190号 AUTUMN 目次を見る
キーワード:Check-Up歯ブラシ/歯磨剤との併用/着眼点とコミュニケーション
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はじめに
多くの口腔ケア用品がある中で個々の患者さんに適した口腔ケア用品を選択し口腔衛生指導(OHI)を行うことは歯科衛生士の大切な役割の一つであると思います。しかし、実際の臨床の場面では歯ブラシの選択が難しい、セルフケアが定着しない、歯磨剤の選択がわからないといった悩みも多いのが現実ではないでしょうか。これらの悩みを解決すべく、当院では効果が期待できる歯ブラシとして昨年発売のCheck-Up歯ブラシ(ライオン歯科材)(図1-1)を導入しました。本稿ではその活用事例を症例呈示しご紹介いたします。
特徴
最大の注目ポイントは①スーパーテーパード毛とラウンド毛を交互に植毛し、さらに毛先がフラットなので、隣接面はもちろんのこと、咬合面へのアプローチが可能であり、プラークをしっかり取り除くことができることです(図1-2)。次に②薄型ヘッドとスリムネックで臼歯部にも無理なく届き清掃効果が高まります(図1-3)。さらに③持ちやすく滑りにくいラバーハンドル加工で、さまざまな患者さんにも対応することができます(図1-3)。また、毛の硬さにはSとMがあり、歯肉の状態や炎症の有無、プラークの付着状態等を考慮し選択できます。
図1-1 Check-Up歯ブラシ(ライオン歯科材)-
図1-2 フラットヘッド。ラウンド毛とスーパーテーパード毛のダブル植毛 -
図1-3 厚さ3ミリの薄型ヘッドと握りやすいラバーハンドル
キーポイント
歯ブラシの選択は歯科衛生士目線での決定になりがちですが、患者さんが磨き心地よく感じ、かつ正しく使用していただかなければ効果も出ません。新人の頃の話ですが「勧められたから買ったけど実は使っていない」と患者さんから言われた苦い思いを筆者は経験しています。一方的な指導で患者さんの口腔内しか見ておらず、その背景や気持ちに寄り添った対応ができていなかったことが原因でした。口腔ケア用品の選択では、患者さんの気持ちや希望、好みなども考慮し「一緒に選ぶ」ことが大切です。つまり、どんな時でもコミュニケーションが大切であるということです。また歯ブラシを新しく交換したのなら、フォローアップは必要です。次回来院時には必ず口腔内観察(正しく使用できているか、プラーク付着状態、歯肉の状態)そして使用感も確認するよう心がけています(図2)。
図2 コミュニケーションを第一に。歯ブラシの変更後はフォローアップを行い、正しく使用できているか状態を把握する。
症例紹介
症例1:50代女性(図3)
SPTで来院。隣接面に歯石およびプラーク付着が確認できます。プラークが残っていることが度々あるため、DENT.MAXIMA(MS)(ライオン歯科材)を使用中でしたが、半年ほど歯ブラシの交換もせず毛先が劣化したまま使用を続けていました(図4)。また歯間ブラシも使用していましたが、同じく毛先にプラークが固まっている状態でした(図5)。歯ブラシの交換に関しては使用頻度や毛先の種類(ソフト・ミディアム・ハード)にもよりますが、約1か月を目安に当医院ではお伝えしています(注:あくまでも目安です)。歯ブラシ交換のタイミングでCheck-Up歯ブラシSを使用していただくことにしました。歯磨剤に関しては歯周病リスクや歯面着色もあるため、朝と就寝前のセルフケアには、Systemaハグキプラス EX(ライオン歯科材:図6)を、職場ではコーヒーを常飲しているとのことで、Brilliant more W(ライオン歯科材)をお勧めしました(図7)。使用から約2週間が経過し、ステインやプラークの再付着もなく良好な状態です。歯面には艶も出て患者さんは大変満足しており、現在も継続して使用していただいています(図8)。
症例2:30代女性(図9)
メインテナンスで来院。唇側・舌側にステインおよび歯石が多く見られます(図10)。今まで良好な状態を維持していたのに、なぜこのような変化が起きてしまったのかをまず考えなければなりません。お話を伺うと市販の軟毛ブラシを使用していたことがわかりました。歯列矯正終了後で舌側には固定ワイヤーがあるので、このようなリスク部位は特に注意して磨かなければなりません。今の状態で軟毛ブラシではプラーク除去効率も下がることを伝え、Check-Up歯ブラシSをお勧めしたところ、毛先の質感(硬さ)も気にならないとのことで使用していただくことにしました(図11)。その約半年後では唇・舌側面共に良好な状態を維持しています(図12)。キレイな状態が続き、ケア用品の効果を患者さんも実感しており、さらなるモチベーションアップにも繋がっています(図13)。
図3 50代女性。メインテナンスで来院。隣接面に歯石およびプラーク付着がある。-
図4, 5 歯ブラシと歯間ブラシ共に半年間使い続け劣化している。 -
図6 朝と就寝前はSystema ハグキプラスEX(ライオン歯科材)を使用。V.E(酢酸トコフェロール)、TXA(トラネキサム酸)、IPMP(イソプロピルメチルフェノール)など薬用成分配合で歯周病予防に効果がある。 -
図7 毛先がフラット加工なので歯面にフィットしている。日中は紅茶やコーヒーを常飲するため歯磨剤はステイン除去を目的にBrilliant more W(ライオン歯科材)を使用。
図8 使用開始から約2週間。Check-Up歯ブラシと歯磨剤の使い分けにより、歯面には艶があり歯肉の状態も良好である。-
図9 コーヒーとお茶を常飲。以前は歯ブラシにSystema SP-T 歯ブラシ(ライオン歯科材)を使用していたのだが、いつの間にか市販の軟毛ブラシを使用していた。 -
図10 ステインや歯石が大量に認められる。 -
図11 ラウンド毛とスーパーテーパード毛が歯面と歯肉に優しくフィットしている。(ステインも多く付着しているため、歯磨剤はBrilliant more Wを使用) -
図12 約半年後。唇・舌側共に良好な状態を維持している。 -
図13 キレイな状態を維持できることで患者さんのモチベーションも高く保つことができている。
まとめ
当院でCheck-Up歯ブラシを導入し、1年が経過しました。使用している患者さんからは「しっかり磨けている感じが良い」「ヘッドが薄いので奥まで磨けているのがわかる」と嬉しいお声を皆さんからいただいています。
患者さんの口腔内は千差万別です。一人ひとりに適合する口腔ケア用品を選択するのは決して簡単なことではありません。お口のプロである我々が、まずは口腔を診て何が問題なのかを把握し、そこから全体も診て・考えて・正しく伝えることが大切だと思います。
1本の歯ブラシで患者さんの健康と健口をサポートし、一医療人としての志を持ちこれからも患者さんに寄り添い邁進していきたいと思います。
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