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197号 SUMMER 目次を見る

Clinical Report

萌出直後・防湿困難なMIH症例における充填材の選択 ~「ボンドフィルSB®Ⅱ」の有用性~

医療法人まるやま歯科 丸山 俊正

キーワード: 小児エナメル質形成不全/防湿困難な環境下での確実な接着

目 次

はじめに

現代の歯科臨床において「接着」という概念が非常に重要であることは疑いようもない。これまで、修復処置から補綴装置の装着、矯正治療に至るまで、さまざまな臨床の現場で接着歯学が応用されてきた。
1980年代にサンメディカル社より「スーパーボンド」が発売されて以降も、数多くのメーカーが接着を応用した製品を世に送り出してきた。どの製品も各メーカーの技術の結晶であり、一定水準以上の接着強さを実現しているものばかりである。
一方で、充填物や補綴装置の脱離、二次う蝕といったトラブルは絶えない。う蝕の取り残しや補綴装置の適合の問題など、接着以外に原因がある場合も考えられるが、やはり接着操作時の防湿環境確立の難しさに起因するものも多いのではないだろうか。
今回、このような臨床の現場での問題を解決する材料として「ボンドフィルSBⅡ」(図1)に焦点を当て、その有用性を考察したい。

湿潤環境に強い材料の必要性

現在使用されている材料の多くは、使用時に歯質の乾燥状態を長時間維持する必要があり、ラバーダム防湿などで環境整備をすることが推奨されている。しかし、実際は歯肉縁下に対する充填処置や、治療の協力が得られない小児など、最適な防湿操作を行えない環境で治療を余儀なくされる場合も存在する。そのような場合、簡易防湿を用いて接着操作を行うが、長時間乾燥状態を保つことが困難なケースも多い。そのため、可能な限り少ないステップで時間をかけずに一連の操作を終了でき、さらに湿潤環境に強い材料が求められる。

湿潤環境下に適した充填材

こういった臨床現場での使い勝手と、防湿困難な環境下での確実な接着を実現した材料が、サンメディカル社の「ボンドフィルSBⅡ」である。本製品は、その発売以来、長い間歯科臨床の現場で第一線を走り続けている同社の「スーパーボンド」(図2)の重合機構を応用した接着充填材であり、湿潤状態で充填しても十分な接着強さを有する、まさに防湿環境の確立が困難なケースのためにある材料といっても過言ではない。著者の診療室では、さまざまな臨床ケースにおいて本製品を使用しているが、今回は小児のエナメル質形成不全に焦点を当ててみたい。

  • [写真] 歯科充填用アクリル系レジン:「ボンドフィルSBⓇⅡ」
    図1 歯科充填用アクリル系レジン:「ボンドフィルSBⅡ」
  • [写真] ボンドフィルSBⓇⅡ
    図2 「ボンドフィルSBⅡ」はサンメディカル社から発売されている「スーパーボンド」の重合機構を応用した製品である。
  • [写真] グラスアイオノマーセメントによる暫間充填
    図3 グラスアイオノマーセメントによる暫間充填。対合歯との接触により摩耗し、すり減っている。

エナメル質形成不全に対する「ボンドフィルSB®Ⅱ」の有用性

MIH(Molar Incisor Hypomineralization)とは、第一大臼歯と切歯に限局して発症する原因不明のエナメル質形成不全と定義されており、日本人における発生頻度は11.9%と報告されている1)。著者も日々の診療で遭遇する頻度は高く、多少の白濁を伴う程度のものから、対合歯との接触により歯冠崩壊に至るような重度のケースまで、その臨床所見はさまざまである。なかでも咬頭が崩壊していくケースでは、早期に歯質の補強を行う必要があるが、萌出直後の年齢(6歳前後)を考慮すると、十分に患児の治療協力が得られない場合も多い。このような場合、グラスアイオノマーセメントによる一時的な補強充填を繰り返し行い、完全萌出および患児の治療協力が得られた後にラバーダム防湿下でコンポジットレジン等の材料で最終充填を行ってきたが、補強充填を行うなかで咬合力により充填物が容易に摩耗し、その結果、対合歯の挺出を招いてしまうことも経験してきた(図3)。
「ボンドフィルSBⅡ」は、湿潤環境下においても十分な接着強さを有するうえに、有機質複合フィラーを配合することで適度な耐摩耗性を実現しており、萌出直後のMIHに対して最適な材料である(図4, 5)。
今回は防湿が難しいと判断した小児のエナメル質形成不全の症例を供覧する。

  • [図] 湿潤環境下においての接着強さ
    図4 湿潤環境下でも十分な接着強さが得られる製品であることは臨床上非常に有用性が高い。
  • [図] 摩擦量のグラフ
    図5 耐摩耗性にも優れるため、咬合面の充填にも使用可能である。

「ボンドフィルSB®Ⅱ」の操作性

「ボンドフィルSBⅡ」は標準セットを購入すれば、粉材や液材はもちろん、処置時に必要なディスポーザブルのダッペンカップやディスポチップまで、すべての材料が専用ケースに揃うため、チェアサイドに1セット置いておけば使用時の準備もスムーズに行うことができる(室温保存可能)。
「ボンドフィルSBⅡ」は、「スーパーボンド」と同様にMMAを主成分とした液材(図6)にTBBを主成分とした重合開始剤「キャタリストV」(図7)を加え、有機質複合フィラーを配合した粉材(図8)と混和することで重合硬化する。「ボンドフィルSBⅡ」は光重合機能が付与されたデュアルキュア型接着充填材であり、充填後に光照射を行うことで、早期に一定の硬化促進を得ることができる。なお、エナメル質、象牙質兼用のセルフエッチングプライマー「ティースプライマー」を使用することで、より強固な歯質との接着が可能となる(図9)。

  • [写真] MMAを主成分とした専用の液材
    図6 MMAを主成分とした専用の液材。
  • [写真] キャタリストV
    図7 「キャタリストV」は水分や酸素と反応し重合が促進される。本製品が湿潤環境でも良好な接着性を発揮する理由である。
  • [写真] 幅広い歯冠色に使える「マルチ」と前装冠の修復などに便利な金属遮蔽性のある「オペーシャス」
    図8 粉材の色調は幅広い歯冠色に使える「マルチ」と前装冠の修復などに便利な金属遮蔽性のある「オペーシャス」の2種類が用意されている。
  • [写真] ティースプライマー
    図9 「ティースプライマー」は「スーパーボンド」と同製品のため共用可能。

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