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198号 AUTUMN 目次を見る

記事の中でご紹介している製品は制作当時の内容になります。
現在は販売していない製品もございますのでご了承ください。

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"おいしい、もぐもぐ、ごっくん"食べる喜びをお届けするため「食品」「医療機器」「口腔ケア」の3つの事業を展開

取締役会長 竹内 豊/開発部 商品開発3課 専任課長 武田 博之/営業部 東日本営業課 関東・山梨エリア 専任主任 島田 卓也/介護食シェフ 在川 一平/東京科学大学 大学院医歯学総合研究科 医歯学専攻 老化制御学講座 摂食嚥下リハビリテーション学分野 教授 戸原 玄/福岡県北九州市 医療法人 幸縁会 戸畑あすか歯科クリニック 理事長 濵口 真臣

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目 次

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"おいしい、もぐもぐ、ごっくん"食べる喜びをお届けするため
「食品」「医療機器」「口腔ケア」の3つの事業を展開

株式会社フードケアでは、創業以来、「QOLを支える摂食嚥下のトータルケアカンパニー」になることを目指して、介護医療食品だけでなく、医療機器や口腔ケア事業を展開されています。『デンタルマガジン』では、医療機器「ジェントルスティム・EX」を軸に、その背景にある企業理念や製品開発へのこだわりなどについてご紹介します。

摂食嚥下のトータルケアカンパニーを目指して
フードケア設立の想いから、「ジェントルスティム・EX」の開発・営業に携わる方々に、今後の展望について伺いました。

[写真] 竹内 豊さん
取締役会長
竹内 豊さん
口から食べる意欲、食べる喜びをいつまでも

製薬メーカーや病院勤務を経て、大手食品メーカー在籍時に介護用食品を開発・販売する企業内ベンチャーを立ち上げました。今から36年程前ですから、まだ介護食の分野では草分け的な存在で、特に重症心身障害を患う方に向けた食品を扱う機会がありました。
転機となったのは、とろみ調整食品の食品開発を手がけていた時です。昭和大学歯学部の金子芳洋教授(当時)との出会いがあり、それ以来、摂食嚥下障害の分野に本格的に取り組むことになりました。当時は摂食嚥下障害の認知度は低く、金子教授をはじめとした専門医が立ち上げた「日本摂食嚥下リハビリテーション学会」も数百人の会員規模からスタートしました。しかし今では、一万人を超える大きな組織になっています。その背景として、当時(1996年頃)は15%程度だった高齢化率は、現在は約30%と予想を超えた速さで進んでいることが挙げられます。
1997年のフードケア創業当時に開発した製品は、当時としては珍しい、冷水でもとろみがつくとろみ調整食品や、ふやかす手間を必要としないゼリーの素で、それらは今でも弊社の看板製品となっています。従来は片栗粉や葛粉でとろみをつけていましたが、ベッドサイドで熱源を使うのは危険ですので、沸騰させなくても使えるこれらの製品は、患者さんや医療関係者にとって、大きな驚きだったのではないでしょうか。
フードケアという社名の由来は、これからの超高齢社会を見据えて「食べる=フード」を「支える=ケアする」という意味を込めて名付けました。また、経営理念“おいしい、もぐもぐ、ごっくん”は、社員全員にヒアリングして考案したフレーズで、口から食べる意欲、食べる喜びをいつまでも持ち続けていただきたい、という想いを表しています。
摂食嚥下のトータルケアカンパニーを目指すためには、食品の展開だけでは、摂食嚥下障害に苦しむ方々をサポートすることはできません。食物残渣やプラークが口腔内に多く見られる状態だと、いくら私たちの食品を使用しても、誤嚥性肺炎のリスクは常につきまといます。そこで、弊社では口腔内を清潔に保つための口腔ケア製品の開発・販売にも着手しました。加齢や疾病により、摂食嚥下機能が低下している方においては、その状態を放置していると、低下の度合いは加速度的に進行してしまいます。その進行を少しでも抑えるためには、リハビリテーションが必要です。そのため弊社では、摂食嚥下機能の維持・向上に寄与する目的で、医療機器分野への参入を決めました。

[写真] 1997年創業の株式会社フードケア
1997年創業の株式会社フードケア。"おいしい、もぐもぐ、ごっくん"は、経営理念として2017年に掲げられた。2026年2月には竹内祐也氏が代表取締役に就任し、新たな挑戦を続ける。

医療機器「ジェントルスティム」は、摂食嚥下障害の治療について、産学連携での研究成果を具現化し、開発・製品化されました。2015年に医療機器認可を取得し、フードケアより発売。そして発売から10年となる2025年に、よりコンパクトで使いやすさにフォーカスした「ジェントルスティム・EX」を新たに上市しました。
医療従事者の方々には、ぜひ現場の声をお聞かせいただきたいと思っています。実際に使用される患者さんは自ら声を上げることができないケースも多いため、医療従事者の方がその声を代弁してくださることで、より良い製品開発につながります。私たちフードケアの強みは、専門家との共同研究によるエビデンスの蓄積に基づく製品開発です。これからも現場の声を大切にしながら、摂食嚥下リハビリテーションの分野を発展させていきたいと考えています。

[写真] 武田 博之さん
開発部 商品開発3課
専任課長
武田 博之さん
製品開発
皮膚抵抗が少ない干渉波に着目
新発想のリハビリテーション機器

干渉電流型低周波治療器「ジェントルスティム」は、2015年に医療機器認可を取得・発売を始めました。その当時、私は別会社で、この初代「ジェントルスティム」の開発を手掛けていましたが、2016年にフードケアに入社し、引き続き製品開発を担当しています。
電気刺激装置は、筋刺激の機器というイメージが一般的ですが、「ジェントルスティム」は感覚刺激のための機器です。感覚レベルの刺激に効果的な干渉波電気刺激を採用しています。干渉波電流を採用することにより、微弱な刺激でも深層部に届きやすく、体表皮膚面での痛み(不快なピリピリ感)が少ないことが特徴です。
医療現場では、原理が不明なものやリスクが考えられるもの、効果に対する根拠がないものは使えません。そのために、効果のメカニズムに関心をお持ちの先生と共同で基礎研究や動物実験を行い、有効性を実証するための臨床研究を進めていきました。
さらに、ゲルパッド電極の開発も試行錯誤の連続でした。経皮的に電流を流すため、導電性ゲルの電極を使いますが、薬機法が引用しているJISの認証基準の範囲内で設計を工夫しています。また、ゲルパッドの粘着力についても、ある程度繰り返しの使用に耐えられる原料で何度も試作しました。
発売後に苦労したのは、機器を使った摂食嚥下における診療・治療・リハビリテーション手技への導入と認知という部分でした。機器を製造し、医療機器の認可を取得しただけでは完結せず、機器を使った診療やリハビリテーションの方法を白紙の状態から現場の方と構築していく必要がありました。作用機序について説明するために、私もよく現場に足を運びました。
初代「ジェントルスティム」は、産学連携での研究内容に基づいて製品化をしましたが、実際に使用される医療現場から上がってくる機能への要望を反映させ、モデルチェンジとして「ジェントルスティム・EX」の開発を行いました。主な変更点として以下が挙げられます。
① 複数の治療モードを搭載:治療目的や使用状況に適応したモード設定を追加し、臨床で求められる治療モードが選択可能になりました。
②[拡張モード]を装備:「ジェントルスティム」で培われた感覚刺激療法に特化した治療モードに加えて、最大電流値や出力パターンを変更した[拡張モード]も装備しました。より幅広く電気刺激を活用していただくことが可能です。
③ リチウムイオン電池を採用:1回の充電での連続使用時間が大幅に延長され、訪問診療などの長時間使用に対応可能になりました。
「ジェントルスティム」と同様に、微弱な電気刺激はほぼ痛みが無いため、患者さんの負担が少なく、電気刺激をしながら他の訓練もできることが強みで、ほとんどのリハビリテーションでは訓練と併用されています。
歯科の領域でも摂食嚥下に対する関心が高まっており、実際に歯科医院や病院の歯科に導入いただくことが増えています。歯科での使用例としては、訪問診療で使われることが多く、例えば、口腔ケアを行っている間に並行して電気刺激ができるので、非常に便利だという声をいただいています。

  • [図] 干渉波刺激療法
    干渉波刺激療法とは、中周波の刺激を適応しながら、治療部位には低周波数帯の干渉周波数を利用する刺激療法で、皮膚刺激が少なく効率的な電気刺激が可能となる。
  • [写真] 左が「ジェントルスティム」、右が後発品の「ジェントルスティム・EX」
    左が「ジェントルスティム」、右が後発品の「ジェントルスティム・EX」
  • [写真] ジェントルスティム・EX
    「ジェントルスティム・EX」は治療目的や使用状況に適応した治療モードの選択が可能になった。
[写真] 島田 卓也さん
営業部 東日本営業課
関東・山梨エリア
専任主任
島田 卓也さん
営業部
食品・口腔ケア・嚥下リハビリテーションの3本柱で高齢化社会をトータルサポート

東京都内の病院や介護施設の営業を担当しています。摂食嚥下の領域においては、多職種の先生方が連携されていることが多く、主にリハビリテーション科医の先生や言語聴覚士、管理栄養士の方々にお会いする機会をいただいております。また、近年弊社では口腔ケア製品にも力を入れていることから、歯科の先生方への訪問の機会も増え、その際には「ジェントルスティム・EX」も紹介させていただいています。
「ジェントルスティム・EX」は、感覚刺激へアプローチをする医療機器です。他社にはあまりない製品設計のため、機能を理解いただき、歯科領域でも導入していただくことが増えました。「ジェントルスティム・EX」をご使用いただいたことで、「食べるスピードが上がった」「食べる量が増えた」「ペースト状から固形物にステップアップした」などの声をいただいています。また、高齢の患者さんの場合では、摂食嚥下機能が改善されることで、食べることが苦痛ではなくなり、チャレンジする意識を高めることができると伺っています。実際に変化が見られたという声の数々は、私の中で大きなモチベーションになっています。

[写真] フードケアが販売する主要製品
フードケアが販売する主要製品。「とろみ調整食品」や「栄養補給食品」の食品、摂食嚥下リハビリテーションに使用する医療機器、「口腔ケアジェル」などの口腔ケア製品の3つの事業を展開する。

嚥下は口に入れる直前から飲み込むまでの、たった数秒のことですが、人がより良く生きるために非常に重要な機能であること。また、その機能はリハビリテーションで改善できる可能性があること。そして「ジェントルスティム・EX」は、その一助を担える製品であると考えています。 これから高齢化が進む中で、摂食嚥下障害はますます増えていくことが想定されます。歯がない、義歯が合わずに噛めなくなると、口の中で食べ物をまとめることができず、摂食嚥下機能の低下につながっていきます。
今後、さらに在宅医療や訪問歯科が重要になっていく中で、「ジェントルスティム・EX」が歯科の先生方にとっても大きな武器としてご使用いただけることを期待しています。口腔機能や摂食嚥下機能の低下、そしてその延長で食べられない方へ、フードケアは食品や口腔ケア、嚥下リハビリテーションの三本柱でお役に立つことができます。歯科の先生方がこの分野にさらに注力される際には、ぜひ私たちも惜しみなくサポートさせていただきたいと考えています。

フードケアに勤務する介護食シェフの方にお話を伺いました

[写真] 在川 一平さん
介護食シェフ
在川 一平さん
フードケアにおける「介護食シェフ」の役割

介護食を「簡単に」「美味しく」作れるよう日々研究しています。調理を通じて、作る人も食べる人も笑顔にできるよう、全国各地で調理実習などの活動を行っています。

嚥下調整食とは

嚥下機能の低下に応じて、食材の形態やかたさを調整し、安全に飲み込みやすくするための食事形態です。

介護食シェフ
全国に美味しい介護食が食べられる場を拡大したい

10年間、とろみ調整食品などの営業をしながら、一般家庭や施設の食事を嚥下調整食と結びつけられないかと考え、2017年から介護食シェフとして活動を始めました。調理実習やオンラインセミナーを通じて、介護食の認知向上に努めてきました。また、朝日大学の谷口裕重教授との連携により、栄養士や調理師だけではなく、歯科医師や歯科衛生士、看護師の方々も受講対象としてきました。また、現社屋が建設された約10年前にキッチンスペースが併設され、お客様を招いたり、オンライン配信の拠点として活用しています。日々の業務としては、外部セミナーや研修会等のレシピ考案、あるいは商品リニューアル並びに新製品の開発にも調理をする立場で関わっています。
コロナ禍前には、胃瘻のお子さんやご家族と一緒に注入食を使った外食イベントや、大人の患者さんが嚥下しやすいように調理したピザやお酒を初めて体験できる機会を提供し、ご家族からも感謝の声をいただいてきました。
嚥下調整食作りは、調理が難しいと思われてしまうことがありますが、実はレストランのように美味しい料理を作る技術は必要ありません。
従来の嚥下調整食は、全てミキサーにかけてしまうため、食感や見た目が常食と比べると感じにくくなり、「何を食べているか分からない」「食事がつまらない」、という問題があります。嚥下調整食は、その見た目と食感を再現することが重要で、前提として美味しい料理がありさえすれば、それを再構成すれば良いのです。例えば、美味しいハンバーグを細かくして、温かくても固まる弊社製品のゼリーの素を使って成型します。そこにソースを添えることで、見た目がハンバーグそのもので、温かく食感もあり、安心して「食べること」を楽しんでいただける料理に生まれ変わります。そういった、一般的な調理との概念の違いをもっと多くの方々に知っていただき、介護食作りのハードルを下げるのが、介護食シェフの役割だと考えています。
10年前と比べて、歯科医療従事者の方が介護食に高い関心をお持ちであることを実感しています。フードケアの取り組みを知っていただくことをきっかけに、嚥下の分野でお困りのことや、サポートを必要とされる状況があれば、喜んでお手伝いさせていただきたいと思っています。

  • [写真] シリコン型
    いかに手間暇をかけずにおいしく調理できるかを追求するのが在川さんのポリシー。それぞれの形に似せたシリコン型で形を作っていく。
  • [写真] ゼリー状にしたデミグラスソースを表面にかけていく
    よりハンバーグらしさを出すため、ゼリー状にしたデミグラスソースを表面にかけていく。
  • [写真] 出来上がり
    冷凍ブロッコリーをミキサーにかけゲル化剤を加えたものと、トマトジュースにゲル化剤を加えたミニトマトを添え物にして出来上がり。

咽頭感覚の神経に作用し、皮膚刺激が少なく効率的な電気刺激が可能
摂食嚥下リハビリテーションの現場で、「ジェントルスティム」をご使用いただいている先生方にお話を伺いました。

[写真] 戸原 玄先生
東京科学大学
大学院医歯学総合研究科
医歯学専攻 老化制御学講座
摂食嚥下リハビリテーション学分野
教授 戸原 玄先生
[写真] 戸原 玄先生
患者さん一人ひとりに合った治療プランの選択肢として

約25年間にわたって摂食嚥下障害の分野に取り組んでおり、特に在宅医療に重点を置いて、現在約100人の患者さんの訪問診療を行っています。
基本的に、歯科医師または歯科衛生士を含めた3人のチームで週4日を訪問診療に充てていますが、1人の診療は30~40分程度、移動時間もかかるため、1日に訪問できるのは3人ほどになります。患者層については、9割以上が高齢者で、その他は難病患者や交通事故による後遺症患者、小児患者です。
高齢者の場合、認知症やパーキンソン病などにより意思疎通が困難な患者さんも多いのですが、事前資料にとらわれず、先入観を持たずに患者さんに接することで、機能改善が見られるケースが多いと感じています。
リハビリテーションは従来のトレーニング中心の方法ではなく、患者さんの生活環境や服薬状況を「整理」することを重視しています。訪問して患者さんの普段の生活を見ると、多くの方が危険回避のために必要以上の行動制限をされていることや、不要な薬の服用や栄養不足の状態にあることがわかってきました。
これらの基本的な生活を整えるだけで、摂食嚥下機能が改善されるケースが多いのですが、中には生活環境を整えただけでは改善しない場合や、自力での運動が困難な患者さんもおられます。特に、感覚が鈍っている不顕性誤嚥がみられる方に、「ジェントルスティム」を使用しています。
実際に使用した印象としては、半数程度の方に効果を感じましたが、「嚥下が前よりスムーズになった」、「ジェントルスティムを使うと、喉の感覚が良くなっている感じがする」、などと患者さんご自身が報告してくださる場合もあります。また、操作が簡単という点から、訪問時に使用して効果が感じられた患者さんで、継続的な使用が可能な場合は、製品の貸し出しをお勧めすることもあります。
電気刺激療法の中でも、筋肉刺激によって筋肉の動きを改善し、ほぐすことができる機器は多数ありますが、咽頭感覚の神経に作用する干渉波刺激療法ができる機器は非常に少ない、という点に「ジェントルスティム」の存在価値があると思います。また、後発品の「ジェントルスティム・EX」は、操作がよりシンプルでコンパクトサイズになっているので、特に訪問診療の持ち運びの際に便利だと思います。今後は、例えば電極レスの実現など、さらに手軽で使いやすくなることに期待しています。

[写真] ジェントルスティムを利用する様子
「ジェントルスティム」は、唾液や食物が気管に入っても防御反応が働かない不顕性誤嚥がみられる方への、リハビリテーションの一助として活用している。

開業医の先生方へのアドバイスとしては、すぐにハウツーに頼りがちな方が多いのですが、それよりも、まずは患者さんの話をよく聞いて、患者さんにできることを考え、それを基に治療方法を検討していただきたいと思います。こちらからリハビリテーションの選択肢を挙げて、それに対して患者さんがやる気を見せてくだされば、実際に試していただきます。そして、次回訪問時に患者さんから積極的なフィードバックがあれば、「これからも続けていきましょうね」と励ますなど、患者さんの意思を伺い、尊重することを重視しています。
特に、摂食嚥下機能の感覚が鈍っている患者さんに対するアプローチの手段として「ジェントルスティム」の存在を知っておくことは、患者さんに提案するリハビリテーションの選択肢の引き出しを増やす意味でも、とても有効ではないでしょうか。

[写真] 濵口 真臣先生
福岡県北九州市
医療法人 幸縁会
戸畑あすか歯科クリニック
理事長 濵口 真臣先生
[写真] 濵口 真臣先生
訪問診療における「時間の壁」を良い意味で打破してくれる
リハビリテーション機器

当院では、「最後まで人として生きるための機能を守る」ことを念頭に、高齢者・有病者の歯科医療には特に注力してきました。
摂食嚥下リハビリテーションは、実はとてもシンプルで「食べる力を取り戻す」だけのことなのです。ただ、1つ難しいのは、「病院でできるのに自宅ではできないこと」です。そこで当院では、「生活の再構築」ということを行っています。例えば、どんな姿勢で食べるか、誰がどのように介助するのか、何をどの順番で食べるか。ここまで決めないと意味がありませんので、患者さんだけではなく、ご家族や介護職を含めたチーム全体で診ていきます。その中でさらに難しいのが、意思疎通のできない人に対してどのように取り組んでいくか、という点です。「ジェントルスティム」は意思疎通に影響されることなく使用できるところが大きなメリットで、私たちが訪問診療の現場で本当に困っていたところにアプローチできるという意味においても、とても有効なツールだと感じています。
また、訪問診療に取り組んでいると、必ず「時間の壁」にぶつかります。丁寧にリハビリテーションを行いたくても、時間や人員確保の制約が必ずついてきます。そこで考えたのが「人の手を超えたリハビリテーション」でした。私たちは「ジェントルスティム」を単なる医療機器ではなく、「時間を増やしてくれる装置」と捉えています。「ジェントルスティム」で摂食嚥下のリハビリテーションを行っている間に、私たちは本当に人の手が必要とされる部分に集中することができるのです。
使用して感じたことは「患者さんの反応が見える」ことです。成果が把握しづらいリハビリテーションが多い中で、「ジェントルスティム」は、舌の動きが変わる、嚥下のタイミングが整うといった変化が、その場で目に見えてわかります。また、使用するスタッフの理解が早いことも「どのスタッフが行っても同じものを提供できる」という点で、チーム医療との相性も良く、訪問診療の現場でとても助かっています。
施術した患者さんの反応として最も多いのが、「食べることが怖くなくなった」というものです。中でも、忘れられないのは、「また家族と同じ食事が食べられた」という言葉を聞いた時です。食事は単なる栄養摂取の機会ではなく「人生のイベント」ですから、そこにカムバックできたということは、機能回復を超えて、人生の一部を取り戻すことができたということに他なりません。同時に、歯科はそのような素晴らしい瞬間に関わることができる尊い仕事だとあらためて気づかされました。
これからの歯科医療は、「元気で長生きしたい」「最後まで自分の口で食べたい」「できるだけ自分らしくありたい」という、新たなニーズに応えられるかどうかが課題です。当院の取り組みもまだ道半ばですが、間違いなく言えることは、「行動した医院から変わっていく」ということです。これからも皆さんとともに、歯科医療をより良いものに変えていければ嬉しく思います。

  • [写真] 訪問先でVE(嚥下内視鏡検査)を行う濵口理事長
    訪問先でVE(嚥下内視鏡検査)を行う濵口理事長。誤嚥や咽頭部の食物の残留、声帯の動きを確認し、食事形態や姿勢を評価する。
  • [写真] 患者さんと先生
    「ジェントルスティム」は、摂食嚥下機能の回復だけでなく、人生の一部を取り戻す一助にもなる。
  • [写真] 摂食嚥下リハビリテーションの様子
    口腔ケアを行いながら摂食嚥下リハビリテーションを行えることが、「ジェントルスティム」のメリットの一つ。

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