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198号 AUTUMN 目次を見る

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Clinical Report

スーパーボンド®を用いた 暫間的ダイレクトボンディングブリッジ

北海道大学 大学院歯学研究院 難治性歯内・歯周疾患治療学分野 特任教授 菅谷 勉

キーワード:暫間的接着固定/脱離防止

目 次

1. はじめに

欠損補綴に着手するまでの期間、暫間的に隣接歯に歯科用暫間被覆冠成形品を接着固定する治療が、永久歯の前歯1歯欠損に限り、48点の算定で保険収載された。広く臨床で行われてきた方法だが、自己流の先生も多いと思われるので、効率的で脱離しないための術式をあらためて解説する。

2. スーパーボンド®の利点

保険適用の接着材料は限られているが、スーパーボンドはその一つで、この治療法に最も適している。その理由は以下の通りである。
①フィラーを含まず、MMAが線状に重合するので柔軟性と粘り強さがあり、コンポジット系レジンセメントに比べると破断エネルギーは約2.7倍である(図1)。すなわち、曲げる力でスーパーボンドを破断させるには、コンポジット系レジンセメントの約2.7倍の力が必要で、ある程度の力までは変形して応力を緩衝してくれるため、破断しにくい材料である。
②ブリッジ作製時には暫間的ダイレクトボンディングブリッジを除去しなければならないが、スーパーボンドはスチールバーや超音波スケーラーでも切削可能なため、エナメル質を損傷させることなく除去可能である。

  • [図] レジンセメントの破断エネルギー
    図1 レジンセメントの破断エネルギー
    スーパーボンドを破断させるにはコンポジット系に比べて約3倍の力を必要とする。

3. 術式

1) 暫間被覆冠成形品(レジンTeC)の調整

まずレジンTeCの頰舌幅、歯冠長など形態を調整する(図2)。舌側は陥凹しており、そのままでは舌感が悪く食片が滞留しやすいので、即時重合レジンを築盛して形態を整え(図3)研磨しておく。
抜歯直後に作製する場合は、レジンTeCが抜歯窩を被覆したり嵌入したりすると、食物残渣が滞留しやすく、歯肉の盛り上がりを阻害し、治癒状態も十分に観察できなくなるので、レジンTeCの基底面と抜歯窩の間に少し空隙を作っておく。

2) 隣接歯被着面のスケーリング、清掃、研磨

欠損隣接歯の被着面は、接着を阻害する要因である歯石、プラーク、ステインを超音波スケーラーなどで除去する。装着期間が長くなる場合や咬合力の負荷が避けられない症例では、エナメル質表面をカーボランダムポイントなどで研磨(図4)して、表層をわずかに粗造化すると脱落が少なくなる。
隣接歯が歯冠補綴されている場合、ブリッジ作製時には補綴装置を除去することになるので、補綴装置の被着面を粗造化するだけでなく、グルーブを形成したりして、脱落を防止する。

3) 被着面の前処理

被着面がエナメル質の場合、表面処理材レッドまたは表面処理材 高粘度レッドで30秒エッチングを行い、水洗乾燥する(図5)。ティースプライマーはエナメル質と象牙質の両方に使用でき、20秒間塗布してエアーブローすれば良いので、知覚過敏がある場合や、少しでも処置時間を短縮したい場合、一部象牙質が露出している症例には使いやすい。
隣接歯がすでに歯冠補綴されており補綴装置に接着する場合には、M&Cプライマー(図6)を塗布する。これは金属とコンポジットレジン、ポーセレン、ジルコニア、CAD/CAM冠など、ほぼすべての歯冠補綴装置に対応可能となっている。

4) スーパーボンドのポリマー粉末とモノマー液の選択

スーパーボンドのポリマー粉末は筆積法で使用しやすく硬化後に透明になり、筆先に大きなレジン玉を作りやすい、EXクリア(図7)か筆積クリア、筆積F3(フッ素含有率約3%)を用いる。EXクリアは混和法でも使用可能であるため、硬化後に透明になって余剰レジンが見えなくても良いポストの接着や、わずかでもセメントラインが見えないことが要求される審美修復の接着などに用いている。
液材にはモノマー液とクイックモノマー液の2種類があるが、クイックモノマー液を使用すると操作可能時間は同じで硬化待ち時間が短縮されるので(図8)、クイックモノマー液が使いやすい。

5) 筆積法のコツ

ダッペンカップに採取したポリマー粉末は表面に凹凸があるため(図9A)、軽く2~3回タッピングして表面を平らにしておく(図9B)と、筆先にレジン玉を作りやすい。筆にはクイックモノマー液とキャタリストVを混和した活性化液をたっぷりと吸わせる。次に、筆先1~2mmをポリマー粉末に挿入し(図10A)、小さな円を描くように一回りして引き上げると適度なサイズのレジン玉が採取でき(図10B)、そのまま2~3秒待つと筆に吸わせた活性化液が粉末に浸透して適度な粉液比になる(図10C)。

6) レジンTeCの接着

隣接歯の被着面に筆積法でスーパーボンドを塗布し(図11)、レジンTeCを所定の位置で1分程度保持していると手を離しても動かなくなる(図12)。スーパーボンドの塗布を歯でなくレジンTeCの両隣接部に行う方法もあるが、口腔内に移送するときにレジンTeCに塗布したスーパーボンドが指に付着するので、歯面に塗布することが多い。その後スーパーボンドを追加塗布して硬化を待つ(図13)。ユーティリティーワックスでレジンTeCの位置を固定してから(図14)、スーパーボンドで接着する方法もある。余裕をもって作業できるメリットもあるが、ユーティリティーワックスでレジンTeC基底面と歯肉の位置関係が把握できなくなるというデメリットもあるので、手指でレジンTeCを保持できない症例でのみこの方法を用いている。

7) 咬合調整

硬化待ち時間はEXクリア、筆積クリア、筆積F3のいずれでもクイックモノマー液を使用すれば約5分である(図8)。硬化後に咬合調整を行うが、大きな負荷が加わると脱離する危険性があるので、軽く噛んでもらうように注意する。

8) 研磨

スーパーボンドは酸素があっても高い重合率を示すが、表面には未重合層がわずかに残るので、研磨した方が色素沈着は少ない。咬合調整と同時に、ホワイトポイント(図15)や研磨用カーバイドバー、シリコンポイントなどを用いてスーパーボンドの研磨も行う。しかし、スーパーボンドの重合はほんのわずかであるがその後も進むので、次回来院時、とくに色素沈着している場合には、もう一度研磨するとその後は色素沈着しにくくなる。

9) 除去

ブリッジ等の作製に着手する際には、暫間的ダイレクトボンディングブリッジを除去するが、エナメル質を損傷しないように注意しながらスーパーボンドを残さず除去しなければならない。まず、エナメル質を削らないカーバイドバーやスチールバーを使用して切削し、わずかに残ったスーパーボンドはハンドスケーラーで弾き飛ばすように除去したり、超音波スケーラーで削り取ったりする。
超音波スケーラーを使用する際、非注水下だとスーパーボンドが軟化して除去できないので、注水下で行う。チップは先端が少し尖っているものが良く、表面から削っていくのではなく、エナメル質とスーパーボンドの界面にチップ先端を挿入していくように切削し、スーパーボンドを剥離するというイメージで使用すると効率が良い(図16)。

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