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Interview
「医院承継」をスムーズに行うポイントとは4代100年以上続く歯科医院に伺いました
目 次
京都府南丹市 髙屋歯科医院
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院長
髙屋 毅史 -
副院長
髙屋 翔
京都府南丹市で4代100年以上続く「髙屋歯科医院」。数年後に承継を予定されている3代目毅史院長と4代目翔副院長にその心境や承継をスムーズに行うポイントについて伺いました。
1日150人を治療する毎日
ーーご開業の時期を教えてください
毅史院長:初代にあたる私の曽祖父の歯科医師登録が1921(大正10)年ですので、少なくともその年には開業していたのですが、実際の開業時期はよく分からないのです。ただ、100年以上前からこの南丹市園部の地で診療していたことは間違いありません。
ーー場所も現在地のままでしょうか?
毅史院長:19年前の区画整理で場所は少し変わっています。元の場所は現在地の向かい側あたりにありました。その場所は昔料亭だったのですが、そこを買い取って診療を始めたと聞いています。
ーー毅史院長はなぜ歯科医師に?
毅史院長:正直、選択の余地はなかったですね(笑)。幼少の頃からずっと父の背中を見て育ってきましたから…。祖父はもともとは庄屋を営んでいたそうですが、なぜ歯科医師になったかはよく分かりません。また、祖父はかなり早くに亡くなってしまったので祖父の仕事ぶりを私が見ることはありませんでした。
ーー2代目のお父様はどんな歯科医師だったのですか?
毅史院長:近隣に歯科医院が少なかったせいもあるのでしょうが、とにかく患者さんが多くて、父は毎朝5時に起きて7時ごろから診療していた記憶があります。
ーーそんな朝早くから患者さんが来られるのでしょうか?
毅史院長:朝から玄関に並んで待っておられるんです。父一人で120人くらいは診ていたと思いますよ。夜8時まで、お昼に食事のため15分ほど休憩をとるだけのような状態でしたね。私が1985(昭和60)年に地元に戻った当時、二人で1日150人くらいは診ていたのではないでしょうか。
ーー当時は「う蝕の洪水」の時代と言われていた時代でもありましたね?
毅史院長:もちろんそれもありましたが、とにかく父は痛みで困っている患者さんはその日に必ず診る方針で、いくら混んでいても患者さんを断らないんです。私もずっと父のそうした姿勢を見てきましたから、地域住民の一員として歯科医療で地域に貢献することが、それ以来当院の一貫した診療ポリシーになっています。
親子で診療する難しさ
ーー近い将来、経営をご子息の翔副院長に譲られると伺いました
毅史院長:私は現在66歳ですが、あと3年ほどで現在副院長である息子に譲る予定です。祖父が早世したので、2代目の父は早くから家長・院長の看板を背負ってきました。かなり苦労もしたと思いますが、そのせいか考え方も昔気質で「第一線で診療している限り院長を続ける」と頑張っていました。実際に父は75、6歳くらいまで院長を続け、私は勤務医の状態が長く続いたのです。ただ、当然私の方が若くてエネルギーもありますから、そのうち私が診る患者さんが増えて父より稼ぐようになるのですが、父はいつまでも頂点に君臨して私は嫌な思いをたくさんしてきました。ですから、「こんな思いは息子にさせたくないので早めに譲ろう」と以前から考えていて、息子にも伝えていました。私が元気で診療できる間は息子に貢献もできるでしょうし…。そうやって余裕のある状態で承継したかったんです。
ーー翔先生は毅史院長のお考えをどのように受け止めておられたのでしょう?
翔先生:父が承継したときとおそらく同じ心境で「いつか継ぐことになるだろうな」と漠然と考えていました。ただ、知識も技術もない状態で継ぐつもりもなかったので、ある程度キャリアを積んで自信が芽生え、承継についても徐々にその覚悟ができてきた感じでしょうか。そうなると今度は父といろんな場面で衝突するようになって、かなり険悪なムードになることもありました。
ーーその衝突とは具体的にどんな時に起こるのでしょう?
毅史院長:親子で診療しているといろんなところで衝突しますよ。例えば、患者さんの治療方針一つとっても、私が選ぶであろう治療方針を息子が取らないので「どうして患者さんにこう言わないのか」と口論になることも日常茶飯事です。同じ歯科医師でも、私の方が臨床経験が長いので、最初はつい口出ししたくなるんです。ただ、ある程度経験を積んできたら、なるべく上から言わないようにしていますし、思うことはあっても口出ししないようにしているつもりです。
翔先生:研修医を終えて2、3年目の時、他院で代勤しつつこちらで父との診療をスタートしました。当院常勤で勤務するようになって4、5年になります。最初は“頭でっかち”で手は動かないし説明もうまくできなくて、知識だけがある状態でした。すると患者さんから「院長先生に診てもらいたい」と言われることも多くかなりショックでしたね。とにかく治療方針や患者さんからの信頼度がまるで違うんです。父がずっとやってきたクリニックですからある意味当然なのですが、やはり鬱憤というかストレスが溜まって衝突してしまうことが頻繁にありました。例えば「超音波スケーラー」は現在、たいていのクリニックにありますよね。それを導入したいと言っても「そんなの必要ない」とあっさり却下されるんです。
初代「髙屋歯科医院」の外観。以前料亭だった建物を買い取って診療所にしたそう。-
2代目髙屋治代先生の在りし日のお姿。 -
初代診療所の院内には初代『スペースライン』の姿が。
ーーなるほど。毅史院長、それはどういうお考えからだったのでしょう?
毅史院長:承継にあたってどうしてもやっておきたいことがありました。それは「借金を残さない」ことです。承継するタイミングで大規模にリニューアルして、その際の借入金ごと息子に譲るケースも普通にあるでしょう。でもそれはしたくないのです。借金に対してはすべて自分で背負って、クリーンな状態で譲りたい。それは息子にお金で苦労させたくないという親心でもあり、プライドなのかもしれません。
ーーそれは素晴らしいお考えと思います。でも、現実的に難しくはないですか?
毅史院長:とても難しいですよ。すでにチェアもだいぶ古くなってきていましたから、順番に入れ替えていくなどしてやり繰りしていました。息子は従業員ですから当然月給を払っていますので、その額を少し抑えて、その分設備投資費用として充当しています。「この器材が欲しい、あれを導入したい」と息子は要求してきますが、私は自分が院長を引退するまでに払い終えられるかどうかを常に意識しているので、息子にとっては厳しいと感じる対応になることもあると思います。
翔先生:その親心にはとても感謝しています。でもその反面、設備がなかなか導入できないんです(笑)。私と同年代で新規開業した先生の場合、マイクロスコープやCTは開業時から導入するケースがほとんどです。それもあってずっとお願いしてきたのですが、ラチがあかないので、作戦を変更して父を納得させるためのオプションを考えるようになりました。CTは最近ようやく導入できましたが、モリタさんからアドバイスをもらって補助金を活用したりしながら、どうにか父から了解を取り付けました。特に今まで父が使ってこなかった機器の場合、その価値をどう認めてもらうかには本当に苦労しました。おそらく親子承継ならではの苦労かもしれません。
今から54、5年前。初代診療所の跡地に2代目「髙屋歯科医院」を建設。-
2代目「髙屋歯科医院」の院内。こちらにも3台の『スペースライン』が整然と並んでいる。 -
19年前の区画整理で現在地に移った。3代目「髙屋歯科医院」はモダンなコンクリート打ちっ放しの外観を採用。
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