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190号 AUTUMN 目次を見る

Clinical Report

超親水性インプラント INICELL®と新しい骨補填材 Bonarc®の効果的併用方法とは

医療法人社団庸明会 つきおか歯科医院 理事長 月岡 庸之

キーワード:脆弱骨へのインプラント埋入/インテグレーション早期確立のための治療戦略

目 次

はじめに

インプラント治療を成功に導くためには、初期固定の確立と続く高いインテグレーションの持続的継続が必要である。これはインプラント表面の構造的安定性と埋入部位の高い骨代謝の能力によって決定される要素が多くを占める。
抜歯窩に対して行われるインプラント治療において、埋入時期と骨の状態と形態を考慮しなければならないのは以上の理由による。
Chenらが報告したように、抜歯後の埋入時期分類を見ると、タイプ1から4まで抜歯窩の形態によってインプラントと骨とのギャップに対して骨造成を考慮する状況が生じる1)

オッセオインテグレーションに影響を与える因子とは

SPI INICELLインプラント表面構造の高いエネルギーの温存効果を考えると、タンパク質の吸着の能力が高く、骨芽細胞の遊走が早く起きる状態では骨の治癒能力(代謝能力)が低いと予測される状態でもインテグレーションの速度と能力は低下しづらい可能性がある。
したがって、その結果BIC(Bone to Implant contact)獲得の割合は時間軸でも有利に運ぶ。
この特性は骨質(骨代謝、骨量構造)の脆弱なインプラントサイト、もしくは抜歯窩のようにインプラントと骨との間にギャップが存在し初期のコンタクトが得にくい、いわゆる骨量(骨密度)に問題のあるインプラントサイトに対してもインテグレーション獲得までの時間が従来の表面構造に比べ早く行われる可能性を示唆している。すなわち自家骨の質と量が重要であるが、造成を伴ったインプラント治療の場合、造成骨の種類と使用割合によって著しくインテグレーション獲得の機能は変化してしまう。その際、自家骨に置換することの能力が高い代用骨の使用とそれに続く早期のインテグレーション獲得可能な表面構造を持ったインプラントの使用は、これらの問題を解決することのできる大きな鍵となる。

SPI INICELLインプラントの特徴

SPI INICELLインプラント( 以下:INICELLインプラント)の臨床使用は、ヨーロッパのそれぞれ2つの独立した多施設症例研究で報告されており、臼歯部部分欠損の症例に対し1回法または2回法の外科的プロトコルで治療した場合、良好な骨質では3週間(クラスⅠ~Ⅲ)、弱い骨では8週間(クラスⅣ)の短い治癒時間の設定をしたすべてのケースで早期荷重が可能であり良好な臨床転帰が得られることが確認されている2)
また骨質タイプⅠ~Ⅲ(良好な骨)の患者における短期オッセオインテグレーションの臨床的確認研究で初期固定が良好なインプラントは、挿入後3週間でシングルクラウンでの荷重をかけることができる報告もある3)
INICELLインプラント表面は無調整表面に比較し即時埋入後2週間後でBICが40%増大する報告もある。以上を鑑みると、INICELLインプラントが十分な骨量で代謝に問題のない骨質のインプラントサイトに埋入された(骨質タイプⅠ~Ⅲ)場合、荷重までの時間は3週間程度になり、脆弱な骨質(骨質タイプⅣ)に埋入された場合、8週間程度に短縮されることとなる4)
このことはINICELLインプラント表面を使用した場合、無調整表面SLAを使用するよりも安定した早期荷重が可能となり、治療期間の短縮が図られる可能性を示唆している。

Bonarcの特徴

抜歯部位へ埋入された場合、適切なインテグレーションを起こすにはインプラント表面までの抜歯窩との水平距離は3mmのジャンピングギャップが限界とされている2)
インプラント治療における骨造成法(GBR)は高い予知性があり、インプラント埋入と同時(1回法)もしくは歯槽堤をまず造成する段階法(2回法)として行われる。その際造成材料として人工骨が使用されるが、インプラント周囲の造成材料として国内ではリン酸オクタカルシウム(octacalcium phosphate : 以下OCP)コラーゲン(以下Col)複合体Bonarc(以下ボナーク)の薬事承認が2019年に取得された。
ボナークの特性としては骨置換が速やかに行われるのみならず、置換された組織が周囲骨と組織学的、および組成学的に変わりがないことが最大の特徴であり、なおかつOCPの結晶残存率が少ないという骨形成能を有していることが挙げられる5)

ボナーク使用上の注意点

骨形成能が優れている一方、OCP/Colは移植されたβ-TCP/Colまたは HA/Colよりも吸収性が高いことが報告されている。さらに、この論文ではX線回折検査によって、OCPはβ-TCPやHAよりも脆く、機械的強度が低くいことが示されている。以上のことからOCP/Colによる移植時骨再生機械的ストレスのある部位は、β-TCP/Col および HA/Col と比較して考慮する必要がある5)
またビーグル犬でβ-TCPとの骨再生の比較をした論文では、OCP/Colは肉眼では認識できるが、設置直後は単純X線検査によっては透過像となってしまい、その形態が認識できないことが示されている6)
以上からボナーク使用に際しての注意点としては、X線透過性の高さ、強度的な脆さ、スペースの確保の必要性が挙げられる。したがって4から3壁性の骨欠損ではメンブレンを含む遮蔽構造は必要なく、術後のX線評価も容易であるが、2から1壁性の欠損ではスペースメーキングが必須であり、術後評価も骨造影性を有する2~3か月以降まで待機する必要がある。

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