190号 AUTUMN 目次を見る
Clinical Report
i-Dixel に搭載された歯科用コーンビームCTの金属アーチファクト低減機能
キーワード:歯科用コーンビームCT/金属アーチファクト低減
目 次
はじめに
歯科用コーンビームCT(歯科用CBCT)が利用されるようになり、すでに20余年が経った。保険収載された2012年前後から、歯科用CBCTは多くの医療機関で盛んに導入され、現在では歯科診療において最も信頼のおける精密検査としての地位を確立した。一方、歯科用CBCTや医科用CTでは、金属などのX線を強く吸収する物質がある場合に生じる放射状の金属アーチファクトが診断上大きな問題となることがある。特に歯科では、金属を利用する機会が多いことや非常に小さな構造を評価する必要があることから、金属アーチファクトが診断に与える影響が大きい。医科用CTでは、アーチファクトを低減する機能(metal artifact reduction: MAR)がすでに一般化しており、ベンダーごとに異なる機構のMARが実装されている。
歯科用CBCTにおいても、MARが搭載された機種が増えてきている一方、単に金属アーチファクトが消える、という利点だけが独り歩きしている。
本稿では、i-Dixelに搭載されたMARの概要とその効果、そして利用する上での注意点を解説したい。
金属アーチファクトとMAR
X線を利用する検査では、X線が被写体に吸収された、あるいはされなかったことで、画像のコントラストを作る。口内法では、照射される方向における物質の重積したX線の吸収の程度を反映する( 図1A)。一方、CTは回転を加えることで、奥行きのある立体内を構成する領域(ボクセル)ごとに吸収されたX線量を計算し、その画素値に応じて白から黒の濃度をボクセルに与えている(図1B)。図1Bの場合、a+b=5, c+d=6, a+c=7, b+d=4, a+d=5という5つの方程式ができあがり、計算するとa=3, b=2, c=4, d=2で、それぞれの数値に応じた濃度をそのボクセルに与える(図1C)。ここで、dにX線の透過を著しく遮蔽するような物質(金属)が存在した場合を考えてみる(図1D)。検出器の限界やノイズにより、dを透過したX線強度の区別がつかなくなる。その結果、dだけでなく、aからcまでの各ボクセルの画素値も正確に計算できなくなる。このようにX線の情報が欠落することで、CT画像を作る際に生じるエラーが、金属アーチファクトである。
モリタ製作所はアルゴリズムを公開していないが、一般的にMAR処理では、まず元データの金属部分の情報を周辺の濃度値に置換し、画像を再構成する。その後、画像に金属部位の情報を戻す操作を行っている。すなわち、情報を引く、足すという2つの操作が行われている1)。
MARでは、金属アーチファクトが低減されるが、新しい情報が付加されるわけではないので留意が必要である。また、金属部分の抽出は非常に高い精度が要求されるが、Veraview X800や3D Accuitomo F17Dで得られた画像に対するi-DixelのMARは、総合的に高い精度を確保している。
i-Dixelで図2の画像にMARを適用すると、図3の画像を得る。MAR前には、金属冠や金属修復物(特に白い領域)から、白や黒の放射状の線が多数みられる。また、金属と金属の間には黒いバンドがみられる(厳密に言えばすべてが純粋な金属アーチファクトではないが、本稿ではこれらを金属アーチファクトと定義する)。i-DixelでMARを行い画像の構成を行うと、画像左上に黄色で「MAR」と表示される。本症例には、診断的な意味合いはないが、上述の放射状の線や黒い金属アーチファクトも低減される。
では、実際の症例を供覧していきたい。
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