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198号 AUTUMN 目次を見る

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Clinical Report

小児歯科プログラムの組み立て方

宮崎県宮崎市 医療法人育成会 矯正・小児ひまわり歯科 歯科衛生士 青木 由美子/坂本 佳奈美/理事長 柿崎 陽介

キーワード:MFT/成長の伴走者/口腔機能実地指導料

目 次

はじめに

当院の小児歯科プログラムでは、患者の成長段階にあわせ、「形態」と「機能」の両面から、段階的なアプローチを行っている。
今回は、このプログラムの根幹をなす継続的なメインテナンスのための「オリジナルサブカルテ」と成長段階に合わせた「口腔成育へのアプローチ」「MFTの実際」について紹介する。

継続的な記録 ~オリジナルサブカルテ~

2歳から通い続けてくれている患者が、メインテナンス時に結婚を報告してくれた。
乳幼児期から学童期、そして成人へと至る成長の過程を、乳歯萌出から永久歯列完成までの口腔内を通して見守ってきたからこそ、自然と込み上げる感情があった。当院では、この成長の歩みを「オリジナルサブカルテ」(以下、サブカルテ)に記録し、小児歯科プログラムの軸としている。記録を振り返ることで当時の情景や会話がよみがえり、患者とともに歩みを共有できるメインテナンスの時間は、日々の診療における私の密かな楽しみとなっている。歯科医院が「成長の伴走者」となるために、その実現を支えるためのツールが当院のサブカルテである(図1)。

サブカルテの構成と運用

サブカルテはチェックリスト形式とし、必要な情報を漏れなく記録できるよう設計されている。記録項目を統一することでスタッフ間の共通認識を高め、一貫した対応につなげている。
1. 主訴
主訴の確認とともに、年齢および来院日を記録し、「現在の課題」を把握する。小児は成長や生活環境の変化により主訴が来院ごとに変化しやすく、また言語化が難しい場合も多いため、保護者の観察や不安も重要な情報源として記録する。
2. 口腔内診査
歯式・咬合・清掃状態・歯肉・着色などを基本項目とし、歯科衛生士と歯科医師のダブルチェック体制で評価する。加えて口呼吸や低位舌、異常嚥下癖など口腔機能も含めて多角的に診査し、将来を見据えた予防的評価を行っている。生活背景は問診により把握し、歯科医師と連携して対応する。
3. 成長発達の状況
口腔内写真やスナップ写真撮影(図2)に加え、身長・体重を継続的に記録し、口腔機能発達不全症の指標でもあるカウプ指数にも活用している。全身の成長発達と口腔機能は密接に関連しており、肥満傾向の背景に咀嚼機能の未発達(早食い・丸飲み)が関与している場合もある。これらを日常の食生活と結びつけて説明することで、保護者の理解を深めている。
4. 現症の把握
主訴に関連する情報の記録。診療時の様子や生活背景も含めて記録し、一貫した対応につなげる。また、定期的なメインテナンス時には学校生活や趣味などの日常の情報も記録し、患者理解と信頼関係の構築に活用している。小児の場合、当日説明した保護者の情報(父・母・祖父母など)も含めて記録しておくと、次回以降の説明もスムーズになる。これらの記録の積み重ねにより、成長過程を患児・保護者と共有できるようにしている。
5. 治療計画
治療が必要な場合は、歯科医師と歯科衛生士で相談し、患児の特性を考慮しながら保護者の理解と同意を得て治療を進めるが、基本的に4歳以降としている。さらに、口腔機能の状態も確認し、口唇閉鎖不全などがみられる場合には、年齢に応じた後述するMFTなどを提案する。食いしばりや指しゃぶりなどの習癖にも着目し、必要に応じて歯並び・噛み合わせへの介入も行う。
6. 口腔衛生指導
家庭でのブラッシング状況やフロスの使用状況、歯磨剤の種類、食習慣、ならびにこれまでの提案内容について確認し、状況把握と共有を行っている。特に口腔衛生の状況がよくない場合には、その原因を患児、保護者と一緒に考え実行可能な改善策を提示する(図3)。
7. メインテナンスの管理
メインテナンス間隔は概ね3~4か月ごととし、リスクに応じて調整する。隣接面う蝕の発生が増えてくる4歳頃からは、咬翼法X線撮影も行う。

  • [写真] サブカルテ
    図1 主訴、口腔内所見、生活背景を継続的に記録し、成長過程を共有するサブカルテ
  • [写真] 口腔内写真とスナップ写真
    図2 口腔内写真とスナップ写真。継続的な記録により、口腔内状態や咬合の変化を評価する。

口腔成育へのアプローチ

私たちは不正咬合の背景にある原因を、患者や保護者と共に共有する。不正咬合は、遺伝的要因だけでなく、口呼吸、低位舌、異常嚥下癖などの口腔習癖が関与することが多く、矯正後の後戻り予防や長期安定のためには、これらへの対応が不可欠である。そのため、十分な理解と納得のもとで主体的な取り組みにつながるよう支援している。また、MFTの継続やメインテナンスへの移行など、個々のリスクや家庭の状況に応じた選択肢を提示し、長期的視点での管理を行っている。
1. 早期発見と気づきの共有
乳歯列が完成する4歳前後から、必要に応じてトレーナー型装置の活用(図4)やMFTを提案する。日常の観察から得られる小さなサインを保護者と共有し、将来の歯並び・噛み合わせに影響を及ぼす可能性のある習癖や機能不全への早期の気づきを促す。
2. 矯正治療のタイミング
上下前歯および第一大臼歯の萌出を確認した段階で、歯科医師の診断に基づき、矯正治療の必要性について保護者を交えて説明を行う(図5)。
3.「形態」と「機能」へのアプローチ
矯正治療を行う際も、口腔機能発達不全症に関する診査を実施する。矯正装置による治療と並行してMFTを行うことで、歯並びという「形態」と、正しい姿勢・呼吸・咀嚼・嚥下の「機能」の両面から、生涯にわたるお口の健康の土台を構築していく。

  • [写真] 指導の様子
    図3 保護者同伴のもと、口腔衛生の状態を説明しながら指導を行う。
  • [写真] トレーナー型装置
    図4 4歳前後から、必要に応じてトレーナー型装置の活用についてお伝えする(マルチファミリー:(株)JM Ortho)。
  • [写真] 説明用ニュースレター
    図5 矯正治療の目的・方法・期間・費用をわかりやすくまとめた説明用ニュースレター

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