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Clinical Report

Dr. Markus Hürzeler / Dr. Otto Zuhr海外プライベートセミナーを受講して

内川歯科医院 院長 内川 裕太

キーワード:海外プライベートセミナー/「All in 2」コンセプト

目 次

はじめに

さる2026年1月14日~1月16日の3日間にわたり、ドイツ ミュンヘンのDr. Markus HürzelerとDr. Otto Zuhrの歯科医院にて、i6主催(株式会社モリタ、Thommen Medical社協賛)のドイツ研修が開催された。2024年4月に行われたi6主催のドイツ研修の第2弾である。Dr. Markus HürzelerとDr. Otto Zuhrは、様々な文献でその名前を目にするが、その2人のプライベートセミナーということで、筆者も待望していた研修であった(図1, 2)。
本稿では、本研修で行われた講演・実習内容と筆者の症例を報告したい。
・1日目
セミナー初日はDr. Markus Hürzelerの講義から始まった。内容は、インプラント治療における基本的な考え方や原理原則、インプラント周囲軟組織マネジメント、臼歯部抜歯後即時インプラント埋入についてであった。インプラント治療において最も重要なことは「インプラント周囲360°において清掃・プロービングが可能なこと」と述べたうえで、角度付きアバットメントは清掃性が低下するため、インプラント周囲炎になりやすく、またセメント固定性の上部構造はセメント除去が困難であることから、インプラント周囲炎のリスクが高くなるとのことであった。さらには、昨今、日本でも普及している治療法である「All on 4」についても、その清掃性の困難さゆえに、否定的な考えを示した。
2時間程度の講義の後、30分のCoffee Breakの時間が設けられていた。海外プライベートセミナーならでは、という感じで、手作りの軽食や飲み物が用意され、受講生同士で団欒した。
インプラント周囲軟組織マネジメントについては、インプラント埋入後のSupracrestal Tissue Attachment(STA)を考慮し、インプラント埋入ポジションや軟組織の厚みのコントロールが必要であることを強調した。インプラント周囲角化粘膜が薄い場合は、軟組織の治癒過程でインプラントショルダー部の歯槽骨が吸収されるため、インプラント埋入ポジションを深めに設定する必要があり、逆にインプラント周囲角化粘膜が厚い場合は、清掃性の観点から、粘膜の厚みを薄くする必要があると述べた。前半の講義のあとはLunch Breakであった。
1日目の最後は、抜歯後即時埋入についての講義であった。抜歯後即時埋入は、硬軟組織温存や治療期間の短縮など様々なメリットがあり、その中でも最も重要なメリットとして歯冠乳頭を温存できるという点で、その優位性があると述べた。歯冠乳頭の温存は、臼歯部インプラントにおいて、プラークを滞留させないという意味合いで重要とのことだった。
またDr. Markus Hürzelerは、臼歯部抜歯後即時インプラント埋入を行う場合、「All in 2」という手法を用いていた。この方法はインプラント埋入手術後、数か月の免荷期間の後、次の来院時に最終上部構造を装着するという方法である。こうすることで、治療が2回で終わるということが最大のメリットとのことであった。今回筆者は、このコンセプトに類似した症例を提示する。
・2日目
2日目はDr. Markus Hürzelerのライブオペで幕を開けた。ライブオペは、₆の抜歯後即時インプラント埋入症例であった。オペの手順と術中のポイントを以下に示す。
① クラウン除去・歯冠部歯質の削合② コアレジンの除去(コンポジットレジンは非常に硬く、インプラントドリルの切れ味が低下するため、完全に削り取る)
③ 残根状態で最終径までドリリング
④ 歯根分割・抜歯
⑤ 肉芽組織掻爬(根尖部の肉芽組織は除去。歯冠側の肉芽組織は、軟組織の治癒に役立つため除去しない)
⑥ インプラント埋入(SPIイニセルインプラント)
⑦ トーメン スキャンアバットメントを締結し、光学印象
⑧ 骨補填材填入
⑨ カスタムヒーリングアバットメント(CHA)作製(骨補填材はオーバーフィリングする)
術式としては「通法どおり」という感じであったが、トーメン スキャンアバットメントで印象採得し、歯肉縁下形態に関しては、CHAの歯肉縁下形態のスキャンを行わなかったことには驚いた。
・3日目
3日目は根面被覆と乳頭再建について、Dr. Otto Zuhrによる講義と実習が行われた。2024年に行われたドイツ研修の内容の振り返りから始まり、Coronally Advanced Flap(CAF), Modified Coronally Advanced Flap(MCAF), Combined Coronally Advanced Tunnel(CCAT)について、症例を提示しながら解説した。根面被覆の術式は多数存在するが、ベストな術式は存在せず、術者の技量、歯肉退縮の状態、隣在歯の状態など、さまざまな状況に応じて術式を選択する必要があると述べた。
実習はPeninsula Flapを行った。Peninsula Flapは乳頭再建で使用する術式の1つで、トンネルテクニックでは粘膜の可動性が限られるという問題を克服するような方法である。口蓋側に縦切開と水平切開を加えフラップを頰側に移動させることで、乳頭部にテンションフリーで、十分な量の結合組織を填入することができる。

  • [写真] Dr. Otto Zuhr
    図1 Dr. Otto Zuhrによる軟組織造成のレクチャー
  • [写真] Dr. Markus Hürzelerによる抜歯後即時インプラント埋入実習
    図2 Dr. Markus Hürzelerによる抜歯後即時インプラント埋入実習
  • [写真] 初診時口腔内写真とパノラマX線写真
    図3 2024年8月、初診時口腔内写真とパノラマX線写真

症例提示

[症例概要]

患者は初診時28歳の女性。₅の違和感を主訴に来院した(図3)。₅は約2年前にカリエスの進行により、根管治療およびCAD/CAM冠を装着されたとのことであった。デンタルX線写真では、₅遠心部にクラウンマージン不適合およびレジンコア下にカリエス様の透過像を認め、根尖部透過像は認められなかった(図4)。全顎的には、軽度の叢生と側方運動時の犬歯誘導の欠如を認めた。歯周組織検査、その他カリエスは問題なかった。クラウンおよびレジンコアを除去したところ、骨縁下に及ぶカリエスを認めた(図5)。カリエスを除去すると残存歯質量が著しく失われたため、保存困難、予後不良と判断した。叢生や臼歯部離開咬合の欠如のため、矯正治療を含めた治療計画を提案したが、受け入れられず、₅のインプラント治療のみ行うこととなった。

[患者情報]

患者年齢・性別:28歳・女性
初診:2024年8月
主訴:₅の違和感
歯科的既往歴:約2年前に₅の根管治
療および補綴処置
全身的既往歴:特記事項なし

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