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188号 SPRING 目次を見る

Technical Report

光の遮蔽を考慮したスーパーポーセレンAAAとセラビアン®ZRのパウダー選択

株式会社ハナキューデンタルラボ 三浦 大輔

キーワード:ポーセレンラミネートベニア製作時の遮蔽/PFZ製作時の遮蔽

目 次

はじめに

現在、メーカーから様々な透過率の差異を有するジルコニアディスクが発売され術者の選択の幅が広がり、審美領域部位にもモノリシックジルコニアが多く用いられるようになった。メタルにより完全に光を遮断された層にオペークを塗布することで擬似的に色調を表現する従来のPFMとは異なり(図1)、透光性を有するジルコニアディスクを使用した補綴物は天然歯牙と同様に透光性を有するため、現在の高い審美性を実現させた。しかしその反面、着色の強い支台歯や金属支台歯などの場合、その影響を受け明度低下の原因となる。本稿では、オールセラミックスの中でも比較的薄い層で光のコントロールを行うことの多いポーセレンラミネートベニア(以下PLV)2症例(「ノリタケスーパーポーセレンAAA」使用:クラレノリタケデンタル株式会社)と、モノリシックジルコニアの作製依頼からPFZに変更させていただいた症例(「セラビアンZR」使用:クラレノリタケデンタル株式会社)を通してお伝えしたい。

  • [写真] オペークを塗布し擬似的に色調表現をおこなう
    図1 PFMはメタルにより光を遮断された層からオペークを塗布し擬似的に色調表現をおこなうため透光性は天然歯牙とは全く異なる。

症例1

外傷により歯冠中央から接縁部にかけて破折した症例

PLVの多くは0.5~1.0ミリ程度の薄い層の中で色を構築し、なおかつ支台歯の色調からの影響を考慮しながら作製しなければならないことが補綴物作製の難易度を上げる要因である。また、PLVは耐火模型上での作製となることから作業中に模型から取り外すことができないため作製工程途中の色調確認はできない。口腔内にトライするまで色調確認をおこなうことができないこともその一つの要因であろう(図23)。これらを踏まえPLVの作製は経験則や勘に頼ることの多い補綴物であることに間違いは無いが、使用する陶材の色調や透過率を把握することが特に重要となってくる。本症例は、両側上顎中切歯をPLVにて修復することとなったのであるが、右側中切歯の歯冠中央から接縁部が破折しており(図4)、反対側の支台歯との長さに差異が認められた。このような場合、強制的に支台歯の条件を整えることがポイントとなってくる。つまり、支台歯の長さの条件が異なるため、まず最初に同等の長さになるように陶材を築盛・焼成し反対側と条件を合わせる。その際注意するポイントがある。破折部分は当然歯質の裏打ちがないため光を適度に遮蔽する不透明な陶材を選択しなければならない。つまり、反対側の支台歯よりも透明度の高い遮蔽力の弱い陶材を選択すると明度が下がり、逆に不透明な遮蔽力の高すぎる陶材を選択すると光の反射が起こり極端に明度が上がることとなるため、この工程の陶材の選択は大変重要となってくる。図5はOBA1の陶材を焼成後、厚みが2.5ミリから可及的に薄くなるように作製した板状の試験片である。この試験片をシャーカステン上に置き、厚みによる遮蔽力について目視による観察をおこなった。結果、厚み0.6ミリ程度までは中央の赤ラインが確認され遮蔽力は弱く、厚み1.25ミリのあたりまで中央の赤ラインは淡く確認され、徐々に遮蔽力を発揮することが確認された。この観察結果から、破折部分の唇舌径が3ミリ程度のしっかりとした厚みが確保されていたため、光の遮蔽を目的に破折部から接縁方向へ全体的にOBA1、接縁側部分の明度へ移行的にする目的のためE2を重ねるようにわずかに築盛する(図6)。焼成後、左側の支台歯と同等の長さに形態修正を行い、左側の支台歯と同等になるようにインターナルステインを塗布する。ここまでの工程で左右の条件をしっかりと整えることでその後は、左右とも同一の陶材を築盛することになるためストレスなく作業を行うことが可能となる。口腔内評価(図78)を確認すると破折部分の境界線は確認することはできない。オペーシャスボディを積極的に使用したことにより、ほぼ支台歯と同等の適度な光の遮蔽がされたと考えられる。

  • [写真] 耐火模型材を除去した状態
    図2 耐火模型材を除去した状態。形成量、歯冠長、歯の出具合などの差異により口腔内トライ前のPLVは左右の色調の差異が確認される。
  • [写真] 模型上完成
    図3 模型上完成
  • [写真] 破折した支台歯
    図4 破折した支台歯
  • [写真] OBA1の陶材を焼成後、厚みが2.5ミリから可及的に薄くなるように作製した板状の試験片
    図5 OBA1の陶材を焼成後、厚みが2.5ミリから可及的に薄くなるように作製した板状の試験片。厚みの差異により遮蔽力に差異が確認される。
  • [図] 築盛レシピ
    図6 築盛レシピ。OBA1とE2を反対側の支台歯と同じ長さになるように築盛。
  • [写真] 術前
    図7 術前
  • [写真] 装着写真
    図8 症例1:装着写真症例提供:小野寺歯科/小野寺良修先生。破折部分の境界線は確認できない。

症例2

支台歯に着色の強い部分が混在している症例

PLVは着色が無い綺麗な支台歯の場合は、その患者の本来の歯牙の内部構造からの発色を活かすことによって、人工的ではない補綴物となる。これが審美の観点からみたPLVの最大の長所である。本症例の支台歯の色調の特徴を確認する(図9)。大部分はA1~A2程度の明度を有す(右側中切歯はA1以上に明るい部分もある)綺麗な支台歯であるが部分的に重度の着色が認められる。こういった支台歯に着色の強い部分が混在している症例の場合、筆者は綺麗な部分はその色調を活かすため透明度を有する陶材を選択し、重度の着色部分のみ、光の遮蔽を目的としてスクリーニングポーセレンを積極的に使用する陶材築盛のレシピを作製する(図10)。取扱説明書にスクリーニングポーセレンは、オペークとオペーシャスボディの中間の半透明性を有し、支台歯の色調を適切に遮蔽しながら色調のベースを作るポーセレンであると記載されている(図11)。本症例では、ウォッシュベイク時に着色の強い部分以外にLT0を築盛し、着色の強い部分にのみA1のスクリーニングポーセレンを築盛し焼成後、さらに着色の強い部分にのみA1のスクリーニングポーセレンを焼成後0.2ミリになるように築盛をすることで着色の遮蔽をおこなった。口腔内評価(図1213)を確認すると、ポーセレンルームの少ない歯頸部側のマージン付近に遮蔽のできていない箇所がわずかに確認できたが、ほぼ重度の変色に対し遮蔽ができているのが確認できる。オペーシャスボディでは対応し切ることのできない重度の変色歯もより遮蔽力の高いスクリーニングポーセレンによって対応が可能となる。反省点として過補償にはなるがもう少しだけオーバーラップし、マージン付近までスクリーニングポーセレンを築盛することでその他の着色部分のように遮蔽ができ、さらに良い結果が期待できたはずである。現在、残念ながらスクリーニングポーセレンは発売中止になっており、著者はパウダーオペークとオペーシャスボディを1:2の割合で混ぜ合わせ使用しており良い結果を得ている。

  • [写真] 支台歯の色調確認
    図9 支台歯の色調確認。スポット的に重度の変色が確認される。
  • [図] 築盛レシピ
    図10 築盛レシピ。スクリーニングポーセレンを築盛。
  • [写真] 耐火模型材上での各陶材の焼成後(0.2ミリ)の試験片の比較
    図11 耐火模型材上での各陶材の焼成後(0.2ミリ)の試験片の比較。左からパウダーオペーク、スクリーニングポーセレン、1:2の割合で混ぜ合わせたパウダーオペークとオペーシャスボディ、オペーシャスボディの順に遮蔽力は低下する。
  • [写真] 術前
    図12 術前
  • [写真] 装着写真
    図13 症例2:装着写真症例提供:横田歯科/横田達明先生

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