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言語聴覚士、管理栄養士など他職種のスキルをプラスし、小児治療プログラムを構築

福岡県大野城市 医療法人星樹会 はち歯科医院 理事長 馬場 聡

目 次

  • [写真] 福岡県大野城市 医療法人星樹会 はち歯科医院 理事長 馬場 聡
    福岡県大野城市
    医療法人星樹会 はち歯科医院
    理事長 馬場 聡

福岡県大野城市にある、はち歯科医院では、「マイナス1歳から100歳まで、一生通える歯医者さん」として、小児歯科から訪問診療まで多職種と連携を図りながら、幅広い分野をサポートされています。今回の取材では、特に小児歯科における取り組みにクローズアップし、「地域になくてはならない歯科医院」の作り方について探ります。

「治療」ではなく「医療」を

はち歯科医院の設立当初、歯科医師は私1名と、歯科衛生士1名、歯科助手1名の計3名からスタートしました。その当時は、長期的なビジョンを持つこともなく、「とにかく多くの患者さんを診よう」という意識しかありませんでした。良い治療を続けていれば、患者さんやスタッフは必ずついてきてくれると思い込んでいたので、休日返上で勉強会に行き、ひたすら治療の技術を学ぶために研鑽を積んでいました。しかし、学びを重ねるうちに、「治療」ではなく「医療」が大切という考えに至りました。現代社会において、医療はもちろん必要ですが、本来は病気がこの世から消えてなくなることがもっとも幸せです。それは容易には達成できないかもしれませんが、理想とするのはその世界観です。その時に、病気にならず、健康を維持するためにどうすれば良いのかを考えると、結局人は自分が病気になった時に初めて健康のありがたさに気付くことがわかります。そこで私は、乳幼児の頃から、健康な状態を無意識のうちにでも定着させて、それが医療として成立する世界を思い描きながら、医院の仕組みを考えるようになりました。

コンセプトは「教育」・「家族」・「物語」

人が病気になる理由を考えると、普段どんな食事を摂っているか、どんな生活環境で過ごしているか、に依るところが大きいと思います。そこで、当院のコンセプトの1つ目に「教育」を掲げ、正しい食事の摂り方や食べ物、生活環境などを学ぶための仕組みを院内につくることを目指しました。ここで言う「教育」には、患者さんへの教育、スタッフへの教育、そして地域に対する教育という意味が込められています。こうした教育が浸透しないと、私たちが成し遂げたい思想や世界観を提供することはできないだろうと考えています。
2つ目のコンセプトは「家族」です。人は誰かから想われることで、長生きしたいとか、健康でありたいと思うようになるのではないでしょうか。そう考えた時、「家族」はとても大事な存在です。当院では、幅広い世代の方が多く来院されるため、同居していないお孫さんとおばあちゃんが待合室などで偶然出会い、会話が成立することもあります。そこで当院は、そうした地域のハブの存在として、健康のコミュニティステーションのような役割を果たしたいと考えるようになりました。
3つ目のコンセプトは「物語」です。NBM(Narrative Based Medicine)という言葉があります。これは私が大学を卒業してから学んだ言葉で、Narrativeは物語を意味します。直訳すると、「物語をベースにした医療」ということになります。もちろんEBM(Evidence Based Medicine)も大切な考え方ですが、私としてはNarrativeを大事にしていきたいという思いがあって、「物語」をコンセプトに定めました。
さらに、この医院を200年にわたって続く医療機関にすることが、私にとってのミッションと考えています。私がどれほど崇高な考えを持って取り組んだとしても、私がいなくなることで、その考えがなくなってしまえば、仮に私が診てきた全ての患者さんが路頭に迷ってしまいます。そうならないように、当院のコンセプトが永続していく組織にしたいと考えています。

  • [写真] はち歯科医院の外観
    はち歯科医院の外観。開設以前は、馬場理事長が分院長として勤務する別の歯科医院だった。
  • [写真] 医院に隣接するプレハブ群
    医院に隣接するプレハブ群は、小児歯科に関する様々な個別の治療プログラムを行うための施設

小児治療プログラムにおける管理栄養士と言語聴覚士の役割

[写真] はち歯科医院のスタッフ当院の小児歯科診療では、マイナス1歳(妊産婦)から18歳まで、各年齢に応じた正しい習慣づくりをサポートし、QOLの向上を目指す様々な治療プログラムを組んでいます。遂行には、管理栄養士が中心になり、年齢ごとに栄養に関わる集団講座や個別指導を行っています。さらに、小児専門の言語聴覚士が、お子さんの構音発達に関する悩みや相談を受け、支援を行っています。もちろん、本来の歯科的アプローチとして、歯科衛生士による口腔機能発達不全症への対応や、予防矯正、歯並び育成治療プログラムにも取り組んでいます。
小児治療プログラムの基本方針の1つに、「う蝕にならないライフスタイルを提案する」というものがあります。その方針に基づき、う蝕予防のための身体づくりを推進するため、「砂糖を減らす」、「小麦を減らす」、「栄養を足す」などの取り組みを実践しています。この取り組みに欠かせないのが、管理栄養士の存在です。管理栄養士の素晴らしいところは、栄養面にとどまらず管理業務に関しても多くのノウハウを持っているところです。現在、当院の管理栄養士には、医院のコンセプトを守りながら健康をしっかりと定着させること、そして、管理業務のスキルを活かして、従業員管理を含めた組織体制を構築していくという2つの業務を任せています。
さらに、私が小児歯科で取り組みたかったテーマの1つが構音障害への対応でした。歯科医院には構音に問題を抱えるお子さんが数多く来院されます。そのため、当院では現在7名の言語聴覚士が、小児言語リハビリテーションを歯科に定着させるための取り組みを進めています。

多くの人がより健康で幸せになるために

今後の展望の1つ目は、リーダーとして、求める世界観や未来を提示し、その実現を支えてくれるスタッフに見合うだけの報酬を支給することです。
2つ目は、それとは逆に「非金銭的報酬」と呼ばれる、医療人としての喜びをさらに高めていくことです。「医療に携わって良かった」と思えるような、環境づくりを今後も続けていきたいと考えています。これまで様々な取り組みを行ってきましたが、こうした活動を継続して実践することで、患者さんはもっと健康で幸せになれるはずです。それをできるだけ多くの人に伝え、届けていきたいと考えています。
最後に、それを広く伝えるためには事業規模を今以上に成長させていくことが必要になると考えています。3人からスタートして、現在スタッフは110人までになりました。さらに規模が拡大することで、救える患者さんの数も増え、雇用できるスタッフも増えるでしょう。3年計画で取り組んできて、今年はその集大成の年です。ぜひ成し遂げたいと思っています。

  • [写真] 各種パンフレット
    患者さんご自身で選択していただけるよう、それぞれの治療プログラムの内容について詳しく解説したパンフレットを用意している。
  • [写真] 「赤ちゃん歯科クラブ」の様子
    「赤ちゃん歯科クラブ」の様子。0~2歳の子どもを対象に集団メインテナンスやトレーニングを行う。毎月100組近くのご家族が参加される。
  • [写真] 「ちびっこ歯科クラブ」の様子
    「ちびっこ歯科クラブ」では、集団でのトレーニングではあるが、小児歯科の専門スタッフが一人ひとりに声かけを行っている。

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