190号 AUTUMN 目次を見る
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創業75年を迎えた「実習模型のニッシン」“ものづくりの最前線”をレポート!
目 次
- ≫ [製造グループ] ものづくりを通した人づくりに注力
- ≫ [模型企画チーム] 常に手作業の限界を見極めながら
- ≫ [模型製造チーム] 効率化が進んでも最後は人の手で
- ≫ [開発チーム] デジタルシミュレーター事業の展開
- ≫ [営業グループ] Dental Education Companyとして
- ≫ [模型製造チーム] 最終工程を担う気概を持って
- ≫ [生産管理チーム] 製造負荷と納期のバランスを調整
- ≫ [品質保証チーム] 常に現場目線で管理・改善を実施
- ≫ 模型製造の模様を見学


創業75年を迎えた
「実習模型のニッシン」“ものづくりの最前線”をレポート!
創業以来、“自由な発想で問題解決”の姿勢であらゆる要望に柔軟に対応
開発・設計・製造・営業に携わる方々に、ニッシンの軌跡や“ものづくり”への思い、今後の展望について伺いました。
![[写真] 製造グループ 砂田 智司さん](/academic/dentalmagazine/wp-content/uploads/sites/2/2024/09/190-11_staff01.jpg)
製造グループ
砂田 智司さん
製造グループ
ものづくりを通した人づくりに注力
当社は、「日進歯材研究所」として1948年に京都で創業しました。社名は『Up To Date(日々進取の気性)』に由来し、古い慣習に捉われず日々創造に取り組んでいます。また、技術の向上だけでなく、「ものづくりを通した人づくり」も目標としています。その精神は、1973年に「株式会社ニッシン」と社名変更してからも不変の信条となっています。
歯科模型の製造は、当社が義歯床用樹脂や人工歯の製造に携わってきた技術と経験を有していたことに端を発します。その後、1957年頃から歯科大学などを通じて歯科教育模型の製作依頼をいただくようになりました。実習用模型は、① 歯や顎の解剖学的理解を三次元で行いたい② 臨床実習までに模型で実習したい③ 学内での教材用の模型作りの手間が解消されるなどの要望を解決する、当時としては画期的なツールでした。
その頃、すでに海外では模型を活用した実習が行われており、国内では教育模型の製造を担う企業が当時ほぼなかったことから、当社が模型の製造方法の研究に着手しました。
![[写真] 今年入社したスタッフが自社の模型を使って研修を受けている様子](/academic/dentalmagazine/wp-content/uploads/sites/2/2024/09/190-11_photo02.jpg)
今年入社したスタッフが自社の模型を使って研修を受けている様子。約半年かけて製造部門などを体験し、歯科の知識や業務の役割などを学んでいく。
歯や顎骨は有機的で複雑な形態をしているため、製造には困難を極めましたが、1960年にエポキシレジン製模型の第1号を大阪歯科大学補綴学教室に納入しました。
この当時から、当社では大学など教育機関からの依頼をもとに製造を進めるスタイルをとっていて、使用される先生方に評価をいただきながら、用途に適したものを安定した品質とコストで提供することを念頭に、事業を展開してきました。
当社の製品は約9割がオーダーメイドです。近年は北米や南米、中東など海外からの注文が増え、海外売上高比率も高まっています。
スタッフの中には、歯科技工士や歯科衛生士の資格を持つ者もいますが、大半が歯科以外の出身者です。そのため、入社後は歯科に関する専門用語・社内用語を徹底的に習得し、模型製造や模型企画などの部門で研修を受けながら全体の流れや各部署の役割を把握するなど、基礎からしっかり学びます。
![[写真] 製造グループ 模型企画チーム 企画セクション 松岡 侑平さん](/academic/dentalmagazine/wp-content/uploads/sites/2/2024/09/190-11_staff02.jpg)
製造グループ
模型企画チーム
企画セクション
松岡 侑平さん
模型企画チーム
常に手作業の限界を見極めながら
模型企画の仕事は、営業から共有されたお客様の要望を設計の視点で検証し、実現可能か評価するところから始まります。そして、設計が決まれば、CAD装置などを使って、さまざまな模型の原型を作製します。新しい材料や製造手法が発生する場合は、製造の手順書を作成することも設計の役割です。
量産できなければ意味がないので、どんな設計も「量産できること」を前提に行います。当社の製品には完成前の調整など、手作業のプロセスも多いのですが、人間の手作業には限界がありますから、その限界はどこか、製造と相談しながら設計を進めていくケースもよくあります。いずれにしても実習や試験など、お客様の重要な場面で使用される製品であることを忘れず、なるべく均一な品質を保てるよう細心の注意を払いながら設計を行っています。
![[写真] CAD装置を駆使して設計中の松岡さん](/academic/dentalmagazine/wp-content/uploads/sites/2/2024/09/190-11_photo03.jpg)
CAD装置を駆使して設計中の松岡さん。歯科技工士の資格を持つ松岡さんを含め、現在4名のスタッフが模型設計を行っている。
特殊な形状の場合は具現化することが非常に難しいため、要望をしっかり汲み取ることが大切で、先生方ご自身で絵を描いたり、手作りの模型を作ってイメージを伝えてくださる方もおられます。それをもとに何度もやり取りを重ねて完成を目指します。
今後は、データ上では再現できても技術的に再現が難しいテーマに注力したいと思っています。そのため、3Dプリンターを活用した開発手法を学ぶセミナーなど、外部の研修にも積極的に参加し、知識・技術のさらなる向上を図っているところです。
![[写真] 製造グループ 模型製造チーム 仲 真秀さん](/academic/dentalmagazine/wp-content/uploads/sites/2/2024/09/190-11_staff03.jpg)
製造グループ
模型製造チーム
仲 真秀さん
模型製造チーム
効率化が進んでも最後は人の手で
「次工程はお客様」ということを常に意識し、お客様のお手元に製品が届くところまでイメージしながらものづくりを行っています。
私たちは、自社の製品を単なる工業製品ではなく工芸品だと捉えています。たとえば、模型はさまざまな部品を組み合わせて製作しますが、ほんの少し部品が変形しているだけで咬合の具合が変わってしまうこともあり、必ず同じ形ででき上がるということはありません。人の手で調整し、補正しながら製品としての品質を安定させています。
そうした技術的なスキルを当社では、①経験がある/②指導者のチェックを受けながらできる/③単独での作業に加え検査までできる/④指導までできる、という4段階に分け、スキルに見合った役割分担を行いながら、それぞれの能力発揮とモチベーション向上につなげています。
製造を取り巻く環境は年々変化し、昨今は人材の確保も難しくなってきています。ですから、今後は製造の現場でもデジタル化・機械化を進め、製造業として重要な要素Q(Quality:品質)、C(Cost:費用)、D(Delivery:納期)をバランス良く成立させながら、ものづくりを効率化するシステムを構築しなければならないと考えています。
ただ、どんなに作業を効率化しても最後は人の手で調整する、それが機械に置き換わることはなく、その技術こそが当社におけるものづくりの価値であると自負しています。
ものづくりは決して製造側だけで進めるものではありません。作り手である私たちと、使い手であるお客様が、より良いものづくりに向かって共走できるようなビジネスを、これからも強く推し進めていくつもりです。
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オートメーション化が進むなかで、ニッシンでは自社で製造する模型を工芸品と捉え、とことん手作りにこだわる。その意味では、携わるすべてのスタッフは、アーティストであり、クラフトマンとも言える。
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