会員登録

197号 SUMMER 目次を見る

Business Management

ハッピーリタイアは公平ではない 第2回 承継の際には、個人・医療法人のどちらが『お得』!?

税理士法人 FIA 取締役・メディカルコンサルティング事業本部長 宇津原 尚明

PDFダウンロード

目 次

医療法人の設立意図について考える

第2回目となる本稿では、ハッピーリタイアを迎える際に、個人事業主と一人医師医療法人のどちらに利点が多いかという点について説明します。
一人医師医療法人とは、1人または2人の医師・歯科医師が常勤する診療所を開設する社団・財団法人のことを指します。医療法上は一般の医療法人と同じ扱いですが、平成19年(2007年)4月の法改正によって、それ以前に開設された法人を「旧法医療法人」と呼び、法改正以降に開設された法人を「新法医療法人」と呼びます。
医療法人の設立意図は、「今後も医学の進歩に合わせた近代医療を提供し、より一層地域医療に貢献するため、家計と経営を分離した近代的経営を図り、医療の質の向上及び医療の永続性の確保を図る。」(兵庫県ホームページ「一人医師医療法人について」設立趣意書より引用)ということが大前提とされています。その結果、所得税法から法人税法の適用となり、副産物として節税が叶うだけである点は、ご理解いただきたいと思います。

医療法人の申請ステップと法人化のメリット

医療法人を申請する過程で、理事長予定者との面談を行う都道府県があります。その面談では、主に次の2点を質問されることが一般的です。1つは、「節税だけが目的ではありませんか?」という質問です。2つ目は、「MS法人(メディカルサポート法人)はありませんか?」という質問です。これらの質問への回答を誤ると、申請が取り下げになる可能性があります。(なお、恒久的に申請できなくなるわけではなく、次回以降の申請は可能です。)MS法人を所有すること自体が、なぜか節税悪と理解されているのではないかと私は推測しています。
近畿厚生局管内では、個人事業主として開業し、1年以上の実績を積んだ後、医療法人への組織変更を行うのが一般的です。申請は保健所を経由して、府・県庁に提出します。この点については、読者の先生方も周知されていることと思います。地域によっては開業当初から新法医療法人を設立することも可能ですが、最初から新法医療法人で開業することは、あまりお勧めしていません。まず個人事業主として開業し、所得税法上の節税策をひと通り活用したうえで、医療法人化を検討するという流れが多く見られます。ちなみに、弊社の顧問先歯科医院のうち、約3分の2は旧法または新法いずれかの医療法人です。

2回目の今回は、承継の際に個人事業主と医療法人のどちらにメリットがあるかについて解説します。

個人事業主と医療法人の違い

個人事業主の場合、開設者・管理者ともに先生ご本人となります。一方、医療法人の場合は、開設者は医療法人、管理者は先生という形になります。個人事業主のまま事業譲渡を行う場合、診療所の「閉鎖」と「新規開設」の両方の手続きが必要です。しかし、医療法人であれば、管理者変更の手続きだけで済みます。
一見すると手間はそれほど変わらないように思えますが、個人事業主として新たに開設する場合には、以下のような多くの手続きが発生します。保健所・厚生局への届出(施設基準の届出を含む)
・ X線装置の設置および漏洩検査(約10万円の費用)
・ 労働基準監督署での労働保険成立手続き
・ ハローワークでの雇用保険適用事業所の設置
・ 税務署への開業届、青色申告承認申請 など
つまり、個人事業主として新規開院するのとほぼ同じ作業量になります。これに対し、医療法人への組織変更時には、行政書士と連携してこれらの手続きをすでに完了しています(申請報酬はおおむね100万円程度)。そのため、組織変更後は、管理者が変更したことを各機関に届け出るだけで済みます。
なお、次回のテーマにもつながりますが、医療法人の法人格は有償で譲渡することが可能です。目安として、
・ 旧法医療法人:平均 約700万円前後(過去には1,000万円を超えるケースもあります。)
・ 新法医療法人:平均 約400万円前後
となっており、いずれの場合でも、設立時の行政書士への報酬(約100万円)を差し引いても黒字になります。

承継を考えるなら法人化が望ましい

結論として、ハッピーリタイアを迎えるタイミングでは、医療法人になっていることをお勧めします。後継者がご子息・ご息女であれば、個人事業主として新規開設と同等の手間を負わせたいと考える先生は、ほとんどいないはずです。もちろん、医療法人になると社会保険は強制適用となります。そのため、スタッフの将来年金として、給与の約9.15%(令和8年現在)を法人が負担する点については、顧問税理士と十分に相談してください。
一方で、個人事業主から医療法人へ組織変更する際には、
・ 措置法26条の適用(保険診療に限り概算経費を計上できる制度)
・ 消費税課税事業者から免税事業者への切り替え
・ 小規模企業共済の強制解約(退職所得として受給)
・ 社会保険料の節約(略して「節社保」)
など、手元資金を増やすための選択肢が多く存在します。ただし、あくまで「設立の大義」があってこその組織変更であることは、冒頭の注意点として、くれぐれもお忘れにならないでください。

目 次

モリタ友の会会員限定記事

他の記事を探す

モリタ友の会

セミナー情報

セミナー検索はこちら

会員登録した方のみ、
限定コンテンツ・サービスが無料で利用可能

  • digitalDO internet ONLINE CATALOG
  • Dental Life Design
  • One To One Club
  • pd style

オンラインカタログでの製品の価格チェックやすべての記事の閲覧、臨床や経営に役立つメールマガジンを受け取ることができます。

商品のモニター参加や、新製品・優良品のご提供、セミナー優待割引のある、もっとお得な有料会員サービスもあります。