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198号 AUTUMN 目次を見る

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Clinical Report

「Veraview X800+」の有効性

吉岡デンタルオフィス 吉岡 隆知

キーワード: 開かない根管への対応/根管治療でCBCTに期待される役割

目 次

1. はじめに

当院では、2020年にモリタ製作所社製のCBCT複合機である「Veraview X800」を導入し、満足したCBCT画質での診療を行っていた。その後、2025年にさらに進化した後継機である「Veraview X800+」がリリースされ、当院でも導入した。
本稿では、「Veraview X800+」での高画質の機能を根管治療に利用した治療法を紹介する。

2.「 Veraview X800+」とは

「Veraview X800+」となって最も進化した点は、撮影したCT画像でスライス厚さ0mmを選択して最小ボクセル(0.08mm)厚での観察が可能となった点である。筆者は歯内療法専門医なので、根管治療の診断のためにEndoモードの高解像度でFOVφ40×H40の設定を選択し、360°回転の撮影とスペックを最大活用した条件で撮影している。従来機であってもスライス厚さ0mmは選択できたが、ノイズが多く診断に支障が出るために実用的ではなく、診断可能なレベルでの観察は0.5mm厚程度が限界であった。しかし、「Veraview X800+」ではNR(ノイズリダクション)機能により、従来は実用的でなかった最小ボクセル(0.08mm)厚での観察が可能となった。1ボクセルずつマウスホイールでスクロールして詳細な観察が行えるため、微細な根管形態の把握に有効となる。また、ノイズが低減したことで3D構築画像での観察もしやすくなり、スライス画像で確認できたことを3D構築画像で表示することで、患者に説明して理解を得ることが容易になった。

3. メタルアーチファクトリダクション(MAR)

メタルアーチファクトリダクション(MAR)は従来機からあるオプションである。ポストや歯頸部のメタルコアのために生じるアーチファクトを低減することができる。全く効果が出ないこともあるが、簡単な操作で実行できるので試してみる価値がある。図1はMARの効果を確認できる臨床例である。55歳女性の上顎左側第一大臼歯CBCT水平断面画像で、左のオリジナルの画像では遠心の髄床底に穿孔がありそうであるが、メタルアーチファクトのために詳細がわからない。右のMAR画像ではメタルアーチファクトの大部分が除去され、歯質の欠損範囲が明らかになった。この画像を元に患者と歯の保存の可能性について相談すると、治療してみなければわからないというような不確定な要素を排除した説明ができる。

4. 根管探索

根管治療でCBCTに期待される役割として、根管形態の把握がある。図2は57歳女性の上顎右側第一小臼歯のデンタルX線写真である。根管充填は良好に見えるが、根尖病変がみられる。この歯のCBCT歯列直交断像(図3)では根管は根尖近くで分岐し、口蓋根管は未処置で、根尖病変の原因となっていることが推定される。マイクロスコープ下(図4)では、築造と根管充填材を除去して頰側根管(黒矢印)を確認した。未処置の口蓋側根管は、細いイスマスのような線状構造の中にある(白矢印)。根管形成が終わると(図5)頰側根管の出血は止まり、根尖孔付近の肉芽組織が見える。口蓋側根管(白矢印)は根尖孔から出血が見られる。根管は円柱のような形とは限らない。このような線状のフィンやイスマスの中に根管が見つかることがある。CBCT像を元に、この形態を見逃さないようにしたい。根管充填すると(図6)、口蓋側根管(矢印)はオーバー根充になっている。頰側根管はほとんど根管形成していないが、根管充填はシーラーが少し溢出している。根管の湾曲に対してジッピングしているようだった。

  • [写真] 左: 55歳女性の上顎左側第一大臼歯CBCT水平断面画像。右: MAR画像
    図1 左: 55歳女性の上顎左側第一大臼歯CBCT水平断面画像。右: MAR画像(モリタ製作所 Veraview X800+にて撮影)
  • [写真] 57歳女性の上顎右側第一小臼歯のデンタルX線写真
    図2 57歳女性の上顎右側第一小臼歯のデンタルX線写真(使用スキャナー:Digora Optime)
  • [写真] 第一小臼歯のCBCT歯列直交断像
    図3 第一小臼歯のCBCT歯列直交断像
  • [写真] 再根管治療時の患歯のマイクロスコープ画像
    図4 再根管治療時の患歯のマイクロスコープ画像
  • [写真] 根管充填前
    図5 根管充填前
  • [写真] 根管充填後のデンタルX線写真。左: 正放線撮影。右: 偏近心撮影
    図6 根管充填後のデンタルX線写真。左: 正放線撮影。右: 偏近心撮影(使用スキャナー:Veraview iP)

5. 開かない根管への対応

「Veraview X800+」の機能をフル活用して、開かない根管を有する下顎左側第二大臼歯の根管治療を行った症例を紹介する。CBCTは根管形態の把握のみならず、ファイルが入らない理由やその対策を考える際にも有用である。図7は47歳女性のデンタルX線写真である。近心に二次う蝕があり、根尖病変も認められた。顎下部のしこりと痛みが主訴で、治療を希望した。この歯は過去に断髄されたようだった。近心根管と遠心根管に分けて解説する。
近心根のCBCT歯列直交断像(図8)より、根管は2根管1根尖孔であった。根管口が石灰化しているようで(黄色矢印)、髄腔開拡と根管がつながっていない。根管治療は困難であり、抜歯の選択をする歯科医師もあるかもしれない。しかし根尖近くに下顎管がある(白矢印)。この歯は治療が難しいからといって抜歯すればよい、という状況ではないことがわかる。なんとしても根管を探索して治療しなければならない。マイクロスコープ下では、近心根管は石灰化しているようで探索できない(図9)。近心壁近くにイスマス(白矢印)が見え、これが近心根管であるが、ファイルはどこにも全く入らない。
再度CBCTを撮影した(図10)。根管にアプローチするためには、もっと近心と頰舌側に広げる必要があることがわかった。そのように髄腔開拡を修正し、根管にファイルが入るようになったが穿通はしていない(図11)。近心頰側根管からは出血してきた。生きていた歯髄あるいは、根管内に侵入した肉芽組織からの出血と思われる。
2根管が根管中央部で合流するところでファイルが先に進まなくなった。3回目のCBCT撮影での近心根歯列直交断像(図12)を見ると、ファイルが湾曲に追随できずにレッジになっていることがわかる。このように根管形成中のファイルが進まなくなった理由を理解できるのも、術中CBCT撮影のメリットである。これに対応するためにイスマスの部分を超音波チップ(ソルフィーF、ルートキャナルチップE1:モリタ)で削除して1根管にした。そのためにファイルが、湾曲した根管先端まで挿入できるようになった。4回目のCBCT(図13)を見ると、近心根の根管形成がうまくいっている様子がわかる。
遠心根管はCBCTでは、断髄された部分の材料直下にわずかに石灰化が見られた(図14)。遠心根管の充填材を除去すると、根管は石灰化しており、ファイルが入りそうな根管は認められなかった(図15)。2回目の撮影では石灰化の下に根管が見えた(図16)ので、超音波チップで石灰化した部分を切削していった。3回目の撮影(図17)では、切削は根管を通り過ぎて遠心方向に少し過剰に削り過ぎていた。マイクロスコープ下で遠心根管を確認した(図18、矢印)。ここにファイルを入れられればよいのであるが、歯の植立方向、開口度などの影響で難しい操作となった。次回、仮封を除去すると遠心根管から出血・排膿が見られた(図19)。しかし、ファイルが根管に入っていっている感覚はなく、根管形成はできていない。見つかっている根管周囲を超音波で切削した。
切削する部位がわからなくなり、4度目のCBCT撮影を行った。神経管描画機能を用い、画像上に見える根管を描出した(図20 ピンク色)。「Veraview X800+」では3D構築画像のノイズが減り、以前のモデルに比べると画像が見やすくなっている。ボリューム切断機能を用い、髄床底が見えるようにすると、マイクロスコープ画像と比較して根管の位置を特定できる。マイクロスコープ下では根管を確認できた(図21)。ミラー像でマイクロスコープ画像を観察している場合は、CBCT画像と比較するときにどちらかの画像を反転して考えなければならないことに留意する必要がある。再び切削する部位がわからなくなり、5度目のCBCT撮影を行った。神経管描画機能を用い、根管を描記して切削位置が間違っていないことを確認した(図22 ピンク色)。根管中央部付近まで超音波チップを使用したら、ファイルが根管に入るようになり、根尖付近まで根管形成できた(図23)。根尖は湾曲していたので穿通はしなかった。術中に認められた頰部~顎下部~顎角部の痛みは消失し、バイオセラミック系シーラーとガッタパーチャポイントを用いて根管充填した(図24)。初診時の検査から根管充填後の築造まで、5回のCBCT撮影を含む13回の治療が必要であった。石灰化した根管の治療法は、これまでほとんど報告されたことはなかった。通常の手用ファイルあるいはNiTi ファイルだけでは入らない根管に対してどのように攻略すればよいか、紹介されることはなかった。本症例では、CBCT、マイクロスコープ、および超音波チップを用いることによって根管を探索でき、症状を解消することができた。

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