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スパイス研究家としても活躍する歯科医師が取り組むオーダーメイドの予防歯科

大阪市生野区  医療法人あかり会 いずい歯科クリニック 理事長 泉井 秀介

目 次

  • [写真] 大阪市生野区 医療法人あかり会 いずい歯科クリニック 理事長 泉井 秀介
    大阪市生野区
    医療法人あかり会 いずい歯科クリニック
    理事長
    泉井 秀介

歯科医師として「医療法人あかり会」の理事長を務めるかたわら、スパイス研究家としても多彩な活動を展開する泉井秀介先生。「健口でおいしく食べられる一生を守りたい」との思いから予防歯科に注力。クリニックで運用する一人ひとりの口腔状況に応じたオーダーメイドのメインテナンスプログラムや、母校 大阪大学歯学部との連携など、具体的な取り組みについて伺いました。

一念発起で飛び込んだ医療の世界

歯科医師になる前は、大阪外国語大学に通いながらユーズドの洋服とブラジル音楽のレコードを扱う店舗を運営し、同時に、カレー研究家としてテレビの情報番組に出演したり、雑誌でコラムを書いたりしていました。店舗運営は概ね順調でしたが、年齢を重ねるにつれて、この仕事だけで一生食べていくのは難しいと感じるようになり、以前から興味を持っていた医療の道に進むことを決意。28歳で大阪大学歯学部に進学しました。

スパイス研究家への道

歯学部ではカリキュラムに基礎研究配属実習というものがあり、私は細菌学教室に配属されました。当時の私は、歯学部に入ってもカレー研究家としての活動だけは続けていたのですが、私が出演したテレビ番組をたまたま指導教官がご覧になって、「そんなにカレーが好きならターメリックの抗菌作用の研究をやってみないか」と声をかけてくださったのです。それがスパイス研究家としてのキャリアのスタートでした。その後、大学院でも予防歯科学教室に入局し、継続して研究を続けました。その結果、ターメリックに含まれる成分・クルクミンが歯周病を引き起こすPg菌の増殖を抑制する効果があることを実証。米国の専門誌に論文が掲載されたり、クルクミンを配合した歯磨剤の商品開発に協力するなど、結果が伴ったこともあり研究はとても充実していたように思います。

予防歯科への思い

学部卒業後、臨床研修先に大阪大学歯学部附属病院の予防歯科を選んだのも、大学院で予防歯科を専攻したのも、少なからず私の年齢が影響しています。私は大学に入ったのが28歳で、学部卒業が34歳。現役の同級生とは年齢が10歳近く離れていて、そんな若い人たちと同じことをするのも…、という思いがあったのです。今でこそ予防歯科の重要性は広く認識されるようになりましたが、当時はまだそれほど注目されておらず、予防歯科に進むのは研究を続けたい人や行政機関への就職を目指す人くらいでした。さらに、大学院時代にアルバイトをしていた町の歯科医院で、口腔内が崩壊している患者さんをたくさん診たことや、「歯がなくなる前に手入れをしておけばよかった」という嘆きの声を聞いたことも、私の予防歯科への思いを一層強くさせました。歯をなくして後悔する人を少しでも減らしたい。歯が悪くなったから歯科医院に行くのではなく、歯が悪くなる前に、悪くならないように定期的な歯科受診習慣を定着させる、という予防歯科のコンセプトに強く共感したのです。

  • [写真] 「いずい歯科クリニック」の外観
    「いずい歯科クリニック」の外観。大阪における予防歯科の“南の拠点”としての役割を担うことを目指して、2018年7月に開業した。
  • [写真] 待合室
    待合室の床や壁面には無垢板を使い、ナチュラルな雰囲気。ゆったり寛げるソファーと気軽に腰掛けられるチェアが置かれている。

大阪の“南の拠点”を担うべく開業を決意

大学院修了後はそのまま大阪大学歯学部附属病院の予防歯科で2年ほど勤務し、その後、予防歯科を地域に根付かせたいという思いから、開業を決意しました。大阪大学歯学部附属病院の予防歯科は全国でもトップレベルを誇りますが、北摂と呼ばれる大阪府北部にあり、大阪府南部にお住まいの人たちが通い続けるのは難しい立地です。そうした背景も踏まえて、現在の場所(大阪市生野区)を紹介してもらい、2018年7月、「いずい歯科クリニック」を開業しました。ここ大阪市生野区は、子どもから高齢者まで、幅広い年齢層の人たちが暮らす地域です。デンタルIQが高い人だけでなく、あらゆる世代、環境の人たちの口腔をどうすれば守れるか常に考える必要があり、予防歯科としてやりがいのある場所だと感じています。

オーダーメイドのメインテナンスプログラムとは

当院では、理事長である私が予防歯科出身であることを最大限に生かし、「う蝕や歯周病からお口を守り、健口でおいしく食べられる一生を」をテーマに診療を展開。予防歯科では、唾液検査や細菌検査を通して口腔内の状態や菌叢を調べ、リスクを評価した上で、そのリスクに合わせたオーダーメイドのメインテナンスプログラムを立案し、患者さんに提案しています。
具体的な流れとしては、初診のカウンセリングで歯科衛生士が主訴や過去の経緯、希望する治療内容をヒアリング。それを歯科医師が評価、診断し、歯科衛生士とも相談しながら治療方針を検討します。そして、再来院時に行われるセカンドカウンセリングで治療方針を患者さんに説明し、主訴が歯周病であれば、唾液検査や細菌検査など、必要な検査を実施します。当院が利用している口腔細菌検出装置はその日のうちに結果がわかり、結果画面を印刷して情報共有することもできるので、治療やメインテナンスへの意識が薄れる前に説明・指導ができますし、自身の数値に基づくメインテナンスプログラムを目にすることで通院の必要性も理解してもらえます。計画を立てることで意識が高まる方も多く、あくまで私の感覚ですが、現在、当院では全体の6割くらいの患者さんが自費治療を選ばれています。

  • [写真] セルフケア製品が所狭しと並ぶ
    受付と化粧室付近には予防歯科に注力する歯科医院ならではのセルフケア製品が所狭しと並ぶ。
  • [写真] 受付には主に小児向けのセルフケア製品が置かれている
    受付には主に小児向けのセルフケア製品が置かれている。スタッフ手作りの愛らしいPOPが患者さんや親御さんの目を引く。
  • [写真] 化粧室横の壁面には主に成人向けのセルフケア製品を中心にディスプレイ
    化粧室横の壁面には主に成人向けのセルフケア製品を中心にディスプレイ。泉井理事長が製品開発に携わったクルクミン配合の歯磨剤も紹介されている。

予防歯科は丁寧なカウンセリングから

[写真] 泉井先生 そうした一連のカウンセリングは、専用の個室で行っています。診療室ではタービンの音などが気になって患者さんも落ち着かないものですし、丁寧なTBIでセルフケアの質を上げることも大切だからです。口腔細菌検査そのものは患者さんにそれほど負担がかかるものではありませんが、結果があまり良くないと、どんな患者さんでも少なからずショックを受けられます。特に繊細な方の場合、それを歯科医師から伝えられることに恐怖を感じることもあるようですから、言葉選びや伝え方には非常に気を遣っています。私自身は、結果の良し悪しに関わらず、メインテナンスは継続的にやっていくものという意識付けを図り、“予防歯科に終わりはない”ということをできるだけ多くの皆さまに分かりやすく伝えることを目指しています。
初診カウンセリングに基づく評価や治療方針の決定には歯科医師が入りますが、実際のメインテナンスは歯科衛生士中心で行っています。そのため、歯科衛生士のモチベーションは高く、定期的に開く勉強会にも多くのメンバーが参加してくれています。勉強会は大阪大学歯学部の予防歯科で学んだ専門的な知識を活かして私が行うこともありますし、外部から講師を招くこともあります。もちろん、外部の講習への参加も推奨しています。

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