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口腔細菌叢バランス制御による歯周病予防
キーワード:
口腔細菌叢(口内フローラ)/菌叢制御/GK2(グリチルリチン酸ジカリウム)
目 次
1. はじめに
歯周病予防において、日々のセルフケアや歯科医院でのプロフェッショナルケアによるプラークコントロールが基本であることは、言うまでもありません。しかし、プラークは単なる汚れの塊ではなく、数百種もの細菌が構成する複雑な生態系、すなわち「口腔細菌叢(口内フローラ)」です。この細菌叢は、一度バランスを崩すと、たとえ物理的に除去しても、再び病原性の高い構成へと戻ってしまう性質があることが知られています1, 2)。
こうした背景から近年、プラークの「量」を減らす従来のアプローチに加え、細菌叢の「質」を健全な状態に整えるというアプローチが、歯周病予防の新たな鍵として注目されています。
本稿では、この口腔細菌叢のバランス制御という新しい科学的知見と、それに基づいたセルフケアへの応用についてご紹介します。
〈歯周病と口腔細菌叢の関係〉
かつての歯周病研究では、歯周病原細菌の同定と、その殺菌・除去に主眼が置かれてきました。
しかし、次世代シーケンサーを用いた16S rRNA遺伝子解析といった網羅的解析技術の登場は、研究のパラダイムを大きく転換させました。研究の焦点は、「個」の菌から細菌の「コミュニティ全体」へと移行し、歯周病はもはや「単一の病原菌による感染症である」という古典的な概念ではなく、細菌叢の構成バランスが破綻した「ディスバイオーシス(dysbiosis)という生態学的な疾患である」という概念が定着しつつあります3)。
実際に、歯周病患者と健常者の口腔細菌叢を比較した多くの研究から、患者のプラークでは歯周病原細菌比率が高くなっていることが報告されています1~4)。このディスバイオーシスこそが、炎症を引き起こし歯周組織の破壊へとつながる根本的な要因であると提唱されています5)。したがって、従来のプラークコントロール(量的コントロール)に加えて、口腔細菌叢のバランスを健全な状態に導き、維持する「質的コントロール」の視点が、今後の歯周病予防において極めて重要であると考えられています(図1)。
口腔内の細菌叢バランスを健全な状態に整えるためには、歯周病原細菌比率の低い細菌叢を形成することが重要です。そこで我々は、従来のプラークコントロールに加えて、歯周病原細菌に対して選択的抗菌作用を有する成分により、口腔内の細菌叢バランスを整えることができると考え、研究を重ねてきました(図2)。
その結果、グリチルリチン酸ジカリウム(GK2)がディスバイオーシスに関与すると考えられている歯周病原細菌Porphyromonas gingivalisに対して選択的抗菌作用を有することを見出しました。さらに、in vitro口腔細菌叢モデルにおいて、GK2が細菌叢のバランスを整え、歯周病原細菌比率の低い細菌叢を形成させることを見出しました6)。
〈歯周病*予防成分GK2の生理活性〉
*歯肉炎・歯周炎の総称
マメ科の甘草(カンゾウ)の根の抽出物であるGK2(図3)は抗炎症作用を有し、歯周病予防の有効成分としてオーラルケア製品に用いられています。さらに、抗菌作用や腸内細菌叢のバランスを整えることで肝疾患の予防に寄与することが報告されています7, 8)。しかしながら、口腔細菌や口腔細菌叢に対する作用は明らかになっていませんでした。我々は、GK2が口腔細菌叢のバランスを歯周病原細菌比率が低い状態に整えて歯肉の炎症を抑えることで、歯周病予防に寄与している可能性に着目し、検証を行いました。
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![[図] 歯周病と口腔細菌叢の関係](/academic/dentalmagazine/wp-content/uploads/sites/2/2026/04/196-20_photo01.png)
図1 歯周病と口腔細菌叢の関係1~4) -
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![[図] 口腔細菌叢のバランス制御の考え方](/academic/dentalmagazine/wp-content/uploads/sites/2/2026/04/196-20_photo02.png)
図2 口腔細菌叢のバランス制御の考え方 -
![[図] GK2の構造式](/academic/dentalmagazine/wp-content/uploads/sites/2/2026/04/196-20_photo03.png)
図3 GK2の構造式
2. 歯周病原細菌に対するGK2の選択的抗菌作用の検証
(方法)
歯周病原細菌(P. gingivalis)及び、その他の口腔細菌(Streptococcus oralis, Neisseria flavescens, Haemophilus parainfluenzae)について、各種濃度のGK2を添加した条件下で培養しました。
GK2を添加していない群(Control)の培養液の吸光度の値を100%とした時の相対増殖率を各種濃度のGK2添加群で算出しました。
(結果)
GK2は、P. gingivalisに対して、一定以上の濃度で増殖抑制作用を示した一方で、その他の細菌種の生育には影響しませんでした(図4)。
本結果より、GK2がP. gingivalisに対して、選択的な抗菌作用を有することが示唆されました。
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![[図] 各種口腔細菌に対するGK2の増殖抑制作用](/academic/dentalmagazine/wp-content/uploads/sites/2/2026/04/196-20_photo04.png)
図4 各種口腔細菌に対するGK2の増殖抑制作用
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