185号 SUMMER 目次を見る
Dental Talk
歯周専門医にEr:YAGレーザーの臨床を聞こう
目 次
- ≫ Er:YAGレーザー導入の経緯
- ≫ 内縁上皮の炎症性肉芽組織を除去したケース
- ≫ SRPにEr:YAGレーザーを併用したケース
- ≫ セメント質剝離
- ≫ 動揺歯・歯周外科
- ≫ メタルタトゥー除去
- ≫ おわりに
今回のDental Talkでは、長谷川 嘉昭先生、白石 和仁先生、川崎 律子衛生士をお招きし、歯周治療におけるEr:YAGレーザーの活用法を中心にお話を伺いました。
Er:YAGレーザー導入の経緯
長谷川私は歯科用レーザーの臨床応用を始めて10年以上になりますが、きっかけは東京医科歯科大学の青木章教授から「Er:YAGレーザーが根面のデブライドメントに有効」というお話を伺い、半ば衝動的に導入を決めました。Er:YAGレーザーが加わることによって、従来の手用や超音波スケーラーを用いたデブライドメントに比べて、殺菌力が上回っているという感触があります。
白石私はこれまで、レーザーは必要ないと考えてきた方でしたが、盟友でもある長谷川先生がEr:YAGレーザーを導入されて、炎症性肉芽組織を一塊で取っていく症例を目の当たりにして「これを使わない手はない」ということで導入しました。現在では、とくに難度の高いオペのケースではEr:YAGレーザーが必須になっています。
長谷川ただ、どこまでがEr:YAGレーザーの守備範囲で、さらに照射時間や、当て方、どんなマテリアルの時に有効か、あるいはパルスや注水・無注水の設定など、術者によって意見が分かれるところですので、今後、統一の手法を作っていきたいとも考えています。
内縁上皮の炎症性肉芽組織を除去したケース
長谷川まず、オペの基本となる歯肉切開では、どの部分にインターベベルの刃先を持っていくかが実は意外に難しいのです。本来は、歯肉溝内切開のイメージが良いのですが、それでも内縁上皮側には炎症性肉芽組織が残存してしまいます。さらに、基底部の場合は厚みがあって、肉芽は細菌感染を起こしています。初期治療で歯科衛生士がSRPを行っても、すべては取りきれないでしょう。その部分のデブライドメントは、通常であれば歯肉ばさみで切除するところを、当院ではチップ:PS600TS、20pps/70mJ : 注水下でEr:YAGレーザーを照射しています(図1)。Er:YAGレーザーというと汚染されている歯根面や骨面のデブライドメントにフォーカスされがちですが、最後にフラップを戻したとき、両側のフラップ弁がクリアになっていることが重要です。最初の段階でこうした歯肉のフラップ弁の扱い方にフォーカスしていくべきだと思います。
白石その時のEr:YAGレーザーの当て方や照射時間はいつも悩みますね。特にクローズドで行うケースの照射時間と本当に狙った部位にピンポイントに当たっているのか、あと縦と横どちらに動かしていくのがいいのか…、うまく当たっていない部分が確実に出てきますから、縦と横両方から当てるのですが時間がかかってしまいます。
長谷川骨欠損が深くなればなるほど、直角には当てられず斜めから当てることになり、さらに難しくなっていきます。
白石確かに私もチップがうまく当たっているかは確認できていません。分岐部の場合、その傾向はより顕著です。
長谷川ただ、青木教授の論文にもあるように、デブライドメントの際にEr:YAGレーザーは重篤な熱傷害がほとんどなく、殺菌、炎症性肉芽組織の廓清が可能なことは大きな利点と感じています。さらに、Er:YAGレーザーを併用することで大きな骨内欠損を12ヵ月後のリエントリーでここまで回復できていれば(図2~6)、私たち臨床家としては大いに有効性を感じます。
白石私は抗菌療法でEr:YAGレーザーを併用した際に、導入前の患者さんと比較して歯肉の治りの早さと術後の歯肉の抵抗性の強さを実感しています。さらに術後に痛みをほとんど感じないことも大きな利点だと思います。
長谷川同感です。痛みが少ないのは本当にありがたいですね。なにより患者さんに喜ばれます。
内縁上皮除去(トリミング)の動画はこちらから
図1 Er:YAGレーザーによる内縁上皮の炎症性肉芽組織の除去。(PS600TS、20pps/70mJ : 注水)-
図2 初診時のCBCT画像。(株式会社吉田製作所 ファインキューブにて撮影) -
図3 歯肉を剥離し炎症性肉芽組織を除去した状態。 -
図4 Er:YAGレーザーによるデブライドメント。(C600F、25pps/70mJ : 注水) -
図5 12ヵ月後のリエントリーの状態。 -
図6 7年後のCBCT画像。
SRPにEr:YAGレーザーを併用したケース
長谷川 嘉昭長谷川当院では、初期治療に入る前に全ての患者さんに細菌検査を行い、結果を解析してから、歯科衛生士による歯周基本治療を開始します。次の症例は4が主訴で抜歯回避を目的に他院からの紹介で来院された患者さんです。CT所見によると4は根尖に及ぶ骨内欠損があり、7は上顎洞内炎症の波及がみられ、遠心は12mm以上のかなり深い骨内欠損がみられました。そこで、川崎DHが通常のSRPを開始していきます。その際に、ポケット内からの反応を見て、Er:YAGレーザーを併用しました(動画参照)。高い技術を持った歯科衛生士によるSRPとEr:YAGレーザーによる相乗効果がもたらす恩恵を感じたケースです。
川崎4は、非常にアクティブなポケットで、当然プロービングの際にもかなりの出血がみられました。CT所見でも根尖まで骨内欠損があるように見えますが、バイタル反応があったため、根管治療には入らずに、まずは歯周基本治療を行うことになりました。最終的にオペになると感じていましたが、とにかく口腔衛生状態が良くないため、まずは徹底的にOHI※を行い、基本治療を進めていきました。この部位のSRPは浸潤麻酔下で行っています。かなり出血がみられましたので相当な炎症性肉芽組織があることを予測し、スケーラーの刃を内縁上皮側に向けて炎症性肉芽組織を掻爬するように心掛けたのですが、やはり限界があり、最終的に殺菌効果を期待してEr:YAGレーザーによる施術を長谷川先生にお願いしました。
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目 次
モリタ友の会会員限定記事
- Dental Talk 歯周専門医にEr:YAGレーザーの臨床を聞こう
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