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Field Report

医院の危機を救った物販強化取り組むうえでのポイント

愛知県北名古屋市 医療法人ジニア ぱんだ歯科 理事長 須崎 明/歯科衛生士 吉田 真梨/歯科衛生士 坂井 紀子

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愛知県北名古屋市 
医療法人ジニア ぱんだ歯科

  • [写真] 副院長 深野 秀明
    理事長
    須崎 明
  • [写真] 歯科衛生士 藤本 仁美
    歯科衛生士
    吉田 真梨
  • [写真] 歯科衛生士 藤本 仁美
    歯科衛生士
    坂井 紀子

<理事長 須崎明>
2005年の開院から私がずっと大切にしてきたのは、小児から高齢者まで、すべての来院者に良質な医療を提供することです。医院運営において大きなトラブルを経験することもなく、順調な経営を維持していました。風向きが変わったのは2020年5月のこと。私が病に倒れ、入院することになったのです。新型コロナウイルスの影響で時短診療や定期健診の中断を余儀なくされたさなかに私が診療から離脱したわけですから、スタッフたちは相当不安だったようです。それを境に医院を守るために何ができるのか自分たちで考え、自発的に行動してくれるようになりました。
その一つとして取り入れたのが物販の強化です。ひと口に物販の強化といっても、ただ単に商品を販売して収益を上げるだけではありません。商品を通して正しい知識や必要な情報を患者さんに提供し、デンタルIQを上げ、治療やメインテナンスへのモチベーションを高めることが目的です。患者さんをいちばんよく知る歯科衛生士が主体的に始めてくれたことですから、物販の方法やキャンペーンの内容などは、基本的にすべて歯科衛生士に任せています。ただ、商品説明に必要な知識を得るための勉強会の開催や、物販の成果を反映する評価体制の見直しなど、私ができるサポートはしっかりと行っています。
物販の売上はこの3年で3倍以上に伸びました。それまで医院経営に物販はそれほど影響がないと思っていましたが、実は大きなウエイトを占める重要な取り組みだということに歯科衛生士たちが気づかせてくれて、理事長としても心強い限りです。

  • [写真] 待合室の物販棚
    図1 待合室の物販棚。物販強化に伴い商品の特長やセット販売によるお得感をアピールすることに注力している。
  • [写真] 診療室の物販棚
    図2 診療室の物販棚。チェアに座ると真っ先に見える場所に設置。「手作りのPOPの方が親しみが持てて良い」と患者さんからも好評。
  • [写真] 商品を置く棚受けはスタッフたちによる自作
    図3 商品を置く棚受けはスタッフたちによる自作。「歯科衛生士になってまさかこんな大工仕事をするとは思わなかった」と吉田さん。
  • [写真] 診療室
    図4 診療室ごとに棚のサイズや案内する内容も少しずつ変化を持たせている。
  • [写真] 棚に置く商品やPOP
    図5 棚に置く商品やPOPは、う蝕や歯周病など症状別に特化した商品や、季節感や年代を意識して案内するようにしている。
  • [写真] POP類はS字フックで引っ掛けている
    図6 POP類はS字フックで引っ掛けて、移動や入れ替えが自由にできるように工夫されている。

[写真] ぱんだ歯科のスタッフの皆様 <歯科衛生士 吉田真梨/坂井紀子>
これまで当院では物販にそれほど積極的ではなく、患者さんから質問されれば説明させていただく程度でした。そんなときに突如起こったコロナ禍と理事長のアクシデント。医院の先行きが不安になりましたし、時短診療で時間に余裕ができたこともあって、物販に力を入れることを提案しました。セルフケア製品は以前から多く取り扱っていたので、物販強化の準備としては、お得なセットを作って紹介用の写真を撮影したり、キャンペーンの企画からスタートし、同時に、商品知識の見直しや提案資料の作成なども行いました。中でもこだわったのが、商品を陳列したりPOPを掲示する棚の製作です。以前は、掲示物を壁に直接貼っていましたが、見栄えが悪く、すぐに剥がれてしまうなどの問題もあったので、プロの業者さんに依頼してディスプレイ用の棚を製作することになりました。ただ、棚の幅や色、サイズは自分たちで検討・指定し、棚受けの製作もホームセンターで材料を買ってきて自分たちで行いました。掲示するためのPOPも専用のソフトを導入してもらって自分たちで制作。内容は当時学んだ行動経済学の知識を活かして考えました。その効果は絶大で、POPを見て商品に興味を持った患者さんから質問されることが増え、コミュニケーションも取りやすくなりましたし、それまで気づけなかった患者さんの思いや悩みにも気づけるようになりました。
「ソニッケアー」については、コロナ対策や健康志向の影響で電動歯ブラシを使用する人が増えてきたという背景もあって、物販強化を機に導入しました。歯科衛生士自身が実際に試してみて、正しく使用してもらうためにはきちんとした指導が必要だと感じたので、購入前の指導はもちろんのこと、購入後のフォローアップも丁寧に行うようにしています。以前は、高価なセルフケア製品を購入していただくことに抵抗感がありましたが、たとえ高価でも、その特長や魅力をきちんと理解して良いものだと判断したうえでお勧めすれば、購入される方はたくさんいらっしゃいますし、リピート率も高いことに気づきました。
物販の強化案や商品の説明方法については私たちが中心になって考え、他のスタッフの意見も取り入れながら決めたことを全員に共有するという形を取っています。誰かがイニシアティブを取り、商品の魅力がどうすれば伝わるかを熟考し、全員で粘り強く実践していくこと――それが物販強化のいちばんの秘訣だと感じています。

    • [写真] ソニッケアー使用前(2023/2/10)
    • [写真] ソニッケアー使用前(2023/2/10)
    • [写真] ソニッケアー使用後(2023/6/16)
    ソニッケアーを活用したセルフケア症例① 症例提供:吉田真梨 歯科衛生士
    50代男性。PCRが47.7%と高かったことから、セルフケア用に「ソニッケアー」を提案。丁寧な指導のもと使用いただくことで、上顎右側のCAD/CAMのステインや、下顎唇側の残存プラークが抑えられている(矢印)。ご本人も「歯面がツルツルになる感じがする」とのことで継続して使用いただいている。
    • [写真] 歯周治療前(2022/8/2)
    • [写真] 再評価(2022/12/12)
    • [写真] ソニッケアー使用後(2023/9/26)
    ソニッケアーを活用したセルフケア症例② 症例提供:坂井紀子 歯科衛生士
    30代女性。審美改善を主訴に来院。補綴処置に入る前にプラークコントロールの改善と歯肉の炎症を抑える目的で歯周治療に入る。嘔吐反射が強い影響で、再評価時にもとくに下顎臼歯舌側部分のPCRや歯肉炎症の改善が見られなかったため、「ソニッケアー」を提案。ブラシ先端部分を縦に挿入して動かさずに3~5秒当ててもらうよう指導することで嘔吐反射が軽減。PCRは改善傾向となり、歯肉の炎症も目立たなくなった。

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