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Interview

歯科衛生士・歯科衛生学生を対象にした「鼻洗浄に関する認識」の研究結果が示すもの

愛知学院大学短期大学部歯科衛生学科 教授 稲垣 幸司

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目 次

  • [写真] 愛知学院大学短期大学部 歯科衛生学科 教授 稲垣 幸司
    愛知学院大学短期大学部
    歯科衛生学科
    教授 稲垣 幸司

鼻洗浄(鼻うがい)に対する認知・理解の現状を把握するため、歯科衛生士、歯科衛生学生を対象とする研究が2025年に実施されました。本研究を主導した愛知学院大学短期大学部の稲垣幸司教授に取り組みの背景や結果について、さらに、同短期大学部の専任教員で歯科衛生士の新野麻里さん、八柳春菜さんには、鼻洗浄の患者さんへの提案方法などについて伺いました。

鼻洗浄に関心を持ったきっかけと今回の研究について教えてください

2020年のコロナ禍において、手洗いやうがいでは洗浄できない、鼻腔の清潔保持という課題に気づき、鼻洗浄に関心を持つようになりました。鼻の奥にある上咽頭は、免疫を司る扁桃腺がある重要な器官で、耳鼻咽喉科領域では上咽頭の治療により、不定愁訴が改善する症例も報告されています。
この重要な上咽頭の洗浄には鼻洗浄が適切だと考えています。そこで、リカレント研修で研修プログラムを受講していた歯科衛生士に紹介したところ、良い感触を得られたことから、現時点での認知度や理解度を把握するため、研究を開始しました。

具体的にはどのような研究が行われたのでしょうか

歯科衛生士と歯科衛生学生を対象に、免疫器官としての上咽頭の認知、鼻洗浄経験の有無、口呼吸の健康リスクの認知、歯科での鼻洗浄商品販売の認知などの21項目を、無記名Web調査形式で実施しました。結果は389名から回答があり、有効回答数は340名(歯科衛生士71名、歯科衛生学生269名)です。結果の一部を抜粋すると、免疫器官としての上咽頭の役割については、歯科衛生士の47.8%、歯科衛生学生の38.2%が認知していることがわかりました(図1)。また、鼻洗浄経験の有無については、歯科衛生士が35.2%、歯科衛生学生が19.3%で、歯科衛生士の方が鼻洗浄の経験が多いことがわかりました(図2)。さらに、口呼吸の全身への健康リスクについては、歯科衛生学生の87.3%、歯科衛生士は全員が認知しており、高い確率で健康リスクを認知していることがわかりました(図3)。歯科での鼻洗浄商品販売の認知については、歯科衛生士が22.5%、歯科衛生学生が29.7%となり、ともに認知度は3割を下回る結果となりました。

  • [グラフ] 歯科衛生士、歯科衛生学生の免疫器官としての上咽頭の役割の認知(%)
    図1 免疫器官としての上咽頭は、歯科衛生学生103名(38.3%)、学年別では、1年生26名(31.7%)、2年生37名(37.7%)、3年生40名(44.9%)が認知し、学年が上がるにつれて上昇した。一方、歯科衛生士は、34名(47.8%)が認知し、歯科衛生学生より認知率がやや高かった。
  • [グラフ] 歯科衛生士、歯科衛生学生の鼻洗浄経験の有無(%)
    図2 鼻洗浄は、歯科衛生学生52名(19.3%)、学年別では、1年生14名(17.0%)、2年生25名(25.5%),3年生13名(14.6%)が経験していた。一方、歯科衛生士は、25名(35.2%)が経験があり、歯科衛生学生より多かった(P < 0.05)。

今回の研究結果を踏まえて、今後の展望をお聞かせください

[写真] 稲垣 先生現段階で最も重要なことは、鼻洗浄の現状と実態を正確に把握することです。認知度が低いという研究結果を提示するだけでは何も残りません。正当な手続きに則って調査・研究を行い、それを発表し、論文として残して初めて、この分野は発展します。今回の研究により、国民の口腔保健向上と健康増進のため、鼻洗浄商品を活用した鼻呼吸指導の啓発が急務であることが明確になりました。それを今後の展開に向けた第一歩とし、上咽頭の健康が全身の健康につながるという可能性を、研究を通じて科学的に明らかにしていきたいと考えています。

鼻洗浄を患者さんに提案する上で大切にしていることを教えてください

<歯科衛生士 新野麻里>
鼻洗浄は痛そうで怖いというイメージを持っていましたが、風邪をひいたことをきっかけに実際に試してみると痛みがなく、それ以来継続しています。普段の臨床において、多くの患者さんと鼻洗浄についてお話しする中で、特に、風邪をひいている、咳が出る、喉が痛い、朝起きたときの口臭が気になるなど、具体的な悩みを抱えている方は、鼻洗浄を継続されることが多いように思います。私自身も、風邪予防の選択肢として手洗い、うがいに加えて、鼻洗浄という選択肢があることを心強く感じています。
患者さんに勧める際に大切なのが、信頼関係です。ラポール形成がうまくいっていると歯科衛生士としての提案を受け入れてもらいやすくなります。患者さんとのコミュニケーションを通して、生活背景を知ること。さらに、患者さんとの関係性を築きながら、提案力を養っていくことが重要だと考えます。

<歯科衛生士 八柳春菜>
リカレント研修では必ずアレルギーの有無を確認しており、花粉症を患っている人、季節の変わり目に咳や鼻水が出る人、掃除のときにくしゃみが出る人など、何らかのアレルギー症状がある人に鼻洗浄を勧めています。特に、花粉症の時期に歯科医院の予約を避けるなど、行動制限が出ている人には積極的に伝えるように話をしています。そこで大切にしているのが、自分の体験談を伝えることです。「痛くなかった」「しみなかった」という実体験を話すと、やってみようという気持ちになってもらえます。痛いかもしれないという不安が最大のネックなので、専用の洗浄液を適切に使用すると、すんなりできることを伝える取り組みが重要です。また、普及のためには、歯科衛生士が正しい知識を持つことはもちろんですが、歯科医師の理解も不可欠です。院長である歯科医師が必要性を理解していただくことで、医院に導入されやすくなります。双方が鼻洗浄の機序を理解し、実際に経験して患者さんに伝えていただくことが大切だと考えています。

本研究に関する詳細は、以下からご覧ください。「松本伸一, 稲垣幸司, 桐山朋子, 萩本志保:歯科衛生士, 歯科衛生学生の鼻洗浄に対する認識に関する研究. 医線探報, 9(1):23-27, 2026.」

  • [グラフ] 歯科衛生士、歯科衛生学生の口呼吸の健康リスクの認知(%)
    図3 口呼吸の全身への健康リスクは、歯科衛生学生235名(87.3%)、学年別では、1 年生61名(74.3%)、2 年生86名(87.7%)、3 年生88名(98.8%)と、学年が上がるにつれて上昇傾向であった。一方、歯科衛生士は、71名(100%)と全員が認知していた(P < 0.01)。
  • [グラフ] 歯科衛生士、歯科衛生学生の歯科での鼻洗浄商品販売の認知(%)
    図4 歯科での鼻洗浄商品販売の認知は、歯科衛生学生80名(29.7%)、学年別では、1年生19名(23.1%)、2年生35名(35.7%)、3年生26名(29.2%)で、歯科衛生士16名(22.5%)であった。歯科衛生学生、歯科衛生士とも、歯科での鼻洗浄商品販売を認知しているとの回答は3割を下回った。

図14 第13回日本病巣疾患研究会 一般演題「歯科衛生士,歯科衛生学生の鼻洗浄に対する認識に関する研究」稲垣幸司他(2025年9月)より一部抜粋

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