190号 AUTUMN 目次を見る
目 次
- ≫ IOSを効率良く活用するための院内インフラの整備
- ≫ デジタルクリニックの要となる「資料採得コーナー」
- ≫ 「資料採得コーナー」の至近距離にX線室を配置する理由
- ≫ “デジタルラボファースト”で考える
- ≫ 「デジタルラボ」構築のポイント
- ≫ デジタル化への移行をよりスムーズに行っていただくために
診療環境のDX化、MDS(モリタデジタルソリューション)を推進するモリタでは、普及が進むIOS(口腔内スキャナー)をより効率良く活用いただくために「IOSを中心としたデジタルクリニック」として規格化し、提案しています。
今号のMDSCレポートでは、モリタが提案する「IOSを中心としたデジタルクリニック構想」(図1)の概要と、次の見開きページでは、本格的な運用を開始した医院様の声をご紹介いたします。
図1 IOSを中心としたデジタルクリニックの概要。診療室入口付近に資料採得コーナーを配置し、奥に進むにしたがって、侵襲度の高い治療エリア、デジタルラボへとつながっていく。
IOSを効率良く活用するための院内インフラの整備
デジタルクリニック構想のポイントは大きく分けて2つあります。1つは、IOSを効率良く活用するための院内インフラの整備。もう1つは、取得したIOSデータを技工面からサポートする「デジタルラボ」の構築です。
初診やメインテナンスの際にまず入室するのが「資料採得コーナー」と呼ばれる診療室です。資料採得コーナーの近くにはX線室が配置され、奥に進むにしたがって根管治療やインプラント治療など、侵襲度の高い治療を行う診療エリアが設けられています。
デジタルクリニックの要となる「資料採得コーナー」
資料採得コーナーでは、IOSによる口腔内スキャンをはじめ、口腔内写真や顔貌写真など様々な資料を採得します。さらに、PMTCやSRPなどおもに歯科衛生士が処置を行うエリアです。エリア内は、全身もしくはバストアップ写真の撮影時に、壁面に方眼スクリーンを引くことを想定して、通常の診療室よりも広い設定になっています(図2)。
また、ディスプレイはIOSでスキャンする際や、マイクロスコープと同一視野にあることが望ましいので、チェアのセンターに配置することを推奨しています。
さらに、今後IOSの使用頻度が増え、チップを交換する手間が煩雑になることが想定されるため、資料採得コーナー内で洗浄を行える設備を整える方が良いでしょう。
「資料採得コーナー」の至近距離にX線室を配置する理由
近い将来、IOSでスキャンしたデータと歯科用CTで撮影したデータのマッチングが必要になってきます。このマッチングはお互いのマッチングポイントをもとに行いますが、CAD/CAMレジン冠などX線造影性のないマテリアルが口腔内にあると、CT画像とのマッチングが取れなくなる恐れがあります。それを回避する方法として、マッチングポイントを人工的に作るためにX線造影性のあるレジンや酸化アルミナを歯牙に付着させて撮影を行います。そのレジンや酸化アルミナが撮影の移動の際に外れてしまうリスクを避ける目的で、資料採得コーナーの近くにX線室を設けています(図3)。
図2 資料採得コーナーは初診のコンサルテーションからIOSを積極的に活用していくため、受付や待合室に近い位置に配置。
図3 将来的にIOSデータとCTデータの重ね合わせが必要になるため、資料採得コーナーの至近距離にX線室を配置することが望ましい。
“デジタルラボファースト”で考える
歯科におけるデジタル化の流れは、実は受け手である技工分野(ラボ)から進んでいきます。将来、確実に到来する歯科技工士不足に対応するため、院内で勤務する歯科技工士を確保する。そのためには、歯科技工士が働ける環境(デジタルラボ)を整えておくことが先決です。デジタルラボがある程度軌道に乗ってから、IOSを含めた診療エリアのデジタル化にシフトし、効率を上げていく方法が理想的な流れと考えています。
「デジタルラボ」構築のポイント
デジタルラボは、クリーンエリア(ノンパウダーエリア)とパウダーエリアに分けられます。クリーンエリアは、CADデザインとポーセレンワークに特化したエリアで、歯科技工士はほとんどの業務をクリーンエリアで行います。ポーセレンワークには自然光が必要になるため、採光用の窓を設けています。この際、採光窓の方角は北側が最適です。ポーセレン装置の横にはCAD/CAM装置を設置します。
一方、パウダーエリアは機器の配置が重要で、熱を発する装置から奥に配置していきます。例えばシンタリングファーネスは熱を発するので、その排熱をうまく活用するため、隣に3Dプリンターを配置します。3Dプリンターが効率よくプリントできる温度は25 -
40℃とされていて、少しでもその温度に近づけるためです。仮に3Dプリンターの隣にさらに高熱を発するミリングマシンを置くと、プリント効率が悪くなることもあるので、機器の配置順は意外に重要なポイントです。パウダーエリアでは、粉塵やガスを排出するトリマーやミキサー、スチーマー類はできるだけ部屋の奥に固めて配置し、歯科技工士の身体的負担を軽減することも、デジタルラボの重要なコンセプトの1つになっています(図4)。
図4 デジタルラボの概要。パウダーエリアは、水、粉塵、ガスなどをできるだけ閉じ込めて、歯科技工士の身体負担を軽減する機能も備えている。一方、ノンパウダーエリア(クリーンエリア)はCADデザインとポーセレンワークが中心で、普段の業務の大半はこのエリアで過ごすことになる。
デジタル化への移行をよりスムーズに行っていただくために
今回、ご紹介した「IOSを中心としたデジタルクリニック構想」は、このプランをもとに医院設計をご検討いただくことで、将来的な設備拡張や機器の入れ替え、新たなデジタル機器導入にも対応できるポテンシャルを持ったクリニックをご提案するものです。もちろん、資料採得コーナーやデジタルラボのエッセンスをヒントに、医院様の状況に合わせて部分的に取り入れていただくことも可能です。
IOSの保険導入に伴い、他のマテリアルや治療面でも加速度的に保険導入が進むことが予想されます。
MDSCでは、IOSを効率良く活用いただく視点から、使う人のことを考えた配置、位置関係、人体への為害性を考慮した設計や効率的な配置など、変化を続けるデジタル機器に対して日々検証を行い、全体最適化をご体感いただけます。関心をお持ちの先生方は、お出入りのディーラー様、弊社営業担当者までご相談ください。
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