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Business Management

ハッピーリタイアは公平ではない 第3回 投資による税額への影響

税理士法人 FIA 取締役・メディカルコンサルティング事業本部長 宇津原 尚明

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目 次

「ヒト」への投資:スタッフの成長を促すことで医院価値は上昇する

第3回は、能動的な「投資」について説明します。投資には、「ヒト」への投資と「モノ」への投資があり、それぞれが医院の税額計算にいかに影響するのかについて見ていきましょう。
まず、ヒトへの投資については、スタッフのセミナー受講費を負担したり、必要な教材を購入するための「教育訓練費」と、ベースアップ評価料に寄与する「昇給」の2つが該当します。学び続けることは、高度医療を提供する医療機関には必須条件であり、知識や技術を習得し、医院への貢献度が増したスタッフには、それに見合う昇給が伴います。その場合、税金計算では「賃上げ促進税制」が適用されます。前年比給与が増加していれば一定額を税金から控除し、また、教育訓練費の前年比増加割合が要件を達すれば、控除される税金のさらなる上乗せ措置を図ることができるというものです。要は、ヒトに投資した費用については、確定申告を通じて税額が減額されるという仕組みです。
医院を承継する場合、歯科事業とスタッフを併せて次の後継者に譲り渡すケースが多いと考えられます。優秀なスタッフが、次の院長の下でも継続して高い評価で勤務できれば、貴院の評価を上げる一因になることは間違いありません。今からでも決して遅くはありません。資金を投じてスタッフを育成し、成長を促してください。なお、控除される税額の上限額や教育訓練費の廃止時期の到来については、顧問税理士にお尋ねください。

「モノ」への投資①:承継したい医院として選ばれるために

次に、モノへの投資については、ご子息ご息女が後継者として控えている場合、今から取り組むべきという提案に変わりはありません。耐用年数を超えて利用できる医療機器は万全の状態を保っているでしょうか。あるいは、待合室やカウンセリングルームの壁紙、トイレやパウダールームに清潔感は感じられるでしょうか。患者さんの見える位置にある収納棚に乱雑さや未整理感はありませんか。便利さや快適さ、目新しさ(「新品」の新しさという意味ではありません)は、備わっていますか。貴院を承継したい若い先生方の視点に立って、あらためて自院の環境を確かめてみてください。その弱点を補ってこそ、承継したい医院として選ばれると考えています。そのためのポイントについて、モリタの担当者にアドバイスを求めるのも一案です。

3回目の今回は、「ヒト」「モノ」への能動的な投資の必要性について解説します。

「モノ」への投資②:減価償却の最中に承継が生じても投資額全額が経費になる

仮に、2年先に次の後継者に承継する前提でレントゲンのデジタル化、照明設備やチェアユニットの入れ替えや無人受付化システム(既存医院の受付スタッフが不要というものではなく、受付業務をDX化して効率が上がり、生まれた余剰の時間をコンシェルジュのようにマルチな新しい働き方に変える仕組み)などで1,000万円を投資したと仮定しましょう。現在の年齢と投資金額に二の足を踏まれる先生もいらっしゃるかもしれませんが、税額計算では下記のように反映されます。
個人事業主が手元現金から一括支払いを行った場合、設備投資から2年間は167万円(説明上耐用年数をすべて6年として試算。1,000万円÷6年=167万円)ずつ減価償却費が計上でき、その期間の税額を小さくする効果があります。その後承継すれば、残りの帳簿価格666万円(1,000万円-167万円×2年分=666万円)が譲渡時の売上原価(経費)になり、税額を小さくできます。その結果、支出金額1,000万円が、設備投資から承継の間に全額経費として計上できるのです。
一方、借入によって設備投資を行った場合、減価償却と譲渡時の売上原価は変わらず、承継する際の譲渡対価から借入残高を返済することが可能です。
いずれの場合でも、設備投資の帳簿価額残高666万円が譲渡対価を押し上げることになります。万が一、承継までに相続が発生した際の相続税の計算においても、手元現金のまま保有しているよりも、モノに投資することで相続評価が小さくなりますし、借入によって投資した場合でも、相続財産の計算上、相続財産から借入残高を控除することができます。
他方で、医療法人が法人預金より一括支払いを行った場合、上記個人事業主の場合と同じ効果が法人税に生じます。また、借入によって設備投資を行った場合、承継した新理事長が継続して借入返済を継続できます(医療法人の場合、理事長が代わっただけで法人は継続するため、一括返済する必要はありません)。

「ヒト」や「モノ」への能動的設備投資が医院承継のポイント

個人事業主、医療法人のいずれにおいても、売上が下がらない、または維持できる、さらには増加するためにも、「ヒト」や「モノ」に対して能動的に設備投資を行い、譲渡対価を押し上げることができます。魅力の高まった歯科医院には、承継希望者は決して目が離せなくなるでしょう。

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