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188号 SPRING 目次を見る

Clinical Report

低侵襲で予知性のあるインプラント治療 -イニセルインプラントの臨床応用-

医療法人エフ 有家ふるせ歯科口腔外科クリニック 古瀬 雄二郎

キーワード:超親水性インプラント/ガイデッドサージェリー

目 次

はじめに

インプラント治療における免荷期間の短縮は、臨床における長年の課題であり、近年ではインプラントの表面形状(surface topography)、表面性状(surface chemistry)に様々な工夫が施されている1)。その結果osseointegrationの早期獲得が達成され、患者の咬合機能回復が早まることで、QOLの向上に繋がっていると考えられる。
Albrektssonらは、osseointegrationを獲得し、インプラント治療の予後を左右する条件として以下の6項目を挙げている。つまり、①インプラントの材質、②形状、③表面性状、④インプラント埋入部位の骨質、⑤外科手技、⑥咬合力の荷重条件である2)。その中でも、表面性状に関して様々な研究がなされている。特に、チタン表面への超親水性処理は、細胞接着性タンパク質吸着を促進し、細胞接着に大きな影響を与えることや、線維芽細胞成長因 子(FGF-2)を産生し血管新生を亢進することが報告されており3)、骨形成に有利な影響があるとの研究報告がある4、5)。現在、インプラントの材質として広く用いられているのはチタンである。チタン製インプラントの表面は、製造直後は超親水性だが、大気に触れることで、その表面に有機化合物が付着し時間経過とともに疎水性表面へと変化する6)。この超親水性表面を保つために、近年ではインプラント開発に従事するメーカー、研究者が様々な工 夫を施している。
Thommen Medical社(スイス)が開発したイニセルインプラントは、前身のSPIインプラントで採用されていたSLA(The sandblasted and thermal acid-etched surface)に加えて、埋入直前にチェアサイドでアルカリ性の専用コンディショニング液に浸漬することで、表面の有機化合物を除去し、インプラント表面に超親水性を再獲得する。これにより、埋入直後からインプラント表面へのタンパク質結合、活性化したフィブリンネットワーク形成が促進され、その後の治癒とosseointegrationに有利に影響する7、8)。その結果、二次固定(secondary stability)の早期獲得が可能とされている(図ab)。
イニセルインプラントは十数年前から欧米で臨床応用され、2020年6月から日本国内でも販売が開始された。臨床実験において、骨質Type1から3では埋入後3週、Type4では埋入後8週で荷重を設定し、良好な転機が得られたとする報告9)があり、治療期間短縮の観点からも非常に効果的なシステムである。
今回、抜歯後早期埋入、抜歯即時埋入それぞれにおいて、サージカルガイドを併用してイニセルインプラントを使用し、良好な結果を得たので報告する。

  • [写真] コンディショニングされたインプラント表面には、フィブリンマトリックスおよび活性化した血小板が吸着する[写真] コンディショニングされたインプラント表面には、フィブリンマトリックスおよび活性化した血小板が吸着する
    図a コンディショニングされたインプラント表面には、フィブリンマトリックスおよび活性化した血小板が吸着する。
  • [写真] インプラント表面にフィブリンネットワークが形成され、骨のリモデリングが促進される[写真] インプラント表面にフィブリンネットワークが形成され、骨のリモデリングが促進される
    図b インプラント表面にフィブリンネットワークが形成され、骨のリモデリングが促進される。

症例1

左下6早期埋入、左下7抜歯即時埋入に超親水性インプラントシステム(イニセルインプラント)を応用した症例

患者:64歳男性
主訴:食べ物が噛みづらい
現病歴:初診日より2ヵ月前に他院で36抜歯を行った。インプラントによる欠損補綴治療を希望したところ当院を紹介され受診した。
口腔内所見:36欠損を認めた。37に破折線を認めた。口腔清掃状態は良好であった(図1)。
検査結果:CT初見で36部に抜歯後の透過像を認めた。37に歯根破折と周囲骨に透過像を認めた(図2)。歯周組織検査の結果、歯周ポケットは全顎的に3mm以下であった。
診断名:36欠損症、37歯根破折治療内容および経過:36、37にフラップレスによるインプラント治療を計画した。デジタルワックスアップをもとに埋入位置を決定し、サージカルガイドを作製した(図34)。解剖学的な安全域を確保し、埋入ポジションを設定した(図5)。口腔清掃指導後、37を抜歯し(図6)、同時に36、37部へのインプラント埋入手術を行った(図78)。浸潤麻酔下にてインプラント(イニセルインプラント エレメント MC φ4.5×11mm、Thommen Medical)2本を埋入し、36に高さ3.2mmのジンジバルフォーマー、37にカバースクリューを装着した。埋入シミュレーション位置と埋入後CTを比較したところ、抜歯窩の硬い側壁への埋入においても、正確な位置に埋入されていることを確認した(図10)。抜歯窩の治癒は良好であったため、術後6週で37部二次手術と光学印象を行い(図911)、術後10週で上部構造を装着した(図12)。上部構造はジルコニアクラウン連結、スクリューリテインとした。このシステムではスクリューホールの直径が小さいため、ジルコニア部分の強度確保が期待できる(図13)。
上部構造装着後4ヵ月のデンタルX線写真で、インプラント周囲骨のリモデリングを認め周囲骨は安定している(図14)。

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