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Case Report

アドベールSH全国横断連載企画<第2回>歯周治療におけるAdverl SHの可能性

宮谷歯科医院 院長 宮谷 史太郎

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キーワード:ディスタルウェッジ/歯肉剥離/手術時間短縮

目 次

はじめに

筆者がモリタ社製のEr:YAGレーザーに出会ったのは、歯周治療をよりしっかり学びたい、経験を積みたいと思い勤務させていただいた歯周病専門医研修施設『医療法人のぶとう歯科医院』(大阪府吹田市ご開業)でのことである。
同院院長の信藤孝博先生は、歯周治療のみならずインプラント治療症例においてもEr:YAGレーザーを応用されていた。勤務する中で、日々その光景を見ていた筆者も自然と自身の臨床、特に歯周治療において同レーザーを用い数々の症例をこなすようになっていた。その経験から、スタッフ教育も含む機器を使うための環境整備を日常から行っておくことが大切であり、何より使う環境に自分の身を置くことがとても重要であると考える。
その環境を皮切りに、今では歯周治療だけではなく様々な症例に用いるようになり、利用当初と比較し、自身の症例においてEr:YAGレーザーの臨床応用の可能性が広がったと考える。
現在、モリタ社製のEr:YAGレーザーは「Adverl SH」(以下:SH)としてバージョンアップし、さらに様々な症例に対する臨床応用の可能性が広がったと言える。本稿では、その可能性の一部をご紹介したいと思う。

開業当初から導入するメリット

近年、歯科界は数十年前とは比べ物にならないほど多くの新たな機器・機材が誕生し、さまざまな歯科治療の過程でデジタル化も進んできている。今やCTを開業当初から院内に設置することは当然のこと、光学印象用機器、CAD/CAMミリングマシン、ClassB滅菌器や医療用洗浄機などの感染対策機器等々、開業当初から投資するべき機器・機材が多々ある。
しかし、この人件費高騰、物価高騰のご時世で、これら全てを揃えるのは理想郷であり、現実ではそれらを取捨選択し、開業当初に必ず自身が必要とするものにある程度絞る必要性が出てくる。筆者も開業前に、どの機器・機材を購入するか悩んだ覚えがある。その中でもCTと合わせて、モリタ社製の「SH」は迷わず購入することを決めていた。その理由として、もちろん勤務医時代に使用していたという環境要因もあるが、そもそも「SH」を導入することにいくつかのメリットがあると考えていたからだ。
そのメリットとは、保険治療に用いることができ、保険診療報酬として請求できること、歯周外科治療における複雑な外科処置過程で、「SH」を用いることにより、各外科処置にかかる時間の短縮が図れること、歯周外科治療時のデブライドメントにおいて、手用器具では届きにくい、不確実性が増す部位への容易なアプローチができること、「SH」を所有していない医院との差別化を図れることなどが挙げられる。そのような多数のメリットから開業当初より筆者は「SH」を導入している。

歯周外科への応用

歯周外科治療は、術式を大きく分けると、組織付着療法、切除療法、歯周組織再生療法、歯周形成手術がある。症例に合わせていずれの術式を選択するにせよ、当然歯周組織への切開は必須となる。その際、通常は様々な形状のメスを用いて切開を行うことが多い。ところが、歯周外科治療を行う中で、症例によってメスを到達させることが困難となる場面に遭遇することがある。筆者はそういった症例の場合に、「SH」を用いることが有効であると考えている。その一つの例として、最後方臼歯の遠心歯肉を切開する必要がある症例に対する利用である。歯周外科治療において最後方臼歯遠心の切開法の一つとしてディスタルウェッジがある。
しかしながら、症例によっては患者の開口量が制限される、口腔周囲筋の過緊張がある、歯列不正がある、術部前方の歯の高径が高いなどの諸条件により術野が制限され、器具の操作が困難となり、メスでは術部に正しくアプローチできないケースがある。そのようなケースに、「SH」を用いることで術前に想定した切開部と同様の部位への正確なアプローチを可能とさせる(図1~5)。
また筆者は、歯周外科治療時に使用している「SH」のチップは術中ほぼ他のタイプに付け替えることはなく、同一のものを用いている。照射部位から少し離した位置より照射を開始し、照射部位組織の状態を確認しながら照射深度を調整すると、比較的チップやモードを変えなくても効果的に施術できるため、メスのように刃をたびたび付け替えるなどしなくてもよいという点で煩わしさもなく、手術時間の短縮にもつながり重宝している。
余談ではあるが、「SH」には切開以外にも不良肉芽除去、骨整形、止血、口内炎治療やメラニン除去など他のモードも豊富にある。歯肉剥離モードというものはないが、筆者は上顎口蓋側、下顎舌側の歯肉剥離時にも「SH」を応用している(図6, 7)。「SH」を用いた歯肉剝離の際は、プローブを歯周ポケット内に挿入する要領で、歯肉辺縁から歯肉溝内に根面に添わすようにチップを挿入する。チップ先端が止まったところで照射、さらにチップ先端を根尖に進めていく、という作業を剥離したい部位に慎重に繰り返すことで剥離が容易に行える。
一般的に、切開後の歯周靱帯を離断しつつ歯肉を剥離する過程において、剥離子などを用いて歯肉剥離を行うことが多いが、上顎口蓋側の歯周靱帯が堅牢な部位では歯肉剥離に時間を要する場合や、下顎舌側の歯肉剥離の際には剥離子が滑脱し思わぬ組織の損傷を引き起こす可能性がある。そこで、「SH」を用いることにより、上顎口蓋側歯肉剥離を容易にし、下顎舌側歯肉剥離ではよほど組織の深い部位に照射しない限り、思わぬ組織損傷の危険性を低減させることが可能となる。このように「SH」では設定されたモード以上に臨床応用の可能性が広がったと言える。

  • [写真] 症例1
    図1 症例1 左下の奥歯に違和感があると訴えられ来院。縁下歯石が存在し、歯周ポケットも深い部位が認められたため、可及的に歯周基本治療を行った。₇遠心に深い歯周ポケットが残存したため、歯肉剥離搔爬術を施行。
  • [写真] 切開、歯石除去、デブライドメント、骨整形に「SH」を使用
    図2 「SH」を用いて₇遠心にディスタルウェッジを行った。切開、歯石除去、デブライドメント、骨整形に「SH」を使用。(S600T, 40pps/50~60mJ)
  • [写真] 4-0ナイロン糸にて創部を縫合
    図3 4-0ナイロン糸にて創部を縫合。
  • [写真] 術前デンタル
    図4 術前デンタル。根面に多数の歯石を認め、遠心には垂直性の骨吸収を認める。
  • [写真] 術後デンタル
    図5 術後デンタル。根面の歯石が除去され、遠心の垂直性骨吸収の改善を認める。
  • [写真] 「SH」を用いて₇遠心にディスタルウェッジを行い、口蓋側歯肉剥離にも「SH」を用いた。(
    図6 症例2 「SH」を用いて₇遠心にディスタルウェッジを行い、口蓋側歯肉剥離にも「SH」を用いた。(S600T, 40pps/50~60mJ)
  • [写真] 1か月後
    図7 1か月後、歯肉の治癒を確認し、補綴治療を行った。
  • [写真] 照射時の写真
    図8 参考症例 照射時の写真。₇遠心フラップレスで「SH」を用いてSRPおよびデブライドメント。頰側に縁下の歯石が浮いている。(S600T,40pps/50~60mJ)

症例のまとめ動画はこちら

終わりに

「SH」を導入することにより、外科治療時の手術時間の短縮を図ることができ、患者への外科的侵襲を低減することが可能となった。患者も術後の出血や疼痛も少なく、外科処置後のイメージが良くなったとおっしゃる方もいる。
また、様々な症例への幅広い利用が可能となり、準備する手術器具の簡素化を図ることができ、スタッフには効率化が図れてよいと好評である。つまり歯科医院に「SH」を導入することは“三方よし”と言えよう。

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