196号 SPRING 目次を見る
Dental Talk
積年の課題だったIPスキャナーの自社開発をついに実現「Veraview iP」開発の背景とその独自性
目 次
- ≫ 「ベラビューiP」の開発経緯
- ≫ 「IP詰まり」を解消するため独自のIP搬送機構を搭載
- ≫ これまで培ってきたデジタルX線技術のノウハウを結集
- ≫ 症例に合わせたモード選択
- ≫ スキャンモードの活用方法
- ≫ 読者の先生方へメッセージ

「ベラビューiP」の開発経緯
新井 口内法のX線撮影は、センサーやX線ディテクターを体の中(口腔内)に挿入して撮影するという、医科・歯科を通じて、他に例を見ない撮影方法です。いったんイメージングプレート(以下:IP)を口腔内に挿入し撮影した後、それを取り出し、IPから画像を読み込み、その後画像を消去して再利用するという、多くのステップが必要になります。その過程でトラブルが発生することも多く、臨床現場ではその解決が待ち望まれていました。
杉原 モリタ製作所では、口内法X線装置の受像機(IPスキャナー)については、これまで海外製品の輸入販売を行ってきました。しかし、同時に受像機を自社で開発しようという動きは以前からありました。その理由として、1つは画質の向上、2つめはIPスキャナー内でIPやIPカバーが詰まる「IP詰まり」を減らして、臨床現場でのお困りごとを解決したいというものでした。
新井 画質については、現在X線装置は低被ばくという流れに進んでいますが、被ばく線量を下げると、それに比例して画像が持つ情報量も減ってしまいます。低被ばくはもちろんとても大事なことですが、診療に必要な情報が減ってしまうのはできるだけ回避したい。被ばく量を下げながら、情報量も損なわないようにする、相反する2つのバランスをどう取るかが大きな課題でした。
また、撮影後にIPスキャナーにうまくIPを挿入できない。あるいは挿入後に何らかの理由でIPが排出されないなどの「IP詰まり」が発生すると、患者さんに再度撮影をお願いすることになります。そして最悪の場合、IPスキャナーが読み込み不能になって修理が必要になるケースも少なからずありました。実際に私が勤務する日本大学歯学部付属歯科病院では、5、6台のIPスキャナーがありますが、しばしば「IP詰まり」が発生している状況です。ですから、まずはIPを読み取る際のトラブルを可能な限り減らすこと。また、仮にトラブルが発生しても、院内のスタッフですぐにリカバリーできるなどの改善が求められていました。
杉原 IPスキャナーの開発は、10年以上前から細々と続いていました。2020年頃、画質が一定レベルに達し、ようやく意図したX線画像が生成できるところまで見えてきた時点で、正式に製品開発グループを立ち上げました。
「IP詰まり」を解消するため独自のIP搬送機構を搭載
杉原 IPスキャナーは、多くの場合X線室の外の卓上に設置されます。ただ、この装置の画素サイズは数10μmのため、振動に非常に敏感です。パソコンのキーボードをタイプしたり、診療器材を近くに置いた時に発生する振動など、些細な振動もセンサーが拾ってしまい、画像に影響を及ぼすことがあります。「ベラビュー iP」では、そうした振動対策に正面から取り組みました。そこで大学時代に振動を研究テーマにしていた藤井のノウハウが大いに活かされています。
藤井 大学時代に、歯を自動で切削できる器械を考えていく過程で、切削する対象によって伝わる振動に違いがあるのかを検証したことがありました。エナメル質、象牙質、う蝕を切削する際の振動に違いがあることがわかれば、その数値をもとに切削の自動化が実現できるというアイデアです。また、振動がどんなメカニズムでどのように伝わっていくのかを調べたこともありました。「ベラビュー iP」の開発にあたっては、そうした過去の経験を活かしながら、まずは振動の定量化に着手しました。さらに、本体の形状や設置方法を変えるなど、考えられる様々なパターンを試した結果、ある構造にするとセンサーに振動がまったく伝わらないことがわかってきました。そこでその構造を追求していった結果、外部からの振動がほぼ伝わらない構造を実現することができました。
本体の形状を縦型にした理由は、IPの挿入方法が大きく関係しています。設計の際に、「ハガキをポストに投函する時のように、無造作にIPを挿入できるようにしたい」という要望が杉原からありました。そこでまずIPの挿入方向を考えたときに、挿入口が横向きだと縦向きにも挿入することができ、IPを把持する機構がより複雑になってしまいます。そこで、挿入方向を限定するためにはその方向にしか入れられない縦向きの挿入が決まり、それに合わせて搬送機構を検討した結果、本体自体も縦型に決定しました。
杉原 先生方のユーザビリティを考えると、できるだけラフに挿入できるようにしたい。とは言え、スキャン中に装置内でエラーを起こして欲しくないわけです。「サイズが大小4種類あるIPをラフに挿入しても、正確に把持してスムーズに搬送する機構を考えて欲しい」という、今考えても欲張りな要求だったと思います。
藤井 挿入のくせは人によって様々です。まして診療で多忙な先生方に、IPの挿入にまで気を遣っていただきたくありません。そこで試作品ができた時点で、社内の多くの人に実際にIPを挿入してもらって、きちんと把持できるのか、装置内でIPが詰まらないかを、何度も繰り返し検証しました。装置に挿入されたIPは、搬送ステージに乗って斜め上に傾斜しながら搬送されるのですが、その傾斜角度や、スキャン後に排出される際の角度も絶妙なアングルで設計しています。
杉原 テストのために角度を自由に変えられる装置を作って、「この角度にすればどれだけエラーが出るか」といったことも検証していましたね。
藤井 さらに杉原からは、「IPを常にフラット(水平)な状態で、それも非接触で搬送・スキャンできるようにして欲しい」という要望もありました。「ベラビュー iP」ではソフトタイプのIPを採用しているため、使用しているうちにIPが変形してしまうことがあります。また、接触タイプのスキャン方式だと、IPがどうしても傷付いてしまうことがあり、それがIPの寿命にも影響します。そうした問題を解決するためとはいえ、把持する際にフラットな状態にして、しかも非接触で搬送し、スキャンできる機構を考え、設計することは、実際問題として非常に難しい課題でした。
杉原 ソフトタイプのIPは、歯列に沿わせて曲げて使われますから、使用していくうちに多少変形してしまいます。IPが変形すると、アーチファクトが発生して画質が低下してしまうおそれがあります。このIPをフラットな状態に保つのが非常に難しく、試行錯誤の結果、IPを常にフラットな状態で、それも非接触で搬送・スキャンできるようになりました。こうしたIPの把持・搬送・排出までをシンプルにたった1個のモーターで駆動させるため、かなり複雑な構造になっていて、ある人から「伝統工芸の組み木細工みたいですね」と言われたこともありました。
新井 IPは決して安価な製品ではありませんから、それが少しでも長く使用できることは、臨床家にとっても朗報だと思います。
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