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Interview

デジタルが苦手な世代にも患者さんの信頼獲得につながるDX化の良さを知って欲しい

神奈川県川崎市 宮川歯科医院 院長 宮川 譲次

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  • [写真] 神奈川県川崎市 宮川歯科医院 院長 宮川 譲次
    神奈川県川崎市
    宮川歯科医院
    院長 宮川 譲次

一歩進んだ歯科医院のDX化

これまで歯科医院におけるDX化は「便利さ」に焦点が当てられることが多かったと思います。しかし、オンライン資格確認の義務化、オンライン請求の義務化、電子処方箋の導入など、制度的、社会的な側面からもデジタル化が求められるようになり、歯科医院におけるDX化はさらに一歩進んだ状況になりつつあります。こうした潮流の先には電子カルテの義務化も見込まれると思うので、動向を注視するようにしています。
電子カルテの導入に際して注意すべきは、時刻認証業務の設定事業者が提供するタイムスタンプが実装されているか否かです。タイムスタンプは厚生労働省が求める「電子保存の三原則」のひとつ「真正性」を担保する手段の一つです。今後、もし電子カルテが義務化される際には必須になると思われるので、留意しておきたい点です。

歯科でも普及するSOAP方式のカルテ

歯科は診療時間の多くを治療に割くため、カルテ作成の時間を捻出しづらい傾向にあります。しかし、カルテは保険請求の根拠となる重要な資料です。厚生労働省の個別指導を受けると、ほとんどの場合、カルテの不備を指摘されることになります。そうした事例をなるべく減らすためにも、また法令に則った診療を行うためにも、算定要件を意識したカルテの作成は大切です。

  • [写真] 1977年に開業した宮川歯科医院
    1977年に開業した宮川歯科医院では、早い時期から電子カルテをはじめとした医療情報の電子化や院内のDX化に取り組んでいる。
  • [写真] 受付業務の様子
    受付業務の様子。患者さんから電話があると瞬時に電子カルテなどと連動し、必要な情報がパソコンの画面に表示される。
  • [写真] お薬手帳や紹介状などの書類はタブレット端末で撮影し、デジタルデータとして保存
    お薬手帳や紹介状などの書類はタブレット端末で撮影し、デジタルデータとして保存。アクリル板スタンドを利用し、ゆがみがないように撮影する工夫も。

かなり以前にはなりますが、『日本歯科医師会雑誌』に「正しいカルテとしてSOAP方式を推奨する」という記述がありました。SOAPとは「Subjective data(主観的情報)」「Objective data( 客観的情報)」「Assessment(評価)」「Plan(計画)」の4つの項目にそってカルテを作成する方法です。
当院では、正しいカルテに近づけるために、電子カルテ導入以前よりSOAP方式によるカルテの記入を実践してきました。
SOAP方式では患者さんが持つ医療上の問題を客観的に抽出しながら、一貫した論理的構成によって診療を記録するため、保険請求時の不備を防ぐだけでなく、さまざまなメリットをもたらします。例えば、診療経過や治療方針をスタッフと共有しやすくなるため、チームで診療を行う意識が高まります。また、トラブルや確認事項が生じた際には記録をたどりやすいため、より迅速に対処できるようになります。
SOAP方式はもともと医科で広まった考え方ですが、現在は歯科医師国家試験で出題されるなど、若い先生を中心に歯科においても普及が進んでいます。

  • [写真] [写真]

電子カルテのメリットとは?

前述のようにSOAP方式はさまざまな恩恵をもたらす一方で、当院ではある問題が生じました。それは以前のように診療行為のみの記入ではなく、体系立てた文章でカルテを作成するようになったため、量が膨大になり、保管場所がなくなってしまったのです。そこで導入したのが電子カルテでした。その結果、スペースが節約ができたことやペーパーレスによるコスト削減はもとより、積算で一日2時間以上かかっていたカルテの出し入れ作業もなくなりました。また、個人情報漏洩や廃院時に対応に困る古いカルテの廃棄に悩むこともなくなりました。
現在はSOAP方式に則した入力システムを採用している電子カルテも多く、部位や症状などの単語を選択してつなげることで、ある程度的確な文章を作成することが可能です。SOAPへの理解があれば、記入自体はそれほど難しいものではありません。ただ、初めからSOAP方式をきっちり実践しようとするとハードルが高いものと思います。まずはSとOから始めると、法令に則ったカルテ作成の意義やメリットが実感でき、その先のAとPにも興味がわくのではないでしょうか。

「患者ノート」で会話があふれる医院に

当院では、2017年に電子カルテを導入しました。いざ始めてみると、ある不便さに気がつきました。それはこれまで紙カルテの余白に鉛筆で書いて、用済みになって消していたり、付箋を貼ったりしていたメモ書きの所在です。「旅行の予定があるからいつまでに治療を終えなくてはいけない」といった患者さんのちょっとした情報は、診療記録とは違うため、電子カルテに記入することはできません。しかし、カルテから漏れたこうした情報は、患者さんとの円滑なコミュニケーションや適切な治療を行うために重要な役割を果たします。
この問題を解決するために当院で現在、活用しているのがデンタルオフィスコンピュータ「DOC-5 プロキオン3」に標準装備された「患者ノート」です。アレルギーなどの禁忌情報、服薬情報、腰痛持ちであるかなど、これまでメモ書きしていた情報の他、「Genifix」(Web予約システム)や「OwletableⅡ」(問診票入力システム)、「Myはいしゃさん」(患者さん向けアプリ)など院内のさまざまなシステムと連携させることで、来院順、使用麻酔薬情報、物品販売履歴などDOC-5の記載内容が「患者ノート」でも閲覧でき、とても便利です。各データを「患者ノート」に集約させることで、患者さんに関するあらゆる情報へのアクセスが容易になり、診療の効率性や安全性などを向上させる重要なメモ帳として活用できるようになりました。
もう一つ、メリットに感じていることは、スタッフが患者さんと会話する機会が増えた点です。電子カルテは歯科医師が入力しますが、「患者ノート」への入力はスタッフに任せています。入力事項を確認するために、時には雑談を交えながら患者さんと会話を交わし、それが人間関係や信頼関係の構築に役立っています。「患者ノート」を導入して以来、過去になかったほど、診療室に会話があふれるようになりました。その結果、医院と患者さんとの関係性はとても良くなっていると感じています。

  • [写真] 各ユニットに2台のタブレット端末を用意し、それぞれ“電子カルテの閲覧用(紙カルテの書式PDFで表示される)”、“「患者ノート」用”として使用している
    各ユニットに2台のタブレット端末を用意し、それぞれ“電子カルテの閲覧用(紙カルテの書式PDFで表示される)”、“「患者ノート」用”として使用している。
  • [写真] 歯周検査記録をタブレット端末で入力している様子
    歯周検査記録をタブレット端末で入力している様子。「患者ノート」をはじめ、スタッフも積極的にデジタル機器を活用している。
  • [写真] 電子処方箋の処方内容(控え)と「HPKIカード」
    電子処方箋の処方内容(控え)と「HPKIカード」。電子処方箋の交付には「HPKIカード」を用いたデジタル署名が必要となる。

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