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Clinical Report

前歯部審美領域においてTiハニカムメンブレンを用いた骨造成を伴う早期インプラント埋入の1症例

医療法人 寛友会 浅賀歯科医院 浅賀 勝寛

キーワード:抜歯早期インプラント埋入/スペースメイキングを伴う骨造成/安定した骨再生および創傷治癒

目 次

はじめに

審美領域におけるインプラント治療では、機能回復のみならず審美的結果の獲得が重要である。
特に前歯部においては、歯肉形態やボリュームといった軟組織のマネジメントが審美性に大きく影響するため、これをいかに安定して再現するかが重要な課題となる。
しかしながら、軟組織の形態はその裏打ちとなる硬組織に依存しており、頰側骨の欠損や吸収を伴う症例では、十分な軟組織形態を獲得することが困難となる。そのため、審美領域においては適切な骨造成による硬組織の再建が不可欠である。
近年、Ti ハニカムメンブレンは、そのスペースメイキング能および血流維持に優れ、骨造成において有用な材料として報告されている。
本症例では、Ti ハニカムメンブレンを用いた骨造成により硬組織の再建を行い、前歯部審美領域において適切なインプラントポジションを確立し、良好な審美的結果を得たため報告する。

症例概要

患者は75歳男性で、上顎右側中切歯の被せ物が脱離したことを主訴に来院した(図1, 2)。
口腔内およびX線検査の結果、当該歯には垂直性歯根破折が認められ、保存不可能と診断した(図3)。
さらに、CBCT所見において、頰側骨に及ぶ骨吸収が認められ、軟組織には炎症所見も確認された(図4)。このような状態において抜歯即時インプラント埋入を行うことは、頰側骨の欠損および軟組織炎症の影響により審美的リスクが高いと判断した。
そこで本症例では、一度抜歯を行い軟組織の治癒を待機したのち、骨造成を伴う抜歯早期インプラント埋入を行う方針とした。

  • [写真] 初診時口腔内写真
    図1 初診時口腔内写真
  • [写真] 初診時顔貌写真
    図2 初診時顔貌写真
  • [写真] 初診時デンタルX線写真
    図3 初診時デンタルX線写真
  • [写真] 初診時CBCT画像
    図4 初診時CBCT画像。垂直性の歯根破折、頰側の骨吸収がみられる。(DEXIS社製CTにて撮影)

治療計画

本症例では、前歯部審美領域において適切なインプラントポジションの確立と調和の取れた歯冠形態の獲得を目的として治療計画を立案した。
まず、保存不可能と診断した上顎右側中切歯を抜歯し、軟組織の治癒を待機した後、Ti ハニカムメンブレンを用いた骨造成を伴う抜歯早期インプラント埋入を行うこととした。
また、審美的観点から、隣在歯との形態および歯肉ラインの調和を図る必要があると判断し、上顎右側側切歯および上顎左側中切歯に対しても補綴治療を行い、3歯による包括的な審美修復を行う方針とした。
さらに、プロビジョナルレストレーションを用いて歯肉形態の調整を行った後、最終補綴へ移行する計画とした。

補綴設計・治療順序

本症例では、顔貌との調和を考慮しインサイザルエッジポジションの決定を行ったうえで、診断用ワックスアップを作成し、フェイシャルドリブンに基づく治療計画の立案を行った(図5)。これにより最終補綴形態を基準としたインプラントポジションの設定を可能とした。
インプラント埋入後は、プロビジョナルレストレーションを用いて歯肉形態の調整を行い、隣在歯を含めた3歯において歯頸ラインおよび歯間乳頭の調和を図った。軟組織の成熟を確認した後、最終補綴へ移行した。

  • [写真] 診断用デジタルワックスアップ
    図5 診断用デジタルワックスアップ

実際の治療

上顎右側中切歯抜歯後、軟組織の治癒を目的として約2か月間の治癒期間を設けた(図6)。
その後、診断用ワックスアップを作成し、最終補綴形態を基準とした治療計画の立案を行った(図7)。
本症例では、頰側骨の吸収が認められ、最終的な歯肉形態および審美的調和を獲得するためには,水平的および垂直的な骨造成が必要であると判断した。特に審美領域においては、骨のボリュームが軟組織形態を規定するため、十分なスペースメイキングを伴う骨造成が重要となる。
そこで本症例では、スペースメイキング能に優れるTi ハニカムメンブレンを用いた骨造成を選択した。Ti ハニカムメンブレンは高い剛性を有し、骨造成に必要なスペースの維持に有利であるとともに、多孔構造により血液の浸透性に優れ、良好な血液供給を維持できる特徴を有する。そのため、骨造成部における創傷治癒の安定化が期待され、裂開などの合併症リスクの低減にも寄与すると考えられる。
審美領域に配慮し、左右第一小臼歯近心部に縦切開を加え、大きな粘膜骨膜弁を展開した(図8)。
サージカルガイドを用いてインプラントを埋入し、埋入ポジションは最終補綴形態を基準として三次元的に設定した。埋入後、3mmのヒーリングアバットメントを装着した(図9)。
続いて、水平的および垂直的骨造成を行った。骨造成に際しては、術後の骨吸収を考慮し、最終的な骨形態を見越したオーバーコレクションを付与した。
その後、Ti ハニカムメンブレンを設置しピンにて固定した(図10)。骨移植材およびメンブレンを確実に固定し、微動を防止することは、骨造成の成功において重要な要素であると考えられる。Ti ハニカムメンブレンにより骨造成に必要なスペースを確保するとともに、安定した骨再生環境の構築を図った。
その後、一次閉鎖を得るため減張切開を行い、緊張のない状態で縫合を行った(図11)。縫合に際しては、創部に緊張がかからないよう十分な減張を行い、確実な一次閉鎖を達成した。これにより創部の安定が図られ、骨造成部を外部環境から保護することが可能となった。
術後は裂開などの合併症は認められず、良好な創傷治癒が得られた(図12)。創部は安定した治癒経過を示し、感染や炎症所見も認められなかった。抜糸後の経過も良好であり、軟組織の安定が確認された。
さらに、CT所見においては骨造成部において十分な骨量および骨幅の回復が認められ、水平的および垂直的に安定した骨再生が得られていることが確認された(図13)。
その後、約9カ月の治癒期間を経て二次手術を行い、Ti ハニカムメンブレンの除去を行った。Ti ハニカムメンブレンは周囲組織との固着が少なく、容易に除去することが可能であった。

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