198号 AUTUMN 目次を見る
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Dental Talk
国内製IOS「Accuios」の真価
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待望の国内製IOSがついにリリース
北道 国内においては、「チェアサイド型コンピュータ支援設計・製造ユニット」として「ブルーカム」が2005年に初めて薬事認可されました。ただ、初期の口腔内スキャナー(IOS)は、歯面の光の反射を抑え、精度を確保するために酸化チタンなどの白いパウダーを塗布する必要がありました。これは患者さんにとって不快感があり、臨床ステップとしても手間がかかるものでした。その後、2010年代にパウダーフリー化が進むと同時にスキャン精度も飛躍的に向上し、従来の印象採得に代わる手段として急速に導入が進みました。当院では、2007年の「CEREC3」導入以来、様々なCAD/CAM装置を試してきましたが、形成方法が従来のアナログ手法とはかなり違っていたため、導入当初の数か月は慣れるのに苦労しました。しかし、もともと私は機械好きでしたし、今後の歯科の流れは必ずデジタル化に進む確信を持っていました。そのため、装置やソフトウェアの進化とともに、私も試行錯誤を重ねながら、積極的に臨床に取り入れていきました。このたび、モリタから国内初となる国内製IOS「Accuios(アクイオス)」(図1)が上市されると聞き、喜びと期待の気持ちでいっぱいです。
反本 現在はCT画像で得た骨格情報とIOSでスキャンした歯肉・歯列情報をマッチングさせ、インプラントのシミュレーションや、精度の高い矯正治療計画に活用するなど、診断から治療計画、補綴装置製作までのデジタルワークフローを構築することが世界的なトレンドになっています。そのため、モリタにおいても、歯科用CTと互換性の高いIOSの開発は喫緊の課題でした。そこで、モリタ製作所では、独自のIOS開発に乗り出しました。しかし、当時弊社では、IOSの設計・開発・製造に関するノウハウを一切持ち合わせておらず、まったくゼロからのスタートでした。歯は神経や血管の集合体ですから、微細な適合誤差であっても、患者さんには敏感に影響を与えてしまうため、私たちの想像を超える高い精度が必要であることが開発段階になって見えてきました。そのため、当初の販売計画を大幅に見直さざるを得ない状況になったことは否めません。
北道 しかし、待ちわびた甲斐があって、まさに日本人のためのIOSが完成しましたね。
反本 設計に当たって、当時販売されていた海外製IOSを実際に自分の口腔内に入れてみたのですが、私たち日本人の口には装置が少し大きいというのが第一印象でした。そこで弊社では、「人にやさしい」をメインコンセプトに、口が小さいだけでなく、開口量の少ない方が痛みやストレスを感じにくく、さらには使用する先生方にとってもコンパクトで持ちやすい形状を目指して設計を行いました(図2~4)。
北道 確かに海外製IOSは西洋人の骨格に合わせて作られているので、私たちにとっては、最後臼歯の遠心がスキャンしづらいケースもありました。
田中 私は元々ハンドピースの開発に携わっていましたが、自社でIOSを設計開発するプロジェクトが立ち上がると同時に、そのチームに加わりました。「Accuios」は、共焦点法というスキャン方式を採用しています。共焦点法とは、異なる焦点面で複数の画像を取得し、ピントの合った部分だけを積み上げて3D画像を構築する方法で、マージンの再現性が高く、口腔内でも安定したスキャン精度を発揮します。ただ、ピント面を高速で移動させるため、レンズが振動し、その振動が歯に伝わって、患者さんに不快感を与えてしまうことがありました。そこで、小型で高効率なレンズ駆動モーターを独自に開発し、スキャン時の静音性を高めることを目指しました。さらに、摺動接触がないため、従来に比べ、高い耐久性も期待できます。また、北道先生からアドバイスをいただき、ミラーの曇り止めや歯面の乾燥効果を狙ったエアブロー装置も独自開発しました(図5)。
北道 そうしたユーザビリティへのこだわりは、さすがモリタ製作所がゼロから開発した製品だけのことはありますね。私がIOSに関して特に譲れない部分は、スキャンのスピードと精度ですが、「Accuios」では、そのどちらにも大いに期待を持てると感じています。
![[写真] デジタル印象採得装置「Accuios」](/academic/dentalmagazine/wp-content/uploads/sites/2/2026/09/198-3_photo01.jpg)
図1 デジタル印象採得装置「Accuios」。人間工学に基づいた使いやすいデザインで、開口量の少ない患者さんでも、無理なく口腔内をスキャンできる。-
![[図] スキャンチップの説明](/academic/dentalmagazine/wp-content/uploads/sites/2/2026/09/198-3_photo02.png)
図2 スキャンチップはラウンド形状を採用。開口量の少ない患者さんでも歯肉に接触した際に痛みを伴わずに遠心部までスキャンが可能。先端部分はガラスウィンドウがないオープンタイプなので、大臼歯に被せてスキャンすることができる。 -
![[図] 形状の説明図](/academic/dentalmagazine/wp-content/uploads/sites/2/2026/09/198-3_photo03.png)
図3 人間工学に基づき、コンパクトでペングリップしやすい形状を実現。重心位置を中心軸よりもずらした位置に設定することで、スキャンの際に術者の操作が楽で疲れにくい。 -
![[図] スキャンチップを180°回転](/academic/dentalmagazine/wp-content/uploads/sites/2/2026/09/198-3_photo04.png)
図4 スキャンチップを180°回転させることで、使用しやすい持ち方でスキャンすることができる。 -
![[図] てエアブロー方式(右側)](/academic/dentalmagazine/wp-content/uploads/sites/2/2026/09/198-3_photo05.png)
図5 「Accuios」では、ミラーの曇り止め対策としてエアブロー方式を採用(右側)。ヒータ方式と比較して、ヒータや熱伝導体が必要なく、スキャンチップの費用を抑えることができ、歯面の乾燥も期待できる。
まさにゼロからのスタート様々な障害を越えて
反本 私はレンズの設計などを行う光学系の技術者です。「Accuios」には高品質のレンズが複数使われています。高い精度を出すためには、このレンズの表面に汚れが付いてはいけませんし、組み立ての際に指紋が付いたりするのは問題外です。しかし、当初弊社には、そのようなデリケートなレンズを組み立てるための設備がありませんでした。私はそうした設備の立ち上げから携わり、レンズに汚れをつけないためにどんな器具を使えば良いかなどを検討したり、組み立ての際に、レンズの接着剤が少しはみ出してしまうことや、所定の位置にレンズを入れようとして斜めにズレてしまうというような初歩的なトラブルを数多く経験しました。そうした課題を製造部門のメンバーと共に試行錯誤しながら潰していくことで、ようやく高精度の画像が安定して提供できる品質に辿り着きました。
田中 そもそも社内どころか国内でも製造ノウハウがないハードウェアだったことに加えて、高性能がゆえに製造が難しいとされる共焦点法をあえて選択したことで、より設計開発の難易度が高まりました。こうした機構をハンディサイズのIOSに組み込むには、精密なレンズ構成と光路設計が必要で、製造コストや精度維持が課題となります。実は後発のIOSは、共焦点法ではなく、比較的低コストで製造できる三角法を採用することが多いようです。弊社でも三角法は検討対象になりましたが、性能の高さと死角が生じないというメリットから、最終的に共焦点法を採用したという経緯がありました。
北道 確かに共焦点法を用いたIOSは、非常に高精細なデータが得られる反面、光学設計の難しさが製造のハードルを上げていますね。
田中 三角法だと、部品が少なくて済むので小型化・軽量化には向いているのですが、私たちがこれまで培ってきた高精度の画像生成のノウハウを活かしたいという思いから、あえて共焦点法でいこうという結論になりました。
北道 そのあたりのモリタ製作所のこだわりは、歯科用CBCT開発のエピソードと似ていますね。
田中 そうかもしれません(笑)。ピント合わせのために直径十数ミリのレンズを動かしていくのですが、本体を小型化するためにはレンズの可動域を短くする必要がありました。設計の際には、高速で駆動する電気シェーバーや超音波スケーラーの駆動モーターなども参考にしました。しかし、実は高速でわずかに動かす構造はさほど難しくありませんでした。一方、IOSのレンズ程度の大きさのものをスムーズに動かす他の例が見当たらず、試作やシミュレーションを繰り返し、少しずつ開発が進行していきました。設計がある程度固まってからも、製造現場から 「構造が複雑で量産が難しい」という声が上がり、 その対応を続けているうちに、あっという間に時間が過ぎていました。
北道 最初に試作機を見せてもらったのが確か2020年頃だったと思います。
田中 その頃は改良の余地がたくさんありましたね。このレンズ駆動用モーターの開発ポイントは無振動、無騒音、超長寿命でしたが、目指したレベルに到達できたのは、つい最近のことです。
北道 実際に試作品を使用させてもらいましたが、音も静かで振動もほとんど気になりません。振動が患者さんに伝わることが少なく、スキャン時の患者さんの不快感は大幅に軽減されると思います。
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