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Field Report

セミナーには全員が参加。院内一丸となって取り組む感染管理

栃木県小山市 石川歯科クリニック 院長 石川 一麿/歯科衛生士 毛塚 由美子

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栃木県小山市 石川歯科クリニック

  • [写真] 院長 石川 一麿
    院長
    石川 一麿
  • [写真] 歯科衛生士 毛塚 由美子
    歯科衛生士
    毛塚 由美子

<石川一麿 院長>
当院ではこれまでも積極的に感染管理に取り組んできましたが、コロナ禍を経験する中で、どこまで対策を講じるべきか疑問が生じるようになりました。通常の業務を圧迫する場面もあり、感染管理について見直すべく、2021年に歯科感染管理協会のオンライン講座をスタッフ全員で受講しました。
思えば、私が大学に在籍していた当時は臨床現場に即したスタンダードプリコーション(標準予防策)のような考え方を学ぶ機会は少なかったように思います。今回、学び直してみると、長年の習慣で行っていたことが現在の標準予防策には準じていないケースが見つかるなど、知識をアップデートすることに役立ちました。今では当院で働くすべてのスタッフには必ず同講座を受けてもらうようにしています。
感染管理は効果が見えづらいことに加え、さまざまな面でコストがかかります。しかし、地域の方に安全な医療を提供するためには、そして、スタッフがプライドを持って働ける環境をつくるためには、かけるべきコストであると私自身は考えています。
次に当院における感染管理の実践例(図1)について、毛塚歯科衛生士からご報告します。

  • [写真] うがいを促すためのPOP
    図1 石川歯科クリニックでは新型コロナ対策として、ユニットに座ったら、洗口剤が入ったコップで患者さんにうがいをしてもらう。写真はうがいを促すためのPOP。
  • [写真] ユニットの近くに貼られた患者さん向けのPOP
    図1-2 ユニットの近くに貼られた患者さん向けのPOP。マスクの扱い方など新型コロナ感染対策に関する「お願い」を掲示している。
  • [写真] 滅菌された器材など清潔なものは同じ場所にまとめて管理
    図1-3 滅菌された器材など清潔なものは同じ場所にまとめて管理している。

<毛塚由美子 歯科衛生士>
歯科感染管理協会の講座を受講してまず良かったことは、清潔域、不潔域の区分といった感染管理を実践するうえでの基軸を持てた点です。そして、もうひとつはスタッフ全員が受講することで、その基軸を全員で共有できた点です。
感染管理は誰か一人が率先して行っても十分な効果を発揮することはできません。歯科医師や受付スタッフを含め、院内の全員が同じ意識を共有し、チームとして取り組むことが何よりも大切になります。その知識、意識を維持していくためにマニュアル(図2)を作成しています。マニュアルは業務を効率よく、一定水準に行うためにも役立ちますし、今後、感染対策をアップデートする場合にも様々な状況を振り返ることができ非常に有用だと考えています。
講座の受講前後で大きく変わったことは、どこまで確実に実施し、どこまでなら許容するかという線引きがつくれたことです。それまではコロナ禍だったこともあり、患者さんが触るであろうすべての箇所を頻繁にアルコール消毒していました。
しかし、例えば、うがいのためのスピットンは直接手を触れる場所ではないため、患者さんごとに消毒を行う必要はないという判断に至りました。待合室についても患者さんの唾液や血液に直接触れる可能性は低いため、各所をアルコール消毒する回数は減らしました。
現在、当院で注力しているのが手指衛生です。忙しい時には、私自身も含め、つい疎かになりがちですが、手指衛生は感染管理の基本になります。POP(図3)を貼って注意を促したり、モチベーションを保つためのアイデアをスタッフ同士で出し合ったりするなどの工夫をしています。
アルコール消毒薬はゲル剤の「ゴージョーMHS」を使用しています。保湿性に優れた製品を選ぶことで手荒れを防ぐことができる点、液垂れがしにくいので不必要に床を汚すことがない点などが「ゴージョーMHS」を採用している理由です。
感染管理の見直しをしていくにあたり、いかに効率よく感染対策できるか、またコスト面についても、院長、スタッフで十分に話し合い、経営の負担にならないよう留意しています。
私たちは通院する患者さんも働くスタッフにとっても安全で安心できる環境づくりを目指しています。感染管理の意識を高く持つようにこれからも心がけていきたいと思っています。

  • [写真] 最新の感染管理の情報や医院独自のルールをまとめたマニュアル
    図2 歯科感染管理協会のオンライン講座の内容をはじめ、最新の感染管理の情報や医院独自のルールをまとめたマニュアルを作成し、スタッフ全員で共有している。
    • [写真] 手指衛生に関するPOP
    • [写真] 手指衛生に関するPOP
    図3 スタッフの目につきやすい場所に手指衛生に関するPOPを貼り出し、手指衛生へのモチベーションを保つ工夫を行っている。

歯科助手・受付の方にもお話を伺いました

<植野麻有さん 歯科助手・受付>
当院で働く以前は介護福祉士をしていました。当時、業務の一環として口腔ケアを行うことはあったものの、それ以外の歯科に関する知識はなく、感染管理についても特に学んだことはありませんでした。
受付や待合室では診療エリアよりも身構えずに過ごす患者さんが多いように思います。そのため、マスクを外して会話をしたり、口の中に手を入れて主訴を伝えたり、持ってきた脱離物をカウンターに置いたりと、感染リスクが高まる場面が多い傾向にあります。
飛沫対策などはしているものの、コロナ禍の頃はどこまで対策をすれば患者さんにとってもスタッフにとっても安全を守れるのか、常に不安を感じていました。
私は歯科助手、受付の立場ではありますが、感染管理を学ぶことは、患者さんや私を含めたスタッフ全員の身を守るためにも必要だと考えています。さらに、学んだ知識を患者さんにお伝えし、常に安心して来院していただける環境をつくるという点でも大切なことだと感じています。

アルコール消毒剤による手指衛生のポイント
  • [写真] ポンプを下までしっかり押し、消毒剤を両方の手にまんべんなく擦り広げる
    ポイント①
    ポンプを下までしっかり押し、消毒剤を両方の手にまんべんなく擦り広げる。
  • [写真] 片方の手のひらの上で、もう一方の指先や爪の間に擦りこむ
    ポイント②
    片方の手のひらの上で、もう一方の指先や爪の間に擦りこむ。
  • [写真] 親指はもう片方の手のひらで包み、ねじるようにして消毒剤を擦りこむ
    ポイント③
    親指はもう片方の手のひらで包み、ねじるようにして消毒剤を擦りこむ。
  • [写真] 手首の消毒も意外と忘れがちなので要注意。手洗い後はきちんと乾燥させる
    ポイント④
    手首の消毒も意外と忘れがちなので要注意。手洗い後はきちんと乾燥させる。

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