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197号 SUMMER 目次を見る

Case Report

アドベールSH全国横断連載企画<第1回> 小児治療の日常臨床で活躍するAdverl SH

Cum Cum Dental Clinic 副院長 今野 詩帆生

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キーワード:Er:YAGレーザー/上唇小帯切除術/チェアタイム短縮

目 次

はじめに

父である院長がモリタ社製Er:YAGレーザー「Erwin」を診療室に導入したのは、私が小学生の頃でした。父が「これが最新の機械だぞ!」と、白くて大きな箱型の機械を嬉しそうに見せてくれた日のことを鮮明に覚えています。月日が経ち、私も歯科医師となって父と一緒に働くようになりましたが、その姿は変わりながらも、いつも当院の診療の右腕として活躍してくれているのがモリタ社製Er:YAGレーザーです。
大学の授業ではなかなかお目にかかることがないので、歯科医師となって自ら学び導入に至る先生が多い機器かと思います。日々の診療で私が躊躇なく、タービンを握るのと同じ感覚で使用できているのは、ある意味父の英才教育だったのかもしれません。
もう一人、私のEr:YAGレーザーの師匠がいるのですが、その先生から卒後すぐに「エルビウムがうまくなるコツは、いつでも起動できるようにすぐそばに置いておくことだよ」とアドバイスいただいたことも、私のEr:YAGレーザー人生に大きく影響しています。
「Adverl SH」( 以下:SH)が発売されることとなり、今までのモリタ社製Er:YAGレーザーのスペックと比べて格段に進化しているという噂が、前機種ユーザーの中に広がりました。そうなると欲しくてたまらない(笑)。導入しても間違いなく活用できる自信があったので、「SH」の導入を決めました。

「SH」の進化

「SH」はパルスモードの進化やプリセットモードの導入により、さらに効率的に使用できるようになった印象です。特にプリセットモードはこれまで長年にわたり、Er:YAGレーザーに携わってこられた先生方の経験をもとに設定され、これまで以上にEr:YAGレーザーを身近な存在としてくれる素晴らしい機能だと思います(図1)。前機種から比較すると、起動までの時間も早くなり、機器本体の見た目もよりスマートに生まれ変わって、使い勝手が良くなりました。また、Er:YAGレーザーの弱点は止血にあると言われてきましたが、「SH」から止血も問題なくでき、小手術の際には大変助かっています。

  • [写真] プリセットモード(小帯切除)
    図1 「プリセットモード(小帯切除)」

小児治療への応用

今回提示した症例も同様ですが、私がいちばん恩恵を受けていると感じているのは、小児の治療です。常日頃から小児の治療において配慮している点は、治療時間の短縮・治療内容のシンプルさ・治療後の経過です。小児は集中していられる時間が限られているため、治療中は術者の動作にも十分留意し、術中・術後の痛みをできる限り軽減するとともに、治療が終了し帰宅後もできる限り早く、普段通りに過ごせるよう配慮する必要があります。
症例は上唇小帯切除術です。当院ではEr:YAGレーザーを使用して、80症例以上の小児の上唇小帯切除術を行ってきました(図25)。
従来の方法では切開、縫合を必要とし、煩雑な手技が用いられてきました。治療の手技も多ければ、使用する器具も多い。「SH」があれば、必要なのは3つだけ。浸潤麻酔と小帯を持ち上げておくための持針器と「SH」のみです。
当院では、上唇小帯切除術にEr:YAGレーザーを用いることで、組織への侵襲を抑えつつ切開・蒸散を行うことが可能となります。また、注水下で処置を行うことにより、術野の視認性を保ちながら処置を進めることができます。その結果、手技の簡易化およびチェアタイムの短縮が可能となり、術後疼痛の軽減や治癒期間の短縮にもつながっています。
前機種の際には浸潤麻酔後5分ほどでしたが、「SH」になってからはより治療時間が短くなり、今は3分ほどで終了します。これは「SH」の切れ味の良さと止血モードによる恩恵です。
小児の上唇小帯切除術には、切除の時期・保護者の理解・患児の治療への協力度が重要なため、今後上唇小帯切除術の対象となり得る患児については、早めにその旨を保護者にお話しています。切除のタイミングや術式、Er:YAGレーザーの特徴を理解していただいておくと、スムーズで、切除によい時期と患児の成長・協力度の具合が合うタイミングで行います。
Er:YAGレーザーはIEC/JIS規格ではClass4の機器ですので、当院ではユニット上で常に動いてしまうような患児は、安全面を考慮して、使用しないこととしています(図6)。また、安全管理の観点から管理区域内への保護者の立ち入りは禁止しており、母子分離に協力していただいています。
実際に治療してきて体感していることは、治療時間の短縮は患児の負担軽減だけではなく、保護者の安心にもつながるということです。保護者にとっては、自分の子供が切開されるという印象は拭えず、治療当日に本人よりも保護者が緊張していることもしばしばありますが、終了したことを伝えると、「もう終わったんですね」という言葉と共に、安堵の表情が見られます。
術後疼痛もほとんどの症例で認められません。これには、Er:YAGレーザーの特徴である生体反応をできる限り抑えながら処置ができる部分にあります。熱のダメージが非常に少ないため、炭化や凝固壊死を回避し、治癒が早く、上唇小帯切除術後、翌日には患児もいつも通りの生活を送ることができます。翌日以降には早期に蛋白変性層が認められることで、後戻りも起こりにくく、1か月後の予後も良好です。

  • [写真] 術前
    図2 術前 歯間部におよぶ異常型Ⅳ型の上唇小帯が認められる。
  • [写真] 術直後
    図3 術直後 後戻りを防ぐため、歯間部まで照射を行う。その後、「プリセットモード(止血)」にて止血を行う。
  • [写真] 翌日
    図4 翌日 術後翌日には蛋白変性層が認められ、早期の治癒が期待できる。
  • [写真] 2週間後
    図5 2週間後 後戻りは認められず、経過良好。側切歯の交換期まで慎重に経過を確認する。
  • [表] レーザーのクラス分け概要
    図6 レーザーのクラス分け概要
    (参考文献:デンタルダイヤモンド社「レーザー歯学の手引き」一般社団法人日本レーザー歯学会[編])

動画はこちらから

最後に

当院のスタッフは歴代のモリタ社製Er:YAGレーザーを見てきていますが、「SH」になってからのチェアタイムの短縮には驚いていました。また、注射用水の交換時期の確認ができる小窓が搭載されていたり、自動的にフラッシングできる機能が搭載され、日々のメンテナンスの際にも助かるようです。様々な処置に応用できるEr:YAGレーザーがさらに広がり、患者さんにも術者にもより良い形で活躍してくれることを祈っています。

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