型への転換と新たな課題

私は歯科衛生士として、「矯正歯科・小児歯科」での臨床を通じ、多くの子どもたちの成長に寄り添ってきた。新人の頃から担当した子どもたちは成長し、親となり、今では次の世代を連れて来院してくれる。そのような日常臨床の中で、私自身も多くのことを学んだ。そして、現在もなお長期的な口腔管理の重要性をあらためて実感している。
私が当院に入職してから約25年が経つ。以前は、チェアユニットで泣きじゃくる子どものう蝕処置を必死にサポートする処置中心の毎日であった。そして処置が終わると来院が途絶え、しばらくするとう蝕が再発し、また削るという行為の繰り返しに、「これで本当にこの子の将来は守れているのだろうか?」と疑問を感じながら診療を行っていた。
そして当院でも、院長の強い信念のもと、定期管理型の診療への転換を行うことになった。担当歯科衛生士制による一貫性のある継続的なサポートと密なコミュニケーションを軸にした診療体制への移行を行った。その結果、う蝕リスクは改善が見られるようになっていき、定期通院してくれる子どもたちも多くなっていった。
平成28年には、「かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所(か強診)」制度も新設され、予防歯科の重要性は高まった。そして、現在は新たな次の段階の課題に直面している1)。それは、保護者から寄せられる悩みの変化だ。
・「歯並び、噛み合わせが気になる」
・「いつも口が開いている」
・「食べ方が気になる。食べ方が早い」
などの機能的な問題に関する相談が増えているのだ(図3)。

  • [写真] 歯が萌出していない1歳2か月の子ども
    図1 歯が萌出していない1歳2か月の子ども
  • [写真] 上下B~Bが萌出している1歳2か月の子ども
    図2 上下B~Bが萌出している1歳2か月の子ども
  • [写真] 常時口が開いている1歳6か月の子ども
    図3 常時口が開いている1歳6か月の子ども
  • [写真] 保護者の膝の上でリラックスしながら健診を受ける様子
    図4 恐怖心を和らげるため、保護者の膝の上でリラックスしながら健診を受ける。
  • [写真] オリジナル栄養相談カルテ
    図5 当院オリジナル栄養相談カルテ

当院における初診の流れ

現在の当院での初診の流れは以下の通りで、アポイントは60分である。
① 診療室への誘導と問診
② ひまわり歯科診療案内、予防システム説明(年齢別)
③ コンセプト説明
④ 口腔内写真・スナップ写真撮影
⑤ 口腔内診査・健診結果説明
⑥ 口腔衛生指導
⑦ PTC
⑧ フッ化物塗布
⑨ 栄養相談
私たちが、最も大切にしているのは、冒頭の問診からコンセプト説明(①~③)である。まず、当院の診療システム、コンセプトについて説明し、保護者の理解を得る。そして、問診の中で保護者が抱える「悩みの本質」を深掘りし、寄り添うことで信頼関係を築いていく。いきなり診療に入らないことで、不安そうだった子どもも次第に緊張がほぐれ、リラックスして徐々に診察に臨めるようになる(図4)。
写真撮影(④)においては、口腔内に加え、顔貌のスナップ写真も記録する。継続的な写真撮影は、後に成長発達の変化を確認できるだけでなく、子どもの「成長アルバム」としても保護者に大変喜ばれている。お口ポカンなどの習癖を保護者と確認する際にも役立つ。
歯科医師による口腔内診査(⑤)の後に、診断を踏まえて将来の口の変化を予測し、各家庭のライフスタイルに合わせた口腔衛生指導(⑥)とこれからの定期管理について提案する。続いてPTCとフッ化物塗布(⑦, ⑧)を行い、最後は、食や栄養に関するアプローチを行う(⑨)。
ここで「口腔機能発達不全症チェックリスト」2)の評価なども行い、口腔機能の発達状態、会話から汲み取った具体的な悩みなどを保護者と共有する。最近は、乳幼児期から歯並び・噛み合わせに関する相談も多いため、食に絡めた成長発達についても説明を行う。保護者が健やかな子どもの成長を願い、日々の食事に工夫を凝らしているからこそ、そこに「口腔機能を育てる」という視点をプラスしたいと考えている。
管理栄養士がいる診療室であれば「食の実践指導」を連携させることで、より深く一生涯の食べる力を育むアプローチが可能となってくる(図5)。

「正しい機能」は「正しい姿勢」から

口腔機能育成の実践において、私たちは食形態の前に、まず「どのような姿勢で食べているか」を確認する。姿勢の崩れは咀嚼や嚥下に関わる筋肉の不調和を招き、不正咬合や口腔機能発達不全症を誘発する直接的な要因となるからだ。「正しい機能」は「正しい姿勢」からである。
① まっすぐ正面を向いて座ること
テレビが横にあったり、親が隣からスプーンを運んだりしていないか。顔が横を向いたままの食事は、左右の咀嚼バランスを崩す。まずはテーブルに対し、体が正面を向く環境を整える(図6, 7)。
② 足の裏がしっかりと床についていること
足がぶらぶらと浮いた状態では体幹が安定しない。姿勢を保とうとして猫背になりやすく、余計な力が入りバランスが崩れる原因となる。足の裏が接地することで初めて体幹が安定し、適切な咀嚼が可能になる。椅子が高い場合は、足置き台を設置するなど「踏ん張れる環境」を提案する。
③ 背中と背もたれが離れすぎないこと
背中から背もたれまで幅がありすぎると、お尻が前にずれる「ずっこけ座り」を誘発する。この状態では咀嚼機能が低下し、正しい嚥下が困難になることも懸念される。追加の背もたれを挟むなど、安定して座れる工夫を提案する(図8, 9)。

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