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Clinical Report

象牙質知覚過敏症への効果的なアプローチ -「MSコート Hysブロック®ジェル」の活用ポイント-

九州歯科大学 口腔保存治療学分野 准教授 鷲尾 絢子

キーワード:象牙質知覚過敏抑制材(Hys材)/高い象牙細管封鎖性/歯質強化

目 次

はじめに

健康寿命の延長に健全な口腔環境の維持が大きな影響を与えることから、全ての年齢層で歯を保存することが極めて重要である。実際に、オーラルヘルスプロモーションによる口腔衛生状態の改善や歯科材料・治療技術の発展などにより、高齢者の残存歯数は以前と比較して増加している。一方で、咬耗、摩耗、あるいは歯肉退縮による象牙質露出などに伴う象牙質知覚過敏(Hys)を訴える高齢者が増加している。また、年齢を問わず、Tooth Wear、ストレス、あるいは咬合などが深く関与したHysも増えている。これらの対処には、まず患者教育と生活習慣の改善が第一であるが、Hysを訴える患者に対し対症療法的に処置しなければならないのも現状である。
そこで、日々の臨床において、歯への侵襲がなく簡単に適用できるものが象牙質知覚過敏抑制材(Hys材)を用いたHys処置である。
本稿では、サンメディカル(株)から販売されている「MSコート」シリーズ(図1)が有する信頼性・疼痛抑制効果に操作性を兼ね備え、より簡便に使用できる「MSコート Hysブロックジェル」(図2)を紹介する。

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    [図] 「MSコート」シリーズ
    図1 「MSコート」シリーズ「MSコート」は1999年に国内で初めて承認を取得した歯科用知覚過敏抑制材料である。その後改良が進み、現在は「MSコート ONE」、「MSコート F」、「MSコート Hysブロックジェル」の3製品が販売されている。
  • [写真] MSコート Hysブロックジェル
    図2 「MSコート Hysブロックジェル」2022年6月のリニューアルに伴い、フランジが大きく改良され、指を掛けやすくなったことでジェルが押し出しやすくなった。ジェルの残量も見える。
  • [図] 「MSコート Hysブロックジェル」の作用メカニズム
    図3 「MSコート Hysブロックジェル」の作用メカニズム
    MSポリマーとしゅう酸が歯質のカルシウムと反応し、フッ化物とカリウム塩を含んだ保護被膜を形成する。

組成と作用メカニズム

 「MSコート Hysブロックジェル」には、Hysを抑制するためのMSポリマーとしゅう酸に加え、歯面の耐酸性付与のためのフッ化ナトリウム、塗布性向上のための増粘剤、さらに塗布時の不快感軽減のための甘味料が含まれる。
Hysが生じている象牙細管開口部に本材を塗布すると、MSポリマーとしゅう酸が歯質のカルシウム成分とそれぞれ反応する。
しゅう酸はしゅう酸カルシウム結晶となってただちに沈着し、続いてMSポリマー粒子も凝集・不溶化することで象牙質表層には保護被膜を、象牙細管にはプラグを形成して封鎖を確実にする。同時にフッ素が徐々に歯質に取り込まれることで歯質の耐酸性が向上する。
また、本材にはカリウム塩が配合されており、カリウムイオンによる鈍麻効果で即効性の高い疼痛抑制も期待できる(図3)。

使用方法と留意事項

「MSコート Hysブロックジェル」を使用する前に、Hysの原因を可能な限り調べ(例:ブラッシング不良によるプラーク滞留/不正咬合習癖/酸性飲料などの過剰摂取など)、原因除去を行うことが第一であることは言うまでもない。その上で、本材を使用する。

Step1:前準備

患部のプラーク・残渣物などの除去、および唾液・滲出液などの十分なコントロールを行う。しかし、Hysが起こっている部位における機械的刺激・水洗・乾燥はしばしば疼痛を誘発するので、湿綿球・乾綿球で拭うのも良い。

Step2:「MSコート Hysブロックジェ ル」の使用

→直接塗布の場合(図4
「プラスチックニードル」を装着した本材を患部に塗布し、30秒間静置する。ジェル状であるためダイレクト・ピンポイントに塗布が可能である。
→ラバーカップによるこすり塗りの場合(図5
ラバーカップに本材を採取し、飛散しないように1,000回/min程度の低速回転で1歯につき5秒以上適用する。複数歯に処置を実施する場合に適している。
→その他の器具によるこすり塗りの場合(図6
綿球、マイクロブラシ、あるいは歯間ブラシに本材を塗布し、5秒以上こすり塗りを行う。この際、歯肉をこすらないように注意する。

Step3:処置(塗布)後

うがいなどで塗布部を十分に水洗し、再度疼痛の確認を行う。
Hysの抑制効果が不十分な場合は、Step2およびStep3を2、3回繰り返す。適用直前に唾液や血液に汚染された場合は、再度水洗・乾燥を行ってからStep2およびStep3を行う。

  • [写真] 歯周基本治療中
    図4a 症例1 歯周基本治療中、左上2番に冷刺激に対するHysが生じた。
  • [写真] 回転用ブラシにて歯面清掃
    図4b 症例1 回転用ブラシにて歯面清掃。
  • [写真] シリンジで直接塗布し30秒間静置する
    図4c 症例1 シリンジで直接塗布し30秒間静置する。ジェルの停滞性が良く垂れにくい。
  • [写真] ラバーカップで5秒以上こすり塗り
    図5 症例2 ラバーカップで5秒以上こすり塗り。低速回転で行うとジェルは飛び散らない。
  • [写真] 歯間ブラシによる清掃を行う
    図6a 症例3 歯間ブラシによる清掃を行う。
  • [写真] 歯間ブラシにジェルを塗布する
    図6b 症例3 歯間ブラシにジェルを塗布する。
  • [写真] 5秒以上こすり塗り
    図6c 症例3 5秒以上こすり塗り。ジェルなので歯間部にも塗布しやすい。

特徴と臨床症例

◉高い信頼性

臨床で使用する上で、製品の信頼性は重要なポイントの1つである。「MSコート Hysブロックジェル」には、歯肉や粘膜への刺激性がある有機溶媒やモノマー成分が含まれない。したがって、歯根の露出面が少なく歯肉に本材が付着しやすい部位でも塗布することができる。
例えば、SRP後の疼痛抑制のために露出根面に塗布した本材が歯肉に付着しても、歯周組織の炎症反応などは認められなかった(図7)。適用の際は血液汚染を可能な限り避けて適用する。

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